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ぽっちゃりスターが歌って踊るだけじゃない! – インド映画のイメージを変えてくれる名作3選

2016.05.30(Mon) | 山田井ユウキ

インド! インド! インド! ご存知ですか? 今一番アツい国がインドだってこと。そのうち中国すら抜くといわれるレベルで増加している人口を武器に、世界でぐんぐん存在感を増しているんです。そんなインドは映画もすごい! ネットでインド映画というとMAD動画なんかで使われている歌ったり踊ったりの映像が印象的ですが、それだけではありません。伸び盛りのインド映画業界では、世界でも注目される作品が次々と生みだされているのです。……といっても、日本ではまだなかなかインド映画を見る機会がないのが残念なところ。青山シアターなら、そんなインド映画も大充実していますよ(と、PR)。ということで、今回は青山シアターで鑑賞できるとっておきのインド映画を3本、ご紹介したいと思います。

めぐり逢わせのお弁当
めぐり逢わせのお弁当
いきなりなんですが、インド映画のイメージを変える一本からご紹介します。「めぐり逢わせのお弁当」は各国で数々の映画賞を受賞した世界的にも評価の高い作品。実はこれ、インド・フランス・ドイツの合作なのです。従来のインド映画とどこか異なる雰囲気が漂っているのにはそういう理由もあるのかも。 といっても、単なる他国の映画のものまねではなく、インドでしか作れないインドらしさあふれる映画でもあります。 舞台となるのは、インドの大都市・ムンバイ。インドではお昼時になるとダッバーワーラー(弁当配達人)がオフィス街に現れ、お弁当を配ってあるきます。そう、インドではお弁当を自分で持っていくのではなく、配達人にお願いする習慣があるのですね。これはインド映画を見るまでぜんぜん知りませんでした。なんでだろう? やっぱり暑いから衛生的に朝からロッカーに入れておくっていうのが危ないのかな? ともかく、インドのそうしたお弁当配達が本作の重要なカギを握っているのです。 さて、そんなムンバイのとある企業で働くサージャンは、早期退職を控えた初老のやめも男。サージャンは毎日弁当屋さんに弁当の配達をお願いしているのですが、ある日届いたお弁当を見て驚きます。そこに入っていたのは、いつもとはまったく違う"手料理"だったからです。 実はこのお弁当、サージャンとは赤の他人である主婦のイラが冷えきった夫婦仲を何とかしようと夫のために腕をふるった豪華なものでした。それがたまたま誤配達によりサージャンのもとへ届いてしまったわけです。驚くサージャンですが、ともあれお弁当をぺろり(食べるんかい!)。空っぽになって戻ってきたお弁当にイラは「夫も喜んでくれたのね!」と喜びますが、帰宅した夫の反応はいつもと同じ冷淡なもの。不審に思ったイラは翌日のお弁当に手紙を忍ばせます。この手紙を読んだサージャンがお弁当箱に返事を入れて出したことから、二人の秘密の交流が始まったのでした--。 まず、お弁当を介した文通というアイデアにシビれます。日本ではお弁当は自分で職場に持っていくものですから、まずありえない設定。インドならではの文化をうまく生かした作品なのです。このネットの時代に手紙っていうのもいいですよね。すぐに返事がこないからこそ、相手について色々と想像をふくらませることができる。スピーディーな世の中になったからこそ、待つ楽しみというのは再評価されてもいいんじゃないかと思うのです。 で、話をお弁当に戻しますが、インドといえば……やっぱりかー! という感じのカレー尽くし! これはぜひ映画でご覧いただきたいのですが、国によってランチボックス(お弁当)文化ってこうも違うのかと驚かされます。そういう日常に根ざしたリアルなカルチャーが見られるのも映画の面白さですよね。 さらに本作では、発展めざましいインドの家庭事情も伺えて興味深い。何となく価値観が昭和というか……女性は家庭に入るもの、みたいな考え方が根強く残っているのかな。 だからこそ本作のヒロインであるイラの物語が生まれたのかもしれません。妻に興味がなく、外で浮気をしている様子の夫。そのことに薄々気づきながらも、どうすればいいのか逡巡する妻。そんなイラがサージャンと手紙を交わすことでどんな未来を選択するのか、本作はある意味でインドという国の変化を象徴する作品なのかもしれないとも思いました。
スタンリーのお弁当箱
スタンリーのお弁当
インド映画の中でもちょっと変わった作品。何が変わっているかというと、インド映画にありがちなミュージカルシーンがなく、スター俳優も出演していないのです。しかも本作は監督が開催している映画のワークショップに子どもを集めて制作されたもの。子どもたちは最後まで映画の撮影とは知らなかったというからすごい……。そんな型破りな作り方ができるのもインド映画の勢いを表している気がします。 本作の主人公は明るい性格でクラスメイトの人気者である少年・スタンリー。しかし、家庭の事情でお弁当を持ってこられないスタンリーはいつも昼食の時間、水道水を飲んで空腹をやり過ごしていました。そんなスタンリーを見かねたクラスメイトたちは自分たちのお弁当を少しずつ分けてあげます。微笑ましい友情あふれる場面ですが、ここで登場するのが食い意地の張った国語教師のヴァルマー。昼食の時間になるとヴァルマーは教室にやってきて、生徒たちの弁当を横取りするのです。彼に心ない言葉を投げつけられたスタンリーはショックを受け、学校に来られなくなってしまうのでした--。 いやもう、色々な意味ですごい映画です。だって、そもそも教師が生徒のお弁当を奪いにくるってそれどうなの!? そんなのアリなの? と、映画を見ながら気になってしょうがありませんでした。インドはそういう慣習があるのかなと思ったら、別にそういうわけではなく、単にヴァルマーが悪党というだけみたい。うーん、この「弁当を横取りする教師」という発想は日本人からは出てこないだろうなぁ。それもまた、あまりなじみのない国の映画ならではの面白さかも。 ヴァルマーとスタンリー、そして子どもたちとの戦い(?)がどんな結末を迎えるのかは本編をご覧いただきたいのですが、そうしたストーリー以上に、とにかく子どもたちの可愛さとお弁当のおいしそうな見た目にやられる映画です。見たらもう、絶対に次の食事はカレーを選んでしまいますよ! 基本的にはコメディ映画なのですが、最後まで見ていくとそれだけではなかったことがわかります。この突然のジャンルの切り替えには違和感もありますが、それもまたよし。型にはまらない自由さを楽しみましょう。
バルフィ! 人生に唄えば
バルフィ!人生に唄えば
とにかくイケメンと美女が見たい! という人にはこれ。アカデミー賞外国語映画賞インド代表に選出された「バルフィ! 人生に唄えば」です。いや、イケメンと美女が出てくるだけじゃなくて、すごく面白い映画なんですけどね。 本作の主人公・バルフィは耳が聞こえず言葉も話せない青年。だけど明るく優しい性格で誰にでも好かれる好青年です。ついでにものすごくイケメンです。表情豊かで劇中では何度も変顔を披露するのですが、それでもイケメンぶりは消えませんからね。神は不公平だ……。 ハンディを持つバルフィですが、そんな感じでイケメンかついいやつであるため、女性にもモテモテです。バルフィと恋に落ちるのは、シュルティとジルミルという二人の女性。シュルティはお金持ちとの望まぬ結婚を控えており、ジルミルはお金持ちのお嬢様ですが強度の自閉症という事情を抱えています。 この二人の女優さんがね、もうめちゃくちゃ美しいんですよ。筆者が今まで見た女優さんの中でも、3本の指に入るんじゃないでしょうか、冗談抜きで。インドは美女が多いといいますが、それは本当なんだなと納得してしまいました。ちなみにジルミル役のプリヤンカー・チョープラーはミス・ワールド2000に選ばれています。綺麗だと思ったら世界一の美女やないか! 美しすぎて現実味がない! この二人が同時に動いているところを見られるだけでも本作を鑑賞する価値はあると断言します。 それからもう一つ、本作のポイントとなるのは数々の名作映画へのオマージュ。「雨に唄えば」や「アメリ」「Mr.ビーン」などを彷彿とさせるシーンが散りばめられていて、映画好きなら「あっ、これは!」とニヤニヤできるはずです。 2時間半という上映時間は若干長いような気もしますが、まぁ騙されたと思ってとりあえず見てみてくださいよ。バルフィと2人の美女の人生を体験し終わったとき、どんな感情があなたの中に生まれているでしょうか。楽しみですね!

おわりに

インド映画といえばぽっちゃり体型のスター俳優がとにかくダンス! 歌う! というイメージを持っていた人も多いのでは。もしかしたら、そういう先入観すら抱かないくらいまったく見ないという人もいるかもしれませんね。でも今のインド映画はすごくバラエティに富んでいて、映画としての完成度もどんどん上がってきています。最近の映画はちょっとマンネリだな~と感じている人におすすめしたいジャンルですよ。

Writer | 山田井ユウキ

ウェブ、雑誌を中心に執筆するフリーライター/カメラマン。 映画からIT、ホビー、料理までオールジャンルに執筆する。 主な媒体に「MacFan」「料理王国」「マイナビニュース」など。 その他、イベント主宰、セミナー講師なども行う。

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