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コワイ!ゾクゾクする!でもクールでカッコイイ!狂気の申し子、レフン監督のキレッキレ映画3選

2016.08.03(Wed) | 宇咲英人

スタンリー・キューブリック、デヴィッド・リンチ、北野武、クエンティン・タランティーノ…。狂気を描いてきた鬼才監督の系譜の中で、いま最も旬な監督と言えるのがニコラス・ウィンディング・レフン。バイオレンスと北欧出身の監督らしい美的センスが融合した、独特の世界観をご堪能あれ!

カンヌ国際映画祭監督賞受賞!レフン監督を一気に頂点までのし上げた出世作!『ドライヴ』
ドライヴ
レフン監督の名を一躍有名にした「ドライヴ」。主人公は、昼は車の整備士、夜は強盗のドライバーを請け負う無口な男。演じるライアン・ゴズリングは、この後「オンリー・ゴッド」でもレフン監督とタッグを組む盟友。「ブルーバレンタイン」「ラースと、その彼女」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」など通好みの作品で存在感を見せる名優だ。本作でも、物静かながら狂気を孕んでいそうな男をハマり役で演じる。

 映画は強盗の逃走ドライバーを請け負うところから始まる。「5分間は車の中で待つ。その間は何が起ころうと必ず待つ。だが5分を過ぎたら面倒は見ない」…かっこいい!でも同時にゾクゾクする。だって、こんな前フリされたら絶対5分過ぎて何かが起きるでしょ!
 逃走の仕方がまたカッコイイ。普通のアクション映画なら、すぐド派手カーチェイスになだれ込むところだが、パトカーが通れば、車を脇に寄せ、ライトを消し、じっと暗闇の中でパトカーをやり過ごす。これがまたヒヤヒヤ。映画開始10分、これだけでもこの映画は尋常じゃないぞ、と思わせてくれる。

 物語は同じアパートメントに住む女とエレベーターで偶然乗り合わせたところから、新たな展開を見せる。服役中の夫を息子と一緒に待つ女を演じるのは、キャリー・マリガン。「17歳の肖像」で英国アカデミー賞を受賞した若手実力派だ。控えめで人懐っこい笑顔がカワイイ。そう、バイオレンスバリバリのクライムムービーかと思いきや、ここで一気に超超プラトニックムービーにシフトチェンジする。この2人、びっくりするぐらい話さない。一言、二言。なのにカメラは、贅沢に時間を使って2人の表情を追う。だから見てる側は、表情だけで引き込まれていってしまう。息子とも仲良くなり、まるで三人の家族のように幸せな時間が流れる。…でも。でも、絶対このままめでたしでいくハズないよ! その間も、ずっとレフンらしいゾワゾワさせるテクニックが満載。目の前のシーンを100パーセント信じさせてもらえない、不安定な空気感。あーゾワゾワする! とにかくヤバい方向に進んでいるは感覚的にわかる。これ以上、見てられない、でも見ずにいられない。これぞレフン節。
 レフン節といえば、忘れちゃならないのが、北欧監督らしいアートなオシャレ感。流れている音楽はちょっとレトロだけど最高にクールだし、独特の映像美も秀逸。車のインパネのきらめき、主人公たちが暮らす低所得層のアパートメントですら、なぜかおしゃれに見える。マリメッコ、イームズ、イケアを生んだ北欧の目線なのだろうか。レフン監督といえば、ぶっ飛んだバイオレンスシーンが代名詞だが、このあたりにも目が釘付けになる。
トム・ハーディの怪演!男が惚れる愛嬌、ここにあり!『ブロンソン』
ブロンソン
さて、次にご紹介するのは「ブロンソン」。主演を務めるのは「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」「ダークナイト ライジング」など男好きする作品で毎回大暴れしている感のあるトム・ハーディ。本作でも相変わらずの怪演っぷり。イギリスで最も有名な実在の服役囚、ブロンソンを演じる。本名はマイケル・ピーターソン。格闘家だった時のリングネームがチャールズ・ブロンソン。有名俳優に因んで名付けられた。
 本作はレフン作品には珍しく、コミカルな雰囲気。といっても、やっぱり基本的にはバイオレンス。有名になりたい!と願うブロンソンは、刑務所でとにかく暴力騒ぎを起こす。歌もダメ、才能もない、ということで選んだ、この有名になる方法がおかしくも悲しい。なんですぐ暴力に訴えちゃうかな?とこっちが心配になるぐらい、ブロンソンは単純に暴力的。でも、憎めない。まったく憎悪のない暴力。自己表現の仕方がわからない、少年のよう。そこにあの愛嬌たっぷりの笑顔。トム・ハーディの才能がレフン作品にユーモアを与えた怪作だ。
鬱屈としたやるせなさが充満。この感情、いつ暴発する?とハラハラ!『ブリーダー』
ブリーダー
レフン監督初期の傑作「ブリーダー」。監督の代表作「プッシャー」三部作の主演マッツ・ミケルセンとのタッグで、暴発する狂気を描く。まさにレフンの原点といえる作品だ。
 ビデオショップ店員のレニー、レニーの同僚キッチョ、恋人の妊娠に動揺するレオ、そのレオの恋人の兄ルイ。将来の目標もなく浮遊するかのように日々を過ごしている連中。共通の趣味である映画鑑賞のため、定期的に集っている。男だけの家の中の映画鑑賞会なのに、なぜか全員一張羅を着て。
 とにかく仲がいい、というわけでもなく、お互いが空気のように、4人でいると居心地がいいんだろうなーと思える仲。それが、恋人の妊娠で得体の知れない不安に襲われ始めたレオが、鬱屈していくことで歯車が狂っていく。もともと4人、それぞれが未成熟。レニーは好意を持つ女の子とデートにいく約束をこぎつけるも、うまくいかない。ルイは、クラブの用心棒のような仕事をしているがキレやすく、不安定。そんな4人が奇跡的なバランスでうまくやっていたのだが…。
 映画に流れるやるせない空気感は、青春映画のようでもある。ただ、そこはレフン節、時限爆弾のようにいつ暴発してもおかしくない、押さえつけられた感情を見せつけられ、この後、どうなる?的ハラハラ感がすごい。「ブロンソン」では、前述したように憎悪のない暴力だったが、こちらは憎悪むき出しの真っ向勝負。レフン、狂気を描いたら右に出るものなし!とばかりに打ちのめされるの必至。

カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016
『ブリーダー』 8/6(土)より上映
上映日時はこちら

まとめ

レフン監督の作品は、刺激の強い狂気と暴力がどうしてもフィーチャーされます。が、その中にあるせつなさや悲哀を感じてください。きっと胸にグッとくるでしょう。また、なんだか生活に変化がない、日々に刺激がない、なんて時に見ると、鮮烈なパンチを喰らったような、ゴワっとやる気が出る!なんて効果もあり、おすすめです!

Writer | 宇咲英人

ファッション誌、タウン誌、旅行雑誌、映画雑誌編集を経て、WEBディレクターとして映画コンテンツを手がけています。男っぽい映画が好き。

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