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なんやかや言うても感謝のオカン映画4本

2016.08.17(Wed) | 仲谷暢之

今年の夏も実家に帰ること、できへんなぁ。あぁ何年帰ってないやろ。あぁオカンは元気やろか。と、ついオトンのことはほっといて、やっぱ自分を産んでくれたオカンのことが気になる。
いくつになっても、どんなに離れていても、なんやかやとやっぱりオカン至上主義。ということで、この夏は無理でも、年末年始はオカンうかがいをしに帰ってみようと、必ず思うはずの“オカン”をテーマにした作品を。

『東京タワー/オカンとボクと、時々、オトン』(松岡錠司監督)
東京タワー/オカンとボクと、時々、オトン
今やイラストレーター、コラムニストよりも俳優として確固たる存在感を放つリリー・フランキーの、母親との実体験をベースにしたベストセラー小説を映画化。
どうしようもないオトンから逃れ、女手一つで育てられた“ボク”。成長し、九州から進学のために上京してなんとなく、どうしようもなく生きてきた“ボク”が、オカンがガンを発病してしまったのを知り、それから必死働き、なんとか“居場所”を見つけ、オカンとも同居をするまでになったのだが・・・。
オダギリジョー演じる“ボク”の放埓な暮らしぶりにも関わらずオカンへ注ぐ愛情が素晴らしい。そして樹木希林演じる“オカン”も息子へ注ぐメリハリの効いた愛情が素晴らしい。その愛情の相乗効果が、東京でのつかの間の親子の生活に昇華してる。
どうしても泣かせる要素と仕掛けがたっぷり散りばめられた作品だけど、改めて豪華な役者たち(オカンの若かりし頃は、樹木希林の実の娘、内田也哉子が!)のアンサンブルやカメオ出演、実は手堅くまとめている松尾スズキの脚本を楽しむのもいいかも。それにしてもエンディングに流れる福山雅治の曲『東京にもあったんだ』はズルい。
『ヘアスプレー』(アダム・シャンクマン監督)
ヘアスプレー
これがブロードウェイでミュージカルの舞台になると聞いたとき、あの『ピンク・フラミンゴ』や『フィーメール・トラブル』といったカルトムービーを監督したジョン・ウォーターズの作品が!?なんとまぁ!と感慨深かった記憶がある。
実際、初演をブロードウェイで観たとき、ちゃんとジョン・ウォーターズの悪趣味が絶妙なバランスで配合され、しかも人種差別やマイノリティへの弾圧なども描いた、決してキワモノだけではない何度も見たくなるような素晴らしいミュージカルだった。そしてそのミュージカル劇の映画化が今作。
1960年代、ボルチモアが舞台。今でいうアイドルになりたいおデブな女の子が『コーニー・コリンズ・ショー』というテレビ番組のダンサーとしてレギュラーを獲得するも、実はさまざまな差別があることを知り、やがてその騒動に彼女や家族も巻き込まれていくというもの。
娘を厳しくも温かく見守る巨漢のオカンを、オリジナルではある意味、元祖マツコ・デラックスともいうべきディヴァインが愛すべき天然ママを演じ、ミュージカルの初演ではこの夏、三浦春馬と小池徹平が主演を務めるミュージカル『キンキー・ブーツ』の脚本も担当しているハーヴェイ・ファイアスタインが、独特のかすれ声とキャンプな笑いで抱腹絶倒させ、そして映画では、なんとジョン・トラボルタがオカンを演じている。最初は特殊メイク施しすぎてキワモノ感満チクリンなんだけど、次第にそんなこと気にならなくなるのはトラボルタの努力の賜物!?しかも愛嬌たっぷりで愛すべきキャラ。なかでも娘が母親をひと皮向けさせる『Welcome to the 60’s』と旦那役のクリストファー・ウォーケンと歌い踊る『(You’re)Timeless to me』の場面は必見。オカンとカラオケ行きたくなります。
『ボルベール/帰郷』(ペドロ・アルモドバル監督)
ボルベール
スペインのクセが強すぎる名匠、ペドロ・アルモドバル監督の息子を失った母親と、加害者の女優との関係を描いた『オールアバウト・マイ・マザー』、昏睡状態の2人の女性を描いた『トーク・トゥ・ハー』に続く女性讃歌三部作のラスト飾る作品と位置付けられている。
毎回ジャンルの振り幅が大きく濃い~作品を発表し続けるこの監督。女心を揺さぶらせたらたまらない。でもって、今作は三部作の集大成として、血の繋がった三世代の女の話でこってりマシマシ。スペイン版女系家族か⁉︎オカンだらけの大運動会の様相か!?
ゲス夫のために働くペネロペ・クルス。ある日帰宅したら娘の様子がおかしい。わけを聞くと、なんと娘に手を出そうとした夫(娘にとっては義父)をあやまって殺してしまったという。はたして、オカンは強かった。とりあえず夫の死体を、ひょんなことから昔働いていたレストランの鍵を預かった彼女は、そこの冷凍庫にしばらく隠すことに。しかも、これまたひょんなことからそのレストランを勝手に開店し切り盛りすることに。とにかくラテン女性はバイタリティあるというか、強引すぎるゴーイング・マイ・ウェイを繰り広げる。そんな彼女にも当然、母親はいるわけで、でも数年前に火事が原因で亡くなったのだけど、実は・・・。
因果は巡るというか、女の業の深さというか。突拍子もない展開ながらも、スペインならありそうと思えるのがアルモドバル監督の力技であり真骨頂。つい、平塚らいてうの『原始、女性は太陽であった』という言葉が浮かぶ。それにしてもペネロペ・クルス、ハリウッド映画ではもひとつだけど、スペイン映画では水を得た魚のように存在感を発揮するなぁ。
『母なる証明』(ポン・ジュノ監督)
母なる証明
2000年に入って、日本で韓流ブームが巻き起こった時期、ぺ・ヨンジュン、チャン・ドンゴン、イ・ビョンホと並んで韓流四天王のひとりとして注目されたウォンビンが、活動休止からの復帰作として選んだのが今作。それまでアイドル俳優的彼が、本格的俳優として評価された作品でもあります。
精神薄弱児である息子の世話をしながら暮らしてきたオカンが、ある日起こった女子高生殺人事件の容疑者として息子が逮捕されたことから、彼の無実を信じて独自の捜査を繰り広げるというのが大まかなストーリー。だけど、『殺人の追憶』や『グエムル-漢江の怪物-』といった泥臭さ、きな臭さ、人間臭さを清濁、緩急合わせて描いてきた(『スノー・ピアサー』ですすら、その片鱗は散りばめられている)ポン・ジュノ監督は単なるミステリーや、母と息子の感動のストーリーにはしてくれない。
オカンは息子がいちばん大事!時にはモンスターペアレントレベルにも思えるほど息子のためならタフになれる存在。それゆえにまさか息子が殺人を犯すなんて考えられない。ピュアな子なのに(ウォンビンの子犬のような目を見ると、オカンの気持ちもわかるような気がする)。なんで障害のある子だからと警察は捜査を簡単に片付けるの?そんなの納得できない!今まで大事大事に育ててきた子なのよ!どうして息子を信じてくれないの?と、その一心だけでズンズン前へ進んでいく彼女の姿は『ボルベール/帰郷』のオカンとはまた違ったアプローチの仕方。だって、彼女の着地点は、息子は犯人ではないということだけだから。それだけに謎と伏線が収束するクライマックスには思わず鳥肌が立ちまくり。
韓国では“国民の母”と呼ばれるキム・ヘジャ演じるオカンは一世一代の名演技。彼女の前では何者もひれ伏すしかない。

今回選んだ4作品で描かれるオカン像はバラバラだけど、どれも共通しているのは子どもを愛してることには変わりないということ。そんな作品を観て自分たちはどんなオカンとダブらせるのか、それとも全く違うオカン像なのか、とにもかくにもオカン、やっぱり感謝してます。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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