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園子温監督は【ヤンマガ】がお好き?思春期真っ只中の男ゴコロがわかる映画3選

2016.09.14(Wed) | 宇咲英人

不良男子たちの熱いケンカ、斬新なギャグ、そしてエロと思春期男子の大好物が詰まったマンガ週刊誌「週刊ヤングマガジン」。この通称【ヤンマガ】と呼ばれるマンガ雑誌に掲載されている作品の映画を撮りまくっている監督が園子温監督。って確かに、バイオレンス、独特のユーモア、そして不自然なほどに強調されるエロは園子温監督作品そのものだ。

ヤンチャなアンチャンたちが活躍する【ヤンマガ】のお家芸!『新宿スワン』
新宿スワン
【ヤンマガ】と言えば、古くは「ビー・バップ・ハイスクール」に始まり、「ゴリラーマン」「代紋TAKE2」「ナニワトモアレ」など、脈々と不良やヤンキー、ヤクザといったケンカ絡みの名作を輩出してきた、まさに不良マンガの名門校。当然、「新宿スワン」もその歴代の番長たちに勝るとも劣らない名番長的マンガと言える。
主人公は、単細胞だけど、熱い気持ちと正義の心を持つ白鳥龍彦。将来の夢を持たないタツヒコがひょんなことから、新宿でキャバクラや風俗のスカウトマンになり、仲間と共に抗争で頭角を上げていく、というストーリー。まさに不良マンガの王道。ワルい世界に憧れる思春期の男ゴコロを鷲掴みにする設定です。さらに、マンガ連載当時、スカウトというのがとにかく新しかった。
そして園子温監督が満を持して映画化。まず、映画化にあたって大成功だったのがキャスティング。つり上がった一重マブタのタツヒコ役に綾野剛、クールな先輩スカウト、真虎役に伊勢谷友介、のし上がるためには手段を選ばない秀吉役に山田孝之と見た目のハマり具合と、若手人気俳優の共演は、それだけでも見応え十分だ。
風俗の裏社会=エロ、新宿裏社会の抗争=バイオレンス、そしてちょいちょい入れてくるバカっぽいユーモア。この3要素はむしろ、園子温監督のお家芸でもあり、まさに【ヤンマガ】と園子温監督、両家の幸福な結婚のような、どハマりした映画となっている。園子温監督の作品の中では、比較的エンタメ性が優位に働いている作品。
男子の無垢な心+エロ=童貞力! が世界を幸せにする気がしてくる『映画 みんな!エスパーだよ!』
みんな!エスパーだよ!
【ヤンマガ】のエロギャグ番長といえば「工業哀歌バレーボーイズ」(ちなみにまったくバレーボールをしない)で、女子の前で愛読している、なんて口が裂けても言えないシロモノだが、本作の原作マンガもそこまでではないものの、間違いなくエロギャグ番長の系譜にあり、男だったら絶対に笑ってしまうマンガだった。原作者は「デトロイト・メタル・シティ」の若杉公徳。笑いの根本にあるのは、セックスを知る前のピュアな男子のエロ関連の妄想(=童貞力)。ちょっと星野源のエッセイ的な。逆に言うと、見る側も童貞力が試される作品。「(童貞って)バカだなー」って冷めた感じで言っちゃうと、楽しめません。「バカって愛おしい(笑)!」って気持ちが大事です。
主人公は、鴨川嘉郎、高校2年生。ある日突然、他人が思っていることが聞こえる、特殊能力を身につけエスパーに。憧れの女の子、浅見紗英(真野恵里菜)の「こいつ、絶対私でオナニーしてるな。キモい!」的な心の声が聞こえてしまうなど、特殊能力に辟易。仲間の能力者たちと出会うも、正義の心で能力を使っておらず、さらに辟易。そんな中、ワルい特殊能力者が現れ、立ち向かう、というストーリー。
さて、映画版。園子温監督の明るいエロギャグワールド全開!監督の出身地、豊橋市の全面協力のもと、街全体を使った、もはや公然猥褻罪じゃないの?ってぐらい、マンガの世界を、いやそれ以上のスペクタクル感で映像化。女優たちもマジか!?ってぐらい体張ってます。女優以外にも、「新宿スワン」で“バーストの狂犬”と恐れられた関(というか深水元基)が、まさか真っ裸か!と唖然。原作の持つウジウジっとした童貞の自虐的な笑える要素と、園子温監督の奔放な雰囲気が相まって、なんだかハッピーな気分になれる不思議な映画。それにしても豊橋市、懐が深いなー。
思春期ならではの不器用な生き方に身悶えする!『ヒミズ』
ヒミズ
原作は、ギャグマンガの金字塔「行け!稲中卓球部」の作者・古谷実の「ヒミズ」。ギャグマンガ時代の面影は一切なく、ものすごくダークな作品。作品が出た当時、【ヤンマガ】史上、英雄的ギャグ番長が突然、暗い人になったかのような衝撃だった(その傾向は徐々にあったけど)。映画版はヴェネチア国際映画祭で絶賛され、主演の染谷将太と二階堂ふみは、同映画祭の新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞するなど、高い評価を得た。
立派な普通の大人になることを目指している中学生・住田祐一(染谷将太)はボート屋で母と二人暮らし。ギリギリの生活なのに、時々父がお金をせびりにやってくる。もちろん父親とは険悪そのもの。住田くんのことが大好きな同級生、茶沢景子(二階堂ふみ)。茶沢さんも母親から虐待を受けていて、2人とも、とにかく居心地の悪そうな環境だ。

そんな中、住田くんはある事件を起こし、もはや最悪な状況に追い込まれる。そこからの彼の行動はまさに狂っている。でも、気持ちはわかる。と言いつつも、やっていいことと悪いことあるし、住田くん、大丈夫?的な気持ちになり、ハラハラ。見てる側はいつの間にか、住田くんを決して見捨てない、茶沢さんの視点になっていく。
住田くんは、頭がよく、正義感もある。が、惜しいかな、まだ中学生、生き方や考え方がとても不器用で危ういのだ。しかも親から愛情もなく、屈折し、他人に心を閉ざしている。茶沢さんのまっすぐな気持ちがまったく住田くんに届かないのももどかしい。茶沢さんも中学生で、愛情表現が決して上手くないのだ。ちぐはぐな若い二人のやりとりに身悶えするとともに、応援せずにはいられない。
と、この映画、二人だけの世界観で突き通すだけじゃないのもすばらしい。マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した主演2人の熱演もさることながら、脇役たちも、おのおのが個性的で深い印象を残す。特筆すべきは、スリ常習犯を演じた窪塚洋介。アブない渋谷系のチンピラ役をやらせたら、やっぱりこの人の右に出る者はいません。言葉選びのセンス、独特の言い回し、全部本人そのまんまなんじゃないだろうかと思うぐらいハマってます。うーん、一生こういう役続けてほしい。

園子温監督の【ヤンマガ】三部作、これらの作品に共通するのは、思春期の男子の鬱屈した内面の噴出なのかもしれませんね。そしてもう一つ共通点が飛び蹴りです。「ヒミズ」の窪塚洋介、「みんなエスパーだよ!」の池田エライザ、「新宿スワン」の深水元基、それぞれ「熱血硬派くにおくん」ばりの見事な飛び蹴りを披露してくれていますので、ここもお見逃しなく!

Writer | 宇咲英人

ファッション誌、タウン誌、旅行雑誌、映画雑誌編集を経て、WEBディレクターとして映画コンテンツを手がけています。男っぽい映画が好き。

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