映画を通して弁当を知る
お弁当好っきやわぁ。あの決められた空間に主食とおかずが、食べる人のことを考えて詰められてる。だからお弁当を見ればいろんなことがわかったり、想像したり。
作ってくれた人と喧嘩したとか、記念日だとか、しんどかったとか、給料日とか、節約中とか、体のこと心配してくれてるとか・・・。
そういや僕も高校生の頃、オカンと衝突した翌日に持たされた弁当箱を開けると、白ご飯に紅ショウガしか入ってなかったり、デラウェアだけが詰められてたり、適当に切ったリンゴが入ってたりとオカンなりのリベンジをされ、そんな日は帰宅して即、謝罪して許してもらうのだが、その時のオカンは、まさにドヤ顔でした・・・ま、それも今となってはこうやって書くことができたからいい思い出かもしれない。
それだけにいまだ人のお弁当を見たり、弁当やランチのエピソードなんか聞くとなんだかワクワクしたりする。もちろん映画でも、弁当が印象的なシーンを見るとテンションが上がったり、無性にマネしたくなったり・・・あぁやっぱり弁当好っきやわぁ。
というわけで、この秋、行楽シーズンにもオススメなお弁当が登場する作品をご紹介。

フィンランドはヘルシンキでかもめ食堂という店を営む日本人女性と、ひょんなことから手伝うようになった日本人女性たち、そこに集う人々を描いた物語。もうね、全編シャレオツ。北欧好き、雑貨好きにはお手本のような映像。実際、この映画に感化されて、同スタイルのレストランやカフェをオープンすると意気込んで海外に飛び立ったりした女子、男子数知れず。
とはいえ、食堂を営むサチエ(小林聡美)や、現地のオタク男子トンミに「『ガッチャマン』の歌詞を教えて欲しい」と言われたことから知り合った観光客のミドリ(片桐はいり)、荷物を紛失した、同じく観光客のマサコ(もたいまさこ)たちの三者三様のバックボーンを想像するになかなかのビターさも感じさせるあたりはいいなぁと思う。
でもって、おにぎり。ザルカゴに並べられた三角のおにぎりは本当に美味しそう。そのまま抱えてピクニックに行きたいほど。それをフィンランドの人たちが頬張るのもなんだか嬉しくなってくる。ただ、フィンランド仕様のおにぎりも挑戦しようと鹿肉、ニシン、ザリガニという具を入れ試食する場面は、若干ハラハラしたりするけど、個人的にはちょっと食べてみたくなった。

ステンレスやアルミの円柱形の2~3段に積み重ねられたインド式の弁当箱のこと、ダッバーって言うんですね。これに入れられてる食べ物、やっぱりインドやなぁと。ひよこ豆やらナンとかそしていろんな色のカレー!これがなんともステンレス映えするんですね。子どもたちがダッバーの中を見てうわ~って顔をしてるのを見ると、思わずわかるわかるとニンマリしてしまうし、エア香りが鼻腔をくすぐるよう。カレーを絶対食べたくなるし、いっそダッバーを買ってカレーを弁当に持っていきたい(でも、パッキンがついてないので意外とこぼれやすいらしい)!
それにしても、ほんわかタイトルを裏切る結構ヘヴィな内容にちょっとびっくり。しかもヴァルマー先生の人格ときたら・・・演じてるのは監督自身というからいやはや何とも。

家庭を顧みない旦那に手作り弁当で振り向かせようとする妻、イラ。彼女が作る弁当用の料理がいいんですよ。インドの細長い米にスパイスを混ぜたもの、直接コンロで焼くとぷっくりと膨れるチャパティの美味しそうな感じ、そしてインド風のコロッケに、忘れてならないカレーを手際よく、近所の相談相手のおばちゃんと喋りながら作る姿。絶対うまいやんという確信が持てる。
そして間違って届いたダッバーの中身を大きな皿に移して最初は怪訝に食べるオヤジも次第にそれを楽しむようになっていく機微がいいんです。インドであるのに、なんか日本映画の雰囲気やリズム感が漂ってるのが面白いなぁ。
オヤジは食べたダッバーの中にお礼のメッセージを入れ、妻はそれを読んでまだ見ぬオヤジにときめく。そのやりとりが徐々に盛り上がってきて、とうとう会おう!ということになるんですが、結局、引き際の美学が邪魔してしまい・・・。これが大人ということなんでしょうか。そんなことをしみじみと思うはずです。
台湾の高級ホテルの元シェフで寡黙な父親が男手一つで育てた3姉妹と、毎週日曜日に食事会をする。父親が1日がかりで腕をふるう料理は、家庭料理とは一線を画す豪華な豪華な料理。だけどそれぞれ成長した娘たちとの会話は少なく、箸ももひとつ進まない。正直、3姉妹にとっては惰性の集まりみたいなものになっており、そんな食事会も3姉妹の恋愛によって徐々に変化していく・・・。
オープニングから父親が鯉を捌いたり、点心を作ったり、見惚れるくらいの中華料理の数々が作られるシーンでいきなりノックアウトのお腹グー。しかもそれが家庭の食卓にずらり。あぁ目の毒。そんなエンゲル係数高めの料理も娘たちにとってはちょいうんざり。しかもバリバリキャリアウーマンの次女が「ちょっと味が・・・歳いって味覚衰えたんじゃない?」なんて地雷を踏むようなことを言うから余計に食事会が気まずい雰囲気に。
そんな父親が唯一気を許すのが、近所に住むシングルマザーの娘。彼女の母親が忙しく、料理下手なこともあり、弁当が美味しくないという悩みを聞き、母親に内緒で弁当作りをかって出ることに。毎日、小学校で母親の弁当と交換し、自分がその弁当を食べることにするのだが・・・。
確かにシングルマザーの作る弁当が残念なデキ。ご飯に無造作に乗っけられた肉が本当に堅そう。反対に「時間がなくて、あり合わせのもので作ってきたから、すまない」と謝りながらも、学校に持参した弁当は4段重ねでスープから前菜、メインまであって、仕出し弁当豪華版みたい。周りの同級生たちも盛り上がる盛り上がる。すると、娘はちゃっかりと同級生のオーダーまで聞いて弁当を作ってもらったりする。こういうやり取りが最後のどんでん返しにつながるのが巧み。
体育会系男子、勝ち組シャイニー女子、ガリ勉坊や、ネクラ女子、不良と相容れなさそうな面々が顔を揃えるものの最初はとうぜん牽制し合い、分かり合えないままぶつかるものの、次第に互いのことを理解していくという過程が見事に描かれていて、今、見ても古く感じないし、むしろ今だからこそ見て欲しいと思える。
さて、図書館で嫌々ながらも反省文を書こうとする5人も、時間がくればお腹がすくわけで、ランチタイムの場面が登場する。これが傑作。しかもそれぞれの個性、家庭環境がそれだけで垣間見れるいい場面。
体育会系男子はボリューミーなサンドイッチにバナナ、リンゴ、ミルクと盛りだくさん。ガリ勉はスープにアップルジュース、ピーナツバターサンドという子供口なお弁当。不良はそのおこぼれに預かろうという感じ。はたして、女性二人が弁当が凄すぎ。
勝ち組女子はいきなり小さな下駄(小さなまな板みたいな物)を取り出し、その上に寿司の入った弁当箱を乗せて、小皿に醤油を入れ食べる。見ててめっちゃ時間経ってるけど大丈夫かいな!と日本人は確実に心配するメニュー。ネクラ女子に至ってはハムサンドのハムを放り投げ、残ったパンにコーヒーシュガーをかけ倒し、スナック菓子をバリバリとつぶして挟んで頬張るという味覚を疑うというより、私って変でしょアピール満ちくりんなメニュー。みんなそれを呆れて見てるのがおかしい。最終的にちゃんとオチもあるのが素晴らしい。
極端とはいえ、アメリカ人のお弁当感覚ってこんなの!?と驚愕するはず。さすがにこればかりはちょっとオススメできないかも。
ちなみに自分が好きなお弁当のおかずは、牛肉を甘辛く炊いたもの。お弁当久しぶりに作ってみようかな。

Writer | 仲谷暢之
ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。Banner
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