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劇場公開最新作はミステリー!女性に愛される三島有紀子監督作品

2016.10.07(Fri) | 小林未亜

代表作となる3作「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」「繕い裁つ人」で、大切なものを守りながらひたむきに生きる人々の姿を、優しい視点を通して描き、女性たちの心をひきつけてきた三島有紀子監督。ベストセラーミステリーの映画化に挑んだ「少女」の公開をきっかけに、過去作をおさらいしましょう!

『しあわせのパン』
しあわせのパン
三島有紀子監督の長編デビュー作がこちら。物語の舞台は、東京から北海道の小さな町・月浦へ移り住んだ夫婦、りえさんと水縞くんが営むパンカフェ「マーニ」。水縞夫妻と、訪れるお客たちの人生の一コマが、夏、秋、冬、春と紡がれます。

彼氏に沖縄旅行をすっぽかされたカオリ、口をきかない少女・未久、思い出の地へ再びやって来たという老夫婦など、お客たちの人生模様はさまざまですが、共通するのはみんな心が少し欠けてしまっているということ。そんな彼らが見つける幸せ、そしてどこかワケあり風な水縞夫妻の行方が、優しく柔らかな雰囲気の中でおとぎ話のように描かれます。

りえさんと水縞くんを演じているのが、原田知世と大泉洋。この2人が作る「こんなカフェに行ってみたい」と思わせる空気感が最高です。そして何もかもを包みこんでくれるような洞爺湖の景色の美しさに見惚れてしまいます。心が欠けてしまったとき、りえさん風に言うなら「たくさんの大変がたまった」とき、見返してぼんやりとしたくなる、そんな作品です。
『ぶどうのなみだ』
ぶどうのなみだ
「しあわせのパン」に続き、三島監督が大泉洋とタッグを組んだのが「ぶどうのなみだ」。今回の舞台は、かつて炭鉱の町として栄えた北海道・空知のワイナリー。兄・アオは葡萄を育てワインを作り、一回り年の離れた弟・ロクは、父の残した小麦を育てています。一見平穏に見える2人の生活に、謎の女性・エリカの登場が、やがて変化をもたらします。

染谷将太、安藤裕子との共演も話題を呼びましたが、この映画の魅力は何よりも大泉洋。演じているアオは、東京で指揮者として活躍していたが、ある理由から故郷に戻り、“黒いダイヤ”と呼ばれる葡萄ピノ・ノワールの醸造を始めます。故郷に戻ってから一度も笑わず、ただ葡萄、ワインとだけ向き合い、なかなか理想のワインができずに「イーッ」となって荒れてしまうという困った奴。それでいて、「私の名前は荒地って意味なのよ」とふてくされるエリカに、「ワインの葡萄は荒地の方がよく育つんだよ」と殺し文句をさらりと言い放つ男。それをまたすんなりとやっている大泉洋に、不覚にもときめいてしまうのです。
『繕い裁つ人』
繕い裁つ人
食と人をテーマに描いた前2作とは異なり、池辺葵の同名コミックを原作に、“衣”と生きることをテーマにした作品。カタン、カタン、カタン……ミシンを踏む音が随所に心地よく響く本作は、神戸の丘の上にある「南洋裁店」が舞台。こだわりの仕立て屋だった祖母を継いだ二代目店主・市江と、彼女の繕う服を愛する人々による、せつなくも温かい物語が紡がれます。

一代目店主が言っていたという「着るものによって心の持ちようは変わる」。よくわかります。新しい服を買ったら、それを着てどんどん外に出たくなります。

着なくなれば売るか捨てる、が当たり前になっているこの時代、「10年20年同じ服で寄り添っていける幸せ」がとても新鮮で憧れてしまいます。そして、服を通して人を見つめる市江さんの優しい眼差しが素敵。演じる中谷美紀の存在感も圧倒的で、特に“戦闘服”とも言えるブルーのドレス姿が最高にカッコいい! 市江さんに服を作ってほしい!見ればきっとそう思ってしまうはずです。
『少女』
少女
三島監督が「17歳という自分勝手で危うい年代を生きる少女たちを描いてみたかった」と、累計100万部を超える湊かなえ原作の映画化に挑んだ「少女」が10月8日から公開。

本作の重要なキーワードが、“ヨル(夜)の綱渡り”。17歳の少女たちは、暗闇の中で綱渡りをしているような、危うい毎日を生きているということを表現しています。そして女子校という閉塞的な世界で、それぞれに闇を抱える2人の少女、由紀と敦子。ある転校生の「死体って見たことある?」という一言をきっかけに、死を知りたいという願望にとらわれていく様を追っていきます。

そんな2人の少女、由紀と敦子を演じているのが、本田翼と山本美月。明るく爽やか、元気というイメージの強い2人の、新たな顔に話題が集まっていますが、特に本田翼の表情には注目! 恐ろしくも美しい表情にゾクッとさせられます。また、転校生・紫織を演じる佐藤玲の、不穏さをまとった存在感が絶品です。

◆『少女
10月8日(土)ロードショー
(C)2016「少女」製作委員会

おわりに

三島監督の作品というと、癒される、ほっこりする、元気が出る、といった感想を持つ人も多いのではないでしょうか。そんな三島監督が湊かなえワールドをどう映像化したのか、ぜひその目で確かめてみてください。

Writer | 小林未亜

編集プロダクションに勤務し、情報誌やWEBの編集・取材・原稿執筆をしています。かつて勤めていた映画館が2つともクローズしてしまったのが悲しく、休日はなるべく映画館へ。この仕事をしていても「衝撃の結末!」などのあおりに弱い

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