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明日に向かって共に生きる!“新しい”家族を描いた映画4選

2016.10.26(Wed) | 大和晶

家族をモチーフにした映画は数多い。とりわけ日本では、名匠・小津安二郎監督の代表作『東京物語』をはじめ、家族ドラマの名作は枚挙にいとまがない。ただし、その様相は時代によって変容。ある意味で、映画で描かれる家族の有り様は、私たちが生きる今日を映し出す、一種の鏡とも言えるかもしれない。

『湯を沸かすほどの熱い愛』
湯を沸かすほどの熱い愛_ポスター
劇場用長編映画デビュー作チチを撮りにが、国内外の映画祭で14の賞に輝いた、新鋭・中野量太監督。自主映画時代から、家族をテーマに撮り続けてきた、彼の待望の最新作『湯を沸かすほどの熱い愛』は、小さな町で銭湯「幸の湯」を営む幸野家の物語だ。
とはいえ、銭湯は目下休業状態。一家の主・一浩が、1年前にふらりと出奔してしまったのだ。今は、妻の双葉と16歳の娘・安澄の母娘二人暮らし。パン屋のパートで家計を支える明朗闊達な双葉は、ある日、仕事中に倒れて精密検査を受け、「末期ガンで余命わずか」と宣告されてしまう。ショックで途方に暮れながらも、そこで萎えてしまう双葉ではない。絶対にやっておくべきこと①夫・一浩を連れ戻し銭湯を再開、②気弱で優しすぎる安澄を独り立ちさせる、③安澄をある人に合わせる、を決意し着々と実行していくのだ。
しかも双葉は、一浩が連れ帰った“夫の娘らしい”少女・鮎子を、実母に捨てられた鮎子の悲しみもひっくるめて受け入れ、温かく抱きしめる。かたや、学校で苛められ引きこもり寸前の安澄は、「逃げてはだめ」と双葉に叱咤激励され、自力で立ち向かい克服。その安澄を、衝撃の“出生の秘密”が待ち受ける。さらに、偶然知り合った双葉の母性に触れ励まされて、人生を見つめ直していく青年・拓海。映画は、包容力と愛情あふれる双葉を中心に、血よりも濃い家族の絆を紡いでいく幸野家を、ユーモアと情感こもごもに描き出す。何より、双葉のために家族が力を合わせて用意した、想像を絶する弔いに、誰もが熱い涙と晴れ晴れとした笑顔を誘われることだろう。情に厚く溌剌とした、愛さずにはいられないお母ちゃん・双葉を活き活きと熱演した、宮沢りえの新たな魅力も見逃せない。

【中野量太監督 過去作】どちらも傑作です!!
琥珀色のキラキラ
チチを撮りに
『海街diary』
海街diary
吉田秋生のベストセラーコミックを、是枝裕和監督が映画化した『海街diary』は、ある夏の朝に届いた、15年前に家族を捨てた父親の訃報から始まる。再婚した母も家を去り、親代わりの祖母亡き後、三姉妹の長女・幸、次女・佳乃、三女・千佳だけが、広くて古い家に残された。その3人は、父の葬儀で腹違いの妹・すずと出会う。中学生のすずの実母はすでに亡くなり、取り乱す父の3度目の結婚相手の継母を、すすは涙を堪え気丈に支えていた。そんな彼女のいたいけな姿に、思わず「一緒に暮らさない?」と声をかける幸。
こうして、秋の訪れと共にやって来たすずを加え、四姉妹の生活がスタートする。恋や人生について、それぞれに悩みを抱え、時に喧嘩をしながらも、日々食卓を囲み、姉妹の絆を深めていく4人。だが、祖母の七回忌に、長らく音沙汰のなかった母が突然現れたことで、四姉妹の秘めたる心の傷が再び疼き出す。身勝手な両親を許せず、母に声を荒げる幸を見て、自分がいるだけで傷つく人がいると落ち込むすずが痛ましい。だが、そのすずに、自分たち姉妹にとって、父の遺したすずがかけがえのない存在であることを、心をこめて伝えるのは、幸その人なのだ。1人では挫けそうな時も、寄り添って励ましてくれる人がいれば前進できる。そんな四姉妹を演じた綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずのナチュラルな存在感と、彼女たちを見守る、四季折々の鎌倉の風光明媚が心に残った。
『人生、ブラボー!』
人生、ブラボー!
父親が営む精肉店の手伝いも真面にこなせず、多額の借金返済のために、自宅で大麻を栽培しようとする、42歳の独身ダメ男ダヴィッド。妊娠中の恋人にまで愛想を尽かされ、父親とは認めないと言われた彼が、ある日、533人の子供の父親だと告げられる。その中の142人は、遺伝子上の父親の身元開示を求める訴訟を起こす予定だという。23年前、約23ヵ月にわたり、693回の精子提供を行った結果だった。
かつて聞いたこともないシチュエーションの『人生、ブラボー!』は、初めは冗談じゃないと逆ギレした彼が、好奇心に駆られ、正体を隠して子供たちを訪問。いつしか父性に目覚めていく様を、笑いをふんだんに盛り込み、軽快に映し出していく。ダヴィッドが応援するサッカー国内リーグのスタープレイヤーをはじめ、俳優志望の青年や薬物依存症の娘、ストリートミュージシャンに重度の障害を持つ子などなど。境遇も生活環境も千差万別ながら、自分の遺伝子を共有する彼らに、不思議な親近感を覚え、父親として彼らを見守るべきではと心が揺れはじめるダヴィッドが、可笑しくも好ましい。と思いきや、自分の借金のせいで父親にまで危害が及んだと知った彼は一大決心。お金のためと割りきり、原告の142人と精子を提供したクリニックを、名誉棄損で反訴しようとするが…。
世界一の大家族の運命はいかに?カナダ・ケベック州が世界に発信した、壮大でハートウォームな新型ファミリームービーである。
『チョコレートドーナツ』
チョコレートドーナツ
1970年代のアメリカで、実際にあった話に材を得た『チョコレートドーナツ』の主人公は、ルディとポールのゲイ・カップルに、ダウン症の少年マルコの3人だ。シンガーを夢見ながらショーダンサーに甘んじるルディは、薬物依存の母親が逮捕されたために入れられた施設を逃げ出したマルコが不憫で、弁護士のポールと共に引き取ることに。2人は“従兄弟同士”と偽り、マルコと3人で暮らしはじめる。初めて学校に通い友だちもできたマルコに、本当の両親に勝るとも劣らぬ愛情を注ぎ育てる2人。けれど、1年後、ルディとポールがゲイ・カップルであることが周囲に知られ、マルコは家庭局に連れ去られてしまうのだ。
今では同性婚も、徐々に社会的に受け入れられつつあるが、本作の時代背景となる1980年当時、ゲイに対する差別と偏見はまだまだ根強かった。実際、ゲイと分かった途端、ポールは弁護士事務所を解雇されてしまう。ただし、ここで描こうとしているのは、同性愛者や障害者といったマイノリティに対する、理不尽な仕打ちではない。愛する誰かと無理やり引き離された時の、身を切られるような苦痛は、ルディやポールに限らない普遍的な感情。むしろ、マルコを取り戻すために奮闘する彼らの、打算のない愛の深さにこそ心を揺すぶられる。たとえ血が繋がっていなくても、法的に許されないとしても、互いを必要とし、一緒に生きたいと願う、濃密な愛で結ばれた3人。それが、家族と称されるコミュニティの理想的な姿かもしれない。

十人十色と言うけれど、十の家族があるならば、十の家族の形がある。そして多分、本来孤独な人間たちが、助け合い支え合って生きていく、それが“家族”なのだろう。

Writer | 大和晶

1989年から映画ライターの活動を開始。97年~06年、アジア映画専門誌「Movie Gong」で映画紹介、監督・俳優インタビュー、撮影現場取材を多数手がける。以降、シネマ倶楽部、Kappo、図書新聞、公明新聞、仏語学校HP、プレス、劇場用パンフなどに映画・DVD紹介を執筆。90年より毎年カンヌ国際映画祭にプレスとして参加。

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