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ネットいじめ、リストラ…明日はわが身?現代の問題を映す映画5選

2016.11.09(Wed) | 上原礼子

歩きスマホ、していませんか? 次々と更新されるネットの面白動画や、続々と登場するアプリゲーム、そしてTwitterやFacebook、LINEといったSNSなどは、いまや、私たちの生活とは切っても切れないものばかり。しかし、むやみに便利なもの、簡単なものの裏側には必ずといっていいほどトラブルが待ち受けています。それでなくても、現代の世は子どもたちにとっても、大人たちにとっても、大変“生きづらい”時代なのかも…。次の映画5作品から思いを巡らせてみました。

本当はリアルな“つながり”が欲しかった 『ディス/コネクト』
ディスコネクト
3つのストーリーを軸に、ネット上でのさまざまな問題を通して、登場人物たちがつながりを取り戻していく群像サスペンス。ある少年はSNSを通じた嫌がらせが原因で、自殺未遂を起こし意識不明に。多忙な父親は息子の自殺の原因に全く心当たりがありません。一方、嫌がらせしていた少年は、母親を亡くし、厳格な父親に対して鬱屈した思いを抱えています。また、その父親というのが元刑事で、今はネット犯罪専門の探偵。彼が担当するのは、チャットサイトやネットギャンブルにハマり、クレジットカードなど個人情報を盗まれてしまった若い夫婦。さらに、少年ネットポルノの現状を取材して、一旗挙げようとするTVレポーターも登場します。

子どもたちの間でも、大人たちの間でも、ネット社会は思いもよらない勢いで絶賛進行中です。LINEのほうが正直に話せる、なんてこともあり得る今です。SNS上でのいじめ、個人情報の漏洩・拡散、遠隔操作、ネットポルノetc…ネット社会としては日本の数歩先をゆくアメリカ発のこの映画には、いち親としても、いち現代人としても心に留めておきたいことが満載。喪失感や絶望は、ネット上の“つながり”で埋めることができるのか、“つながり”って何だろうかと思わずにはいられません。PG12指定ですので、情報教育の題材として利用してもいいのかも。

ジェイソン・ベイトマンをはじめ実力派揃いのキャストの中で、注目は『ターザン:REBORN』で話題を集めたアレクサンダー・スカルスガルド。持ち前のカリスマ性と美ボディは封印し、個人情報を盗まれ、破産寸前のしがないサラリーマンを演じております。また、違法ポルノサイトで働く少年たちを束ねるボス役で人気ファッションデザイナー、マーク・ジェイコブスがスクリーンデビューを果たしています。
あまりに危険な、実録“キラキラ”セレブへの憧れ 『ブリングリング』
ブリングリング
第26回東京国際映画祭の特別招待作品でもあったソフィア・コッポラの監督5作目。華やかなセレブに憧れる10代の男女が、パリス・ヒルトン、オーランド・ブルーム、リンジー・ローハンらの豪邸をネットで見つけ出し、総額300万ドル(約3億円)にものぼるブランド服や宝石、高級靴を盗み出します。しかも、それらを身につけてはSNSにUPしまくります。アメリカで実際に起こった事件を映画化。被害にあったパリスが自宅をロケ地として提供し、その広大なクローゼットのキラキラすぎる中身も話題となりました。

罪を犯した彼らは基本、裕福な家庭のティーンなので、窃盗の目的がちょっと違います。憧れのセレブと“同じ物”を身につけることが、とにかく彼女たちの動力源。恐ろしいのが、彼女たちは面白半分であり、罪の意識がそうそうないこと。逮捕後もリアリティ番組に出演して、ちゃっかり注目を浴びております。ソフィア・コッポラは、そんな彼女たちの孤独と、自己顕示欲と自己肯定の果ての虚無をつぶさに描き出します。彼女たちはただ、「私はここにいる!」と言いたかったのだろうと思います。

主演を務めるのは、『ハリー・ポッター』以降も精力的に女優として、フェミニストとして活躍を続けるエマ・ワトソン。すっかり大人の女優の仲間入りですが、今作で優等生のイメージを完全打破。セレブ邸での物色シーンやクラブで踊りまくるシーンなどは、大胆で、自由奔放な悪びれ感を醸し出しています。
虐待され、自傷を繰り返す少女に寄り添う 『ショート・ターム』
ショート・ターム
こちらの作品も、まるでドキュメンタリーのように、短期間だけ子どもたちを預かるシェルター「ショート・ターム12」を舞台に展開する物語です。主人公のグレイスは同僚でボーイフレンドのメイソンらと、日々、10代の子どもたちの世話をしています。ここに来る子どもたちはいずれも、心に傷を抱えております。ときには身体にも…。グレイスもまたも同様の痛みを抱え、そしてボーイフレンドとの関係もある岐路に差し掛かっていますが、真実を打ち明けることができずにいました。

言葉にならないティーンエージャーの心の悲鳴が、グレイスには聞こえているかのようです。父親から虐待され、自傷を繰り返す少女に、「母親が何だ」とラップにのせて歌う少年に、グレイスたちは“寄り添う”という愛を教えていきます。彼氏のメイソンがとにかくナイスガイ。ラストには、温かい涙がそっと流れること必至です。

主演を務めるのは、本作の後、ルームでアカデミー賞など各賞を総なめにしたブリー・ラーソン。また、ラップが得意な少年役で『デスノート』米リメイク版の“L”に抜擢されたキース・スタンフィールド、新任ケアワーカー役で海外ドラマ「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」により本年度エミー賞を受賞したラミ・マレックが出演しています。
ボーナスか?私か?突然のリストラに究極の選択 『サンドラの週末』
サンドラの週末
一方、『サンドラの週末』は、このご時世、いつ何時降りかかるか分からないリストラがテーマになっています。体調不良でしばらく休職していたサンドラ。ようやく復職の目途がついたある金曜日、不況にあえぐ会社側は職員のボーナス捻出のため、病み上がりのサンドラを解雇すると通告してきます。週明けの月曜日、職員たちで多数決をとった際に、自分のボーナスをあきらめてサンドラを迎えることに賛同する者が多ければ、復職できるというのです。そんな話って、ありますか!? それでも、マイホームのために仕事がどうしても必要なサンドラは、復職に賛同してもらうため、その週末、同僚たちの家を1軒1軒訪ね回り、懇願を繰り返すのでした、かすかな希望を胸に秘めて。

ベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟のもと、オスカー女優のマリオン・コティヤールが主演。全編ほぼタンクトップ姿、すっぴんで「私を必要として!」と訴えかけます。夫の支えが献身的で、彼女を救ってくれますが、「病み上がりは使えない」という上司の非情な言葉が、とても重くのしかかってきます。
国外退去を命じられた移民の青年が“燃え尽き症候群”を救う!? 『サンバ』
サンバ
フランスに移住して10年の青年サンバは、あるときビザが失効し、国外退去を命じられてしまいます。そんなサンバが藁をもすがる気持ちで向かった先は、移民支援協会。彼の担当になったのは、ボランティアのアリス。何とかフランスにとどまりたいサンバは、アリスの協力を得ようとしますが、かつてバリキャリだったアリスは、実は燃え尽き症候群。大手人材紹介会社で15年間も働いてきたのですが、成績を伸ばすよう圧力をかけられ、ついには同僚の頭を携帯で殴って入院させてしまったのでした…。

窮地に立たされても、明るく、笑顔で乗り越えようと努めるサンバを演じたのは、日本でもロングラン大ヒットとなった最強のふたりの主演オマール・シー。まるで糸の切れた凧のようになってしまったアリスを演じるのは、シャルロット・ゲンズブール、そしてサンバの陽気な移民仲間には、黒沢清監督『ダゲレオタイプの女』のタハール・ラヒム。フランスをはじめ多くの国が抱える社会問題にシニカルなユーモアを散りばめながら、笑顔も身体も大きいのに、精神は細やかで優しいサンバが、“現代病”のアリスをも癒していきます。

さまざまな「生きづらさ」を抱えている現代人。方法やツールは変わっても、人を支え、元気にさせてくれるのは、やはり人なのだということを改めて考えさせてくれる作品ばかりです。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEB「シネマカフェ」を中心にフリーに。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録と、映画を通じて悲嘆を癒やす試み【映画でグリーフワーク】をFacebookにて随時更新中。

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