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観客を翻弄するトリックに衝撃のラスト!マインドファック・ムービー傑作5選

2016.11.23(Wed) | 大和晶

二転三転の上にドンデン返しと、全く先の読めないストーリー展開。全編に張り巡らされた伏線と仕掛け。謎が謎を呼び、混乱、眩惑の果てに迎えるラストに、えっ?まさか?やられた!と、思わず叫んでしまう。そんな、映画ならではの“マインドファック”な面白さを堪能しよう。

『複製された男』
複製された男
何気なく観たDVDの映画の中に、自分と瓜二つの男を見つけて愕然とする、平凡な歴史教師アダム。猛烈な不安と焦燥に駆られ、その売れない俳優アンソニーへのアプローチを試みたアダムの日常は、次第に、抜け出すことのできない悪夢と化していく。
カナダの鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による『複製された男』は、互いの存在を知ってアイデンティティー喪失の危機に陥る、2人の男の困惑と葛藤、対決を、ダークでシュールな独創的な映像で、濃密かつスリリングに綴っていく。
映画は、それぞれの妻を巻き込んだ彼らが立場を入れ替え、もはやどっちがオリジナルでどっちが複製か、判断のつかない混迷の極みで、前代未聞のクライマックスへ突入。しかも、縦横に散りばめられた、意味深な台詞の数々や、蜘蛛、半分破れた写真、ブルーベリーといったキーアイテムから、観る者が推測し得る解答は、1つとは限らない。カフカ的な不条理が色濃く漂う、鋭利な刺激に満ちた極上のミステリーだ。
『嗤う分身』
嗤う分身
『嗤う分身』もまた、自分とそっくりな外見を持つ男に遭遇する青年が主人公。イギリスの新鋭監督リチャード・アイオアディが、ロシアの文豪ドストエフスキーの「分身(二重人格)」を大胆に換骨奪胎。無時代、無国籍の特異な舞台設定で、オリジナリティあふれるストーリーを創り上げた。
心優しく内気で要領が悪いサイモン・ジェームズは、7年も勤める会社での存在感もまるで希薄。ある日入社した期待の新人ジェームズ・サイモンは、容貌から背格好、爪の形までサイモンと瓜二つだったが、上司も同僚も、この奇妙な状況を驚きも不思議がりもしない。それどころか、サイモンとは真逆に積極的で自己アピールに長けた彼は、瞬く間に上司の信頼を得、サイモンが密かに恋するコピー係のハナの心まで掴んでしまう。さらに彼はサイモンに“替え玉スイッチ”を強要。サイモンは、自分の人生を乗っ取られ、存在まで奪われる恐怖に慄くが…。
坂本九の「上を向いて歩こう」他の昭和歌謡を挿入。アナログ感と斬新さが見事に融合し、独特のテイストを醸し出している。
『プリズナーズ』
プリズナーズ
世界的スーパースター、ヒュー・ジャックマンが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と初タッグを組んだ『プリズナーズ』は、少女失踪事件を通し、人間が内包する闇や、社会に潜むダークサイドをあぶり出した異色サスペンスだ。
凍てつく寒さの感謝祭の午後、工務店を営むケラーの6歳の娘と親友の少女の2人が、忽然と姿を消す。捜査に乗り出したロキ刑事は、現場付近にキャンピングカーを停車していた青年アレックスを、容疑者として拘束。だが、物的証拠も自白も得られず、2日後に釈放する。それに不満を抱くケラーは、アレックスこそ娘を誘拐した犯人だと確信。自分の手で彼を捕まえ監禁し、口を割らせようとする。娘を取り戻したい一心で、法とモラルを踏み越え、狂気さえ帯びて暴走するケラー。その彼を、出口なき迷路が待ち受けていた。
ジャックマンの鬼気迫る演技と、漲る緊迫感で、一瞬たりとも目が離せない。何より、この不可解な事件の背後に渦巻く、予想もしなかった真実に、誰もが震撼とすることだろう。
『リピーテッド』
リピーテッド
二大オスカー俳優、ニコール・キッドマンとコリン・ファースの共演で放つ『リピーテッド』は、過去と現在、それに映像日誌が交錯して進行する。
ヒロインは、事故の後遺症で、眠るとそれまでの記憶が失われてしまう、特殊な記憶障害を抱えるクリスティーン。そんな彼女を夫ベンが献身的な愛で支えていた。ある日、ベンに内緒で彼女の治療にあたっているという医師から電話があり、彼女自身が撮り続けている映像日誌の存在を知る。そこには、彼女が何者かに襲われ瀕死の重傷を負った事実が。いったい誰が何のために?「昨日の自分からのメッセージ」を頼りに、謎を追うクリスティーンが辿りついたのは…。
物語が進むにつれ、違った顔を見せて変貌していくベンが不気味だ。さらに、敵か味方か判然としない謎多き医師。孤立し正体の見えない影に怯えるクリスティーンの心情を映す、手持ちカメラの映像が、観客の不安感をも煽り立てる。そして、想像もしなかった驚きの真相。ただもう、唖然とするしかない。
『鑑定士と顔のない依頼人』
鑑定士と顔のない依頼人
天才的鑑定眼を誇る一流オークショニア、ヴァージルは、若い女性から、両親が遺した絵画や家具を査定して欲しいと依頼される。赴いた屋敷の床に、無造作に転がっていた、本物なら歴史的発見となる美術品の一部。それに魅せられ、あげくに、決して姿を見せない依頼人クレアに、柄にもなく心惹かれる彼は、知らぬ間にある陰謀の深みに嵌っていく。
イタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『鑑定士と顔のない依頼人』は、巧みに仕組まれた重層的な罠で、主人公のみならず観る者まで騙し尽くす、詐欺ムービーの快作。だいたい、ヴァージル自身が、気に入った芸術品を不正な行為で手に入れ、私的コレクションに加えてきたペテン師なのだ。その長年の相棒で元画家のビリー。凄腕の修復家ロバートと彼の恋人サラ。広場恐怖症というクレアとその使用人フレッド。皆が皆、一癖二癖あるキャラクターたちが、ヴァージルを巡って暗躍。終盤の意表を突くドンデン返しと、壮大で鮮やかな詐欺のテクニックには、爽快感さえ覚えるにちがいない。

あまりにもショッキングな結末に茫然としながらも、すぐさまリピートしたくなる。そして、観れば観るほどその世界観にのめり込み、病みつきになってしまう。それが、マインドファック・ムービーの魔力であり醍醐味なのだ。

Writer | 大和晶

1989年から映画ライターの活動を開始。97年~06年、アジア映画専門誌「Movie Gong」で映画紹介、監督・俳優インタビュー、撮影現場取材を多数手がける。以降、シネマ倶楽部、Kappo、図書新聞、公明新聞、仏語学校HP、プレス、劇場用パンフなどに映画・DVD紹介を執筆。90年より毎年カンヌ国際映画祭にプレスとして参加。

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