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マダム・フローレンスに魅了された方必見!絶対的オペラ映画5選

2016.12.04(Sun) | 仲谷暢之

現在公開されている『マダム・フローレンス!夢見るふたり』は、ニューヨーク社交界の花形だったマダム、フローレンス・フォスター・ジェンキンスが小さいころからの夢だったオペラ歌手になるべくレッスンを重ね、実は〈オンチ〉にもかかわらず、音楽家の殿堂、カーネギーホールでのコンサートを目指すという実話をベースにしたお話。
オペラ歌手を目指すというだけあって、映画の中でもシュトラウス2世の『こうもり』からの『公爵様、あなたのようなお方は』やレオ・ドリーブの『ラクメ』の中の『鐘の歌』、モーツァルトの『魔笛』の『夜の女王のアリア』といったどれもハイレベル中のハイレベル!なアリアが流れ、それに果敢にも挑戦しようとするマダム・フローレンスにちょっと呆れつつも、本当に心から音楽が好きで突き進んでいく純真さに感動すら覚えます。
ということで、今回はそんなマダムに敬意を評し、オペラが印象的な5本の映画を選んでみました。

◆『マダム・フローレンス!夢見るふたり』大ヒット上映中
監督/スティーヴン・フリアーズ
出演/メリル・ストリープ、ヒュー・グラント、サイモン・ヘルバーグほか

『椿姫ができるまで』
椿姫ができるまで
『椿姫』と言えばヴェルディの傑作と言われるオペラ。
高級娼婦ヴィオレッタと資産家の息子アルフレードとの悲恋を描いた物語で、これを2011年、当時、世界最高のオペラ歌手の一人と称され、その美貌と歌唱力でディーバと呼ばれていたナタリー・デセイがエクサン・プロヴァンス音楽祭においてヴィオレッタを演じる事になり、その公演までの濃厚なるリハーサルを丁寧に記録したドキュメンタリー。これがめっぽう面白く、最後まで飽きさせません。
演出家のジャン・フランソワ=シヴァディエがナタリーに対してヒロイン、ヴィオレッタに対する解釈を説明する場面の引き込まれること!それを時に“講釈の多い演出家でうんざりやわぁ”的におどけてみせるナタリーのやりとりにニヤニヤ。
クラシックオペラが上演されるごとにその演出が定番すぎると、あぁまたかと落胆され、斬新すぎると古典に対してなんたる侮辱とこれまたブーイングが起こると、演出家にとってもハードルの高い挑戦ゆえ、作品に対しての理解をどう出演者と共有し、共感してもらうかがひとつのキモだったりします。
「不思議だわ」というセリフを演出家とプリマドンナは意味を咀嚼できるまで稽古を立ち止まらせ表現させようと試行錯誤。歌いながら手の動き、立ち位置を変化させながら、なんとかヴィオレッタになりきろうとするナタリーの繊細な役作りを見ているだけでこの舞台は素晴らしいものになると確信させ、それだけ『椿姫』という作品に力があり、奥深さがあるのだなぁと再認識させられるはず。
何もない稽古場から、次第にセット、衣装、メイク、オーケストラの参加と本番を意識していくプロセス、それに連れて上がってくる高揚感も見どころ。さらに『乾杯の歌』などおなじみの曲も聴けるのが嬉しい。そしてこの作品の最後は、ナタリーの完璧を求めるプロ中のプロを感じさせ、世界最高峰のディーバと呼ばれた所以を知る瞬間でもあります。
『カルテット!人生のオペラハウス』
カルテット!人生のオペラハウス
引退し、隠居生活を送る音楽家が余生を過ごす老人介護施設ビーチャムハウスを舞台に、資金難のために閉鎖されるかもしれぬ自分たちの終のすみかをなんとかしようと、存続のための資金集めコンサートの企画をするが・・・ってのが大まかなストーリー。
ただ、それぞれが我の強い音楽家たちであるのでそれをまとめるのもひと苦労。そんなある日、新しくビーチャムに入居してきたのが、オペラ界のプリマドンナとして一世を風靡したジーン。ざわつく老音楽家たち。そんな中、かつてびっくりするようなくらい短い結婚をし、離婚した元夫のレジーだけは苦々しい気持ちでいっぱい。それを知ってか知らずか、コンサートの仕切り屋爺さんは、資金集めの目玉プログラムとしてヴェルディの『リゴレット』の中の第三幕で歌われる『四重奏〈美しい恋の乙女よ〉』を、レジーとともに活躍したシシーと、ウィルフ、そしてジーンの4人で披露してくれと懇願。とんでもないアイディアと思いつつも資金集めのために渋々引き受けますが、レジーは複雑な気持ちでジーンを説得することに。しかし、もう人前では歌えない!とあっさりお断り。はたして、無事にコンサートは開かれるのだろうか、そして『四重奏(カルテット)』は舞台で実現するのでしょうか・・・。
イギリスの劇作家であるロナルド・ハーウッドの舞台を映画化し、自身も脚本も手掛けてるだけあって、セリフの節々にオペラの作品を引用したジョークなど、舞台的な楽しみも散りばめられているし、老人となった音楽家たちへの敬愛ぶりも楽しめます。
そして名優・ダスティン・ホフマンが初監督!奇をてらう事なく正攻法で、『ハリー・ポッター』シリーズのマギー・スミス、『ドレッサー』のトム・コートネイ、『旅する女 シャーリー・バレンタイン』(名作!)のポーリーン・コリンズ、『処刑人』のビリー・コノリー、マギー同様『ハリー・ポッター』シリーズのマイケル・ガンボンらベテラン俳優の、演技のアンサンブルに重きを置いて描いているのも素敵。さらに音楽を終始演奏したり、歌ったりするビーチャムハウスに住む老人たちの正体は、エンドロールでタネあかし。思わず笑顔がこぼれるはずです。
『ワン チャンス』
ワン チャンス
イギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴッド・タレント』に出演し、その風貌からは全く想像だにしなかった素晴らしい歌声を聴かせ、ついに念願のオペラ歌手となったポール・ポッツの半生を描いた映画。
今も実際に放送された番組の模様がネットなどで見れるものの、やはり彼のオペラ歌手になるまでの苦難の人生を改めて描かれると、グッと胸にくるものがあります。小さい頃から歌うことが好きだったものの、ぽっちゃりなせいでいじめられ、常に自分にコンプレックスを抱いて成長してきたポール。ただいじめられないように(小さい街だけに、ずっとみんな住んでいるのでその関係は変わらない・・・)目立たぬように生きてきた彼の唯一の拠り所は、母親の影響で好きになったオペラを聴いたり歌うこと。
そんな彼がある女性と出会い、一念発起したことで徐々に運命は変わってきます。が、困難も同時に訪れてくる。だけど、小さい頃からそうだったように音楽が彼にとって生きる支えになって、苦難を克服し、あのオーディション番組のステージにいよいよ立つ事に・・・。
『マダム・フローレンス!夢見るふたり』でも描かれているのだけど、音楽があるからこそ生きていくことができているという共通点が見い出せて苦労の甲斐あったなぁと拍手を贈りたくなる。
ポール・ポッツを演じるジェームズ・コーデン、この映画でアメリカでも広く知られるようになって、今やアメリカの名物トークバラエティ番組『ザ・レイト・レイト・ショー』の四代目司会に抜擢されるわ、トニー賞の司会も務めるわで、ポール以上のサクセスストーリーを歩んでいるのがなんともwinwinな感じ。
この映画もカヴァッロの『道化師』から『衣裳をつけろ』や、プッチーニの『トスカ』や『ラ・ボエーム』からの曲、そして運命を変えた『トゥーランドット』からの『誰も寝てはならぬ』などなどオペラ初心者にも耳残りさせてくれる珠玉の名曲がポール・ポッツの歌声で聴けるのがお得感あります。
『ディーバ』
ディーバ 製作30周年記念HDリマスター・エディション [DVD]
オペラ歌手がキーワードになるサスペンス。自分の声をレコーディングさせないオペラ歌手、シンシア・ホーキンス。彼女の歌が好き過ぎて、個人で楽しもうとリサイタルを録音してしまった郵便配達員のジュール、そんな彼の録音したお宝テープを狙う謎の組織。さらにそのテープと売春組織を告発したテープが偶然にも一緒になってしまったことから、もう一つのある組織にも、ジュールは追い詰められることに、そんな時、ベトナム人少女と、彼女と一緒に暮らす男性に助けられることになるが・・・。
最近はなかなか作品を発表していないジャン=ジャック・ベネックスの名を一躍知らしめた作品。フランスを舞台に、スタイリッシュな映像に不遇の作家と称されるアルフレード・カタラーニの『ラ・ワリー』の中のアリア『さようならふるさとの家よ』が効果的に使われ、35年経った今でも全く古く感じない、むしろ今も新しい驚きとセンスに満ちた作品。
監督の祖父がバリトン歌手、叔父がテノール歌手で子供の頃からヴェルディやグノーなどのオペラ作品に触れていたというだけあって『さようならふるさとの家よ』をチョイスし、サスペンスと融合させたのはさすが。そしてアリアもさることながら、今もサントラアルバムが売れているというウラジミール・コスマの映画音楽も必聴です。
『アリア』
アリア HDマスター版 [DVD]
オペラの独唱、アリアを楽しむには最適なショーケース的なオムニバス映画。ヴェルディ、リュリ、コルンゴルト、ラモー、ワーグナー、プッチーニ、ギュスターヴ・シャルパンティエ、レオンカヴァッロといった8人の作曲家のオペラのアリアを、10人の監督がショートムービーにしたもので、簡単に言えばオペラ版MVみたいなノリ。とはいえ、監督には視覚映像の魔術師と言われる『地球に落ちてきた男』などのニコラス・ローグ、ヌーヴェルヴァーグを代表する『勝手にしやがれ』のジャン=リュック・ゴダール、『プレタポルテ』のロバート・アルトマン、『カラヴァッジオ』のデレク・ジャーマン、『トミー』ケン・ラッセルなど懐かしくも豪華な面々が先に紹介した『椿姫ができるまで』の演出家のごとく、アリアを自分なりに解釈し映像化しています。それだけに素晴らしい解釈、いきすぎたやりすぎ感などなど作品によって様々な受け取り方ができるのが面白いと思います。
個人的には『誰も寝てはならぬ』を使ったケン・ラッセル監督の作品。撮影2ヶ月前に自動車事故によって亡くなった彼のアシスタントの出来事からアイデアを得たそうで、自分を縛る邪悪な惑星、土星の輪から逃れようとする瀕死の女性を描いた絢爛たる映像とアリアがぴったりマッチしておすすめ。
そしてデレク・ジャーマン監督『ルイーズ』より『その日から』は老女優の引退舞台のカーテンコールで若き日の自分と恋人を思い出すというもので、8ミリフィルムで回想シーンが撮られていて、少しピントの甘いぼやけたフラッシュバックは、今見るとまさに思い出のかけらに触れたような崇高さを感じます。そしてチャールズ・スターリッジ監督の『運命の力』の『天使の中の聖処女』。モノクロの映像中、子供たちがキーのついたままの車を見つけドライブしてしまう・・・というもの。天使たちのマントで私を覆ってという歌詞から想を得た映像は何度も見入ってしまうほど。オペラ入門編の一つとして観ると興味を持ってもらえるかも。

ほかにも『007/慰めの報酬』(2008年)や『ローマでアモーレ』(2012年)『アンタッチャブル』(1987年)などなどオペラを効果的に使った映画がたくさんあるので、『マダム・フローレンス!夢見るふたり』を観た後は、余韻を楽しみつつ併せて鑑賞して観てはいかがでしょうか。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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