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池松壮亮、普通を演じられる現代っ子は年上キラー!今、必見の5作

2016.12.07(Wed) | 上原礼子

『ラスト サムライ』(03)で、トム・クルーズ演じるアメリカ将校を涙ながらに引き留めていたあの少年は、今年、実に10本もの出演作が劇場公開される超売れっ子となりました。俳優・池松壮亮にとっての2016年は、憧れの是枝裕和監督や西川美和監督、東陽一監督など、日本を代表する映画監督からのラブコールに応じ、菅田将暉ら同世代の実力派俳優と競演し、さらに飛躍の年となったはず。そこで、改めて彼の魅力を堪能する5作を選んでみました。

“ダメ中年”阿部寛に寄り添える圧倒的“普通さ” 『海よりもまだ深く』
海よりもまだ深く
原作もの海街diaryの次に是枝裕和監督が手がけたのは、自身が生まれ育った団地を舞台にした完全オリジナル作品。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、先日はノルウェー最大の国際映画祭とされる第26回フィルムズ・フロム・ザ・サウス映画祭でグランプリ「シルバー・ミラー賞」を受賞しました。主人公・良多(阿部寛)は、15年も前に文学賞を受賞したきりの売れない作家。ダメな元夫に愛想を尽かした妻(真木よう子)は、11歳の息子を育てつつ再婚を考えています。良多の唯一のよりどころは、団地で気ままに一人暮らしをする母(樹木希林)でしたが…。

阿部さんの「わかってるよ~、わかってるけどさ~」という言い訳だけは達者なダメ男ぶりが、見事にハマッている本作ですが、「親子あるある」、特に「母と息子あるある」が随所に散りばめられているのもまたポイント。是枝監督と阿部さんは4度目、樹木さんとは5度目のタッグ。阿部さん&樹木さんの親子共演は歩いても 歩いても以来2度目というだけに、その掛け合いは絶妙です。

そんな中、意外にも池松さんは是枝組初参加。日大芸術学部映画学科監督コースを卒業した彼にとって、是枝監督は憧れの存在の1人のはずですが、そこはさすが。いつものナチュラルな存在感で、阿部さん演じる良多が「小説のための取材」と称している探偵業での相棒・町田健斗役を好演。“ダメ中年”を見守り、時にいさめ、どこか達観した若者に扮しています。“夢見た未来と少し違う今を生きる”大人たちの中にあって、彼だけはなぜか自然体で生きているようです。

劇中には「良多さんに借りがある」というセリフがあるのですが、どうやら是枝監督は、町田としての池松さんを深掘りしたくなったようで、ハナレグミによる主題歌「深呼吸」のMVを自ら撮り下ろし、彼を主演にその答えを示しています。こうした縁もあってか、西川監督の『永い言い訳』にも、本木雅弘演じる、妻を亡くしても泣くことのできない人気作家のマネージャー役として出演。やはり、ちょっぴりダメな年上のそばにいて見守る役がお似合いのようです。
平凡な主婦に“動機”を与える魅惑の年下男子 『紙の月』
紙の月
池松さんといえば、“濡れ場キング”との呼び声も。そのきっかけになった作品の1つが、2014年、主演の宮沢りえに数々の女優賞をもたらした吉田大八監督の『紙の月』。舞台は、バブル崩壊直後の1994年。夫と二人暮らし、銀行の契約社員として外回りの仕事を始めた主婦・梅澤梨花は、自分への関心が薄い夫との間に埋めようのない溝ができています。そんな中、顧客の孫で大学生の光太と出会い、まもなくホテルへ。顧客に信頼され、大金を扱うことで自信や大胆さを得た彼女は、まるで子犬のような眼差しの光太に借金を打ち明けられたことから、顧客の預金に手をつけるように…。一度そうなってしまえば、あとはもう転がり落ちるだけ。沼の底まで堕ちた主人公だけでなく、逢瀬を重ね豪遊するうちに変容していく光太の横顔からもまた、悲鳴のような声なき声が聞こえてきそうです。

吉田監督は、池松さんを横道世之介で知り、初演出舞台「ぬるい毒」に抜擢、すぐさま本作の宮沢さんの相手役に指名したそう。また、本作のように年上女を夢中にさせる年下男としては、今年も、配信ドラマから劇場公開された三浦大輔監督(愛の渦)×寺島しのぶの『裏切りの街』、常盤貴子にストーキングされる『だれかの木琴』(東監督)、小島聖と恋人同士になる『続・深夜食堂』(松岡錠司監督)と続き、年上キラーぶりを発揮しております。
俳優業を本格化させた貴重な“胸キュン”映画 『半分の月がのぼる空』
半分の月がのぼる空 [DVD]
スクリーンデビューの『ラスト サムライ』以降も、東京と地元を行き来して仕事を続けていた池松さんですが、高校卒業後、上京して初めての主演作となったのがこちら。橋本紡による同名ベストセラー恋愛小説を『神様のカルテ』『ガール』の深川栄洋監督が映画化。肝炎で入院中の高校生・裕一は、重い心臓病で病院を転々としている里香(忽那汐里)と出会います。この里香が、今でいうところの“ドS”女子で、「命令」と称しては裕一にわがままを言いたい放題。しかし、やがて2人は惹かれ合っていくようになります。青春ですネ。一方、医師の夏目(大泉洋)は、最愛の妻を病気で亡くして以来、手術をすることができなくなっていました…。

裕一と里香の純愛は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」でつながり、ラスト30分ほどで物語の秘密が明かされます。まさに現在全盛の胸キュン映画のはしりといえますが、池松さんは当時18歳、気が優しく不器用な等身大の男の子役がとても眩しく映ります。
菅田将暉とガッツリ組んだ濃密な青春会話劇 『セトウツミ』
セトウツミ
20代で同じく超売れっ子の菅田さんと、詰め襟の男子高校生役を演じた『セトウツミ』。人気漫画を『さよなら渓谷』や『まほろ駅前』シリーズの大森立嗣監督が映画化。クールな塾通いの内海(ウツミ)を池松さん、天然で明るい元サッカー部の瀬戸(セト)を菅田さんが演じます。「喋るだけの青春」というだけに、75分間、ほぼ2人だけのユルくて、シュールな会話劇。ぱっと見、個性のまるで違う2人が、放課後、川べりでむだ話をしているうちに、見かけとは違うそれぞれの性格や家庭環境、人生観までが透けて見えてくるかのよう。実は2人はとてもよく似ていて、同じ孤独や寂しさを抱えているのではないかと思えてきます。

大森監督によれば、初対面の顔合わせの際、2人がひと言も口をきかなかったので焦ったそうですが、並んで座る2人からは、お互いが隣にいるだけでいい、という信頼感を感じることができるでしょう。ただ、福岡出身の池松さんは関西弁での演技に初挑戦し、かなり苦戦した模様。大阪出身の菅田さんからすると「78点」と、なんとも微妙な評価だったとか。2人は『デスノート Light up the NEW world』でも共演を果たしています。
見逃し厳禁!次世代の雄が一挙に集結 『ディストラクション・ベイビーズ』
ディストラクション・ベイビーズ
こちらは一転、柳楽優弥に菅田さん、小松菜奈、村上虹郎という若き才能が集結し、暴力と狂気をまとったショッキングな青春群像劇。『イエローキッド』『NINIFUNI』などで内外から注目を集めていた真利子哲也監督の商業映画デビュー作で、スイスの第69回ロカルノ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。池松さんは以前から監督のファンだったそうで、念願かなっての出演です。演じるのは、キャバクラの店長・三浦役。珍しく“黒服”姿を披露していますが、人を蹴ろうとしてずっこけたり、ちょっぴりヘタレ。出演シーンは少ないながらも、柳楽さんと菅田さんが体現する、思想も秩序もない現代の暴力による“破壊”の目撃者になっております。

本当にこの映画は、柳楽さんはじめ、全員がもう恐るべし。次世代の日本映画界を担う若手俳優が一堂に会した本作は、見逃すことのできない1本です。

そのほか、今年の出演作としては、斎藤工&成海璃子と共演した小池真理子原作の『無伴奏』(矢崎仁司監督)、リリー・フランキーの息子役を演じたシェル・コレクター(坪田義史監督)と多岐にわたります。何を考えているのかわからない現代っ子風でありながら、どこまでも自然体で、時に妖艶な魅力をも併せ持つ池松さん。どの作品を観ても“いい意味で”裏切られるだけに、監督や同業者のみならず映画ファンにとっても信頼を寄せられる俳優の1人といえます。これからの活躍も楽しみです。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当したこともあり、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録と、映画を通じて悲嘆を癒やす試み【映画でグリーフワーク】をFacebookにて随時更新中。

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