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傑作の宝庫!ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞部門の傑作選!

2016.12.18(Sun) | 宇咲英人

ゴールデン・グローブ賞のノミネート作品が発表され、いよいよ賞レース関連がにぎわい始めた今日この頃。特にゴールデン・グローブ賞は、ハリウッド映画記者協会の会員による投票、つまり、記者による確かな目で選出されるため、アカデミー賞の前哨戦とも呼ばれるなど、毎年注目を集めている。そこで今回、その確かな目で選出されるノミネート作品、受賞作の中でも、隠れた傑作の多い「外国語映画賞」の歴代作品をいくつかピックアップ!

集団ヒステリーの怖さ、愚かさをリアルに描く 『偽りなき者』
偽りなき者
「子供と酔っ払いは嘘をつかない」というデンマークのことわざで始まる本作。作品を見ればかなり皮肉った出だしだとわかるのだけれども。
離婚歴のある保育士のルーカスは、親友の娘であり、職場である幼稚園の園児、クララから性的虐待を受けたと告白される。まわりの大人たちは冒頭のことわざ通り、クララの言葉を信用し、ルーカスは変態保育士としての烙印を押される。「疑惑を向けられると、そんなに成人男性の言葉って信用されないもの!?」と訝しい気持ちにもなるが、これがあれよあれよという間に、不幸も重なって、一気に誰もが耳を傾けなくなる。
例えば、クララが、「両親がけんかしてて、家にいるのが辛いから、たまに遊びに来ていい?」とルーカスにたずねる。ルーカスは心優しい男なのでもちろん了解する。が、これが後に疑惑の目を向けられた時には、「クララがルーカスと一緒に二人で会ってるのを見たわ!」と他の幼稚園の保護者に言われ、全員「やっぱり!」という証拠になってしまう。そんな良かれと思ったことが裏目に出たり、離婚して中年の男が一人で生活しているといった状況など、集団ヒステリックとも呼べる異常な状態になるのも致し方ない、と思わせる説得力がすごい、そして怖い!
主演はマッツ・ミケルセン。本作でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞も納得の存在感。穏やかな男が、生活や尊厳を破壊されていく様を静かでリアリティある演技で演じきっている。
フランス語映画史上1位の興行成績も納得の快作 『最強のふたり』
最強のふたり
口コミが口コミを呼び、興行収入は16億円を超え、日本のフランス語映画史上第一位の大ヒットとなった本作。
体が不自由な大富豪とその介護人の友情を描いており、軽妙な語り口とテンポ、そしてジンとくるいいシーンが随所に散りばめられたまさに名作。障害者が主人公、と聞くと話が重そう、お涙頂戴、といったイメージが一般的だが、本作はそういったイメージを小気味よく覆してくれる。
まず、介護人のドリスが頸髄損傷のフィリップをまったく障害者扱いしない。子供のような好奇心と無邪気さで接する。フィリップの足に熱湯を垂らして、本当に感じないのか試してみたり、性的に感じるのかとストレートに聞いてしまったり! その他、スラム街出身のドリスの貧しい環境による問題、フィリップの恋など、いいシーンが目白押し。本当に映画らしい、いい映画と思って見ていると、実話をベースにしていることに驚かされる。
圧倒的な映像と深淵なテーマ、鬼才監督の代表作 『裁かれるは善人のみ』
裁かれるは善人のみ
第72回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞受賞作。監督はアンドレイ・ズビャギンツェフ。デビュー作「父、帰る」でいきなりのヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞し、続く「ヴェラの祈り」「エレナの惑い」では、共にカンヌ国際映画祭で賞を受賞するなど、とにかく各国の賞レースに強い、世界が認めた鬼才。
その魅力は何と言っても、圧倒的な画力と深淵なテーマ性。本作も冒頭から映される、ロシアの寒々しく、荒涼たる大自然の画が、これから描かれる人間たち所業がまるでちっぽけなことのように思わせるほど、迫力に満ちている。テーマ性で言えば、今回は、国家権力、家族、人間の所業といったところ。そのドラマを大自然=神が俯瞰から見ているような感覚を、見る側に感じさせる独特のスタイルは監督ならでは。不幸が起こる、戦う、受け入れる。「結局は抗えないんだよ」と諭されているような感覚。この映画の中の登場人物、そのほとんどが欠点があり、また、過ちを犯す。いわゆる愚か者たちだけで構成されている。ヒーロー不在。それでもぐいぐい引き込まれる語り口、見せ方はやっぱり必見の一本だ。
神様メール
その他、前回 第73回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされた作品としては、
ベルギーの異才ジャコ・バン・ドルマル監督が前作「ミスター・ノーバディ」以来6年ぶりに手がけたファンタジックコメディ『神様メール』や、
トルコ出身の新人女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュベンの、デビュー作ながら世界各地の映画祭で高く評価され、第88回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた『裸足の季節』など、見逃せない作品が目白押しだ。

いかがでしたか?とかく賞レースは作品賞や主演男優賞など派手な賞に目が行きがちですが、実は本当にいい映画は、外国語映画賞にあり!だと思います。スター俳優を用いることなく、純粋に作品の力で勝負、また、とにかく作り手の描きたいものがストレートに伝わってくる作品ばかり。賞レースを見るならば、ぜひ外国語映画賞も注目してみてください!

Writer | 宇咲英人

ファッション誌、タウン誌、旅行雑誌、映画雑誌編集を経て、WEBディレクターとして映画コンテンツを手がけています。男っぽい映画が好き。

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