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予想する前にやっぱ見ておきましょ!アカデミー賞作品賞4本!

2017.02.12(Sun) | 仲谷暢之

今年の作品賞の大本命とされているのがデイミアン・チャゼル監督の『ラ・ラ・ランド』。すでに観せていただきましたが、オーヴァーチュア代わりのオープニングの高揚感と、そこだけでロスアンジェルスという街の縮図を理解させる素晴らしさに、まさにツカミはオッケー!でした。そして男と女の出会いからを一年で描くシンプルなスートリーな中に詰め込まれた映画の奇跡に大満足。何より全編、絵に力があります。
今回は、『ラ・ラ・ランド』作品賞受賞しての祈りを込めて、絵に力がある過去のアカデミー賞作品賞受賞映画をチョイス!

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※各作品画像をクリックすると、作品情報や予告編をご覧頂けます。

『ラストエンペラー』 1988年(第60回)アカデミー賞作品賞受賞
ラストエンペラー
公開された当時、自分は高校生。劇場で観た時はまだまだ子どもながら、その絢爛たる映像にグイグイ引き込まれ、2時間半以上の上映時間にもかかわらず、あっという間だった記憶があります。
清朝最後の皇帝で、のちに満州国の皇帝、最後には市井の人となった愛新覚羅溥儀の激動の人生を描いた物語。
映画開始早々、紫禁城内で死期の近い西太后と3歳の溥儀が対峙するシーンは、グロテスクという言葉がぴったりなほど、おどろおどろしさが漂う。無垢な存在の溥儀と、こびりついた垢の塊のような西太后との対比は、彼のこれからの人生という水面にボトリと黒いものを落ちたのを目撃したようなトラウマ必至な場面。
そして即位した子どもの溥儀が、目の前に張られ、風で揺れている黄色い幕を面白がってめくろうとするとその幕がフワっと上がり、紫禁城内、遥か遠くまで何百人もの重臣たちが小さい溥儀に対して叩頭の礼を捧げているのが一気に見せる圧巻のシーン!当然、まだCG技術が発達していない頃なので全部リアルエキストラ!絵力の強さにいきなり圧倒されるはず。
溥儀が成長するほどに紫禁城の中と、外の世界とのギャップに悩みつつ自分が時代に取り残されていることを感じる彼の姿に胸が痛くなります。特に時代に翻弄される青年期から晩年を演じたジョン・ローンの熱演は白眉。マイケル・チミの監督の『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』でチャイニーズ・マフィアで注目されて、今作で日本でもブレイクしたけどここ数年、日本では見る機会が少ないのが残念。
光の魔術師と呼ばれ、べルナルド・ベルトルッチ監督と名コンビであるヴィットリオ・ストラーロの映像に酔いしれながら溥儀の人生をぜひ堪能してください。
『英国王のスピーチ』 2011年(第83回)アカデミー賞作品賞受賞
英国王のスピーチ
元エリザベス女王の父君、イギリス王ジョージ6世。吃音がひどかった王が、オーストラリア人の言語療法士、ライオネル・ローグの元を訪ね、治療を通して友情を育み、苦手だった演説に挑むというもの。
『レ・ミゼラブル』『リリーのすべて』と名作を生み出しているトム・フーパー監督の特徴でもある人物構図の不安定さがすでに確立、ジョージ6世と言語療法士のローグの関係性を見事に表しているのがも面白い。さらに彼の映画の特徴でもある、靴音の魅力というのもチェックしていただけるといいかも。しかもクイーンズ・イングリッシュやオージー・イングリッシュの違いが楽しめるのも魅力(日本人でもわかるくらい)。
ある意味『マイ・フェア・レディ』(この映画も1964年アカデミー賞作品賞受賞)の言語学専門のヒギンズ教授と、貧しい花売り娘イライザにも通ずる関係が繰り広げられる。ただしおっさん同士だけど。アカデミー賞主演男優賞を受賞したコリン・ファースと、『シャイン』で同じくアカデミー賞主演男優賞を受賞したジェフリー・ラッシュとのやりとりが本当に面白いい。まさに演技合戦を楽しめる。
最初はお互いのエゴを出し、受け入れない空気を出し合う二人が徐々に心を開いてくプロセスは、あるきっかけからグッと距離が縮まり、だけど再び仲違いし、そして・・・という展開は一種のバディムービーのセオリーをしっかり踏んでいることに気付くと、コメディとして観る方が最も楽しめるかも。
『アーティスト』 2012年(第84回)アカデミー賞作品賞受賞
アーティスト
第84回アカデミー賞作品賞を受賞をした今作。サイレント映画としては第1回の『つばさ』以来だそう。
1920年代のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、ひょんなことから新人女優のペピー・ミラーと出会い、彼女にアドバイスをし、女優へのきっかけをと作ってあげます。その甲斐あって、彼女は徐々にスターへの階段を手にする反面、ちょうどサイレントからトーキーへと移り変わっていく時代となり、サイレントに固執するジョージは、スターの階段を転げ落ちていく・・・。
監督のサイレント映画愛が炸裂しまくり。キャスト・スタッフロールからいきなりサイレント映画のフォントを使い、大スター、ジョージ・ヴァレンティン主演の活劇映画が展開される。サイレント映画を知らない世代もこの展開で完全に1920年代にタイムスリップしたかの感じになるかも。
映画評論家の淀川長治さんが生きていたら「まぁ、懐かしい、懐かしい、監督はまだ若いのにサイレントの匂いを見事に掴んでいるね」と、評価してたかも。
サイレントならではの目や眉、大仰な演技で表現するジョージと、サイレントになるにつれ、自然な演技を繰り出すペパーの違い、そしてやたら階段を昇っていくペピー、反対に階段を下りていくジョージの対比が二人の人生を暗示しているベタさもサイレントならではの、絵で見せる手法で楽しい。そしてジョージの愛犬であり相棒のジャックの達者ぶりは、どうしてもチャップリンの『犬の生活』や『黄金狂時代』を思い出させてくれる。さらにジョージの忠実な運転手や、ある事実を知るシーンなどはジーン・ワイルダー監督の『サンセット大通り』(サイレント映画ではないけれど)を彷彿とさせたりと、先人たちへのリスペクト、オマージュがちりばめられていて、これをきっかけにいろんなサイレント映画を観たくなるはず。
『それでも夜は開ける』 2014年(第86回)アカデミー賞作品賞受賞
それでも夜は明ける
劇場で見終わった時の衝撃は、忘れられない。しばらく席を立てないというか、席に座って気持ちを落ち着かせなければふらついてしまうような感覚に陥ったから。奴隷制度を描いた作品はテレビドラマ『ルーツ』や『マンディンゴ』『カラーパープル』『ジャンゴ繋がれざる者』などなど少なくはないけれど、黒人の監督がこれほどの奴隷制度を描くとは・・・。
原作は南北戦争が勃発する前、1853年に出版されベストセラーになったアフリカ系アメリカ人のソロモン・ノーサップの回想録。自由黒人(この言葉も嫌いだ)でバイオリニストだった彼が、騙され誘拐され売り飛ばされ、以後12年間にわたって強いられた奴隷生活を描いた物語。
奴隷制度は1865年まで続いていたそう。でも1808年に海外から黒人を“輸入”することが禁止されてからは、奴隷の価格が跳ね上がったために、自由黒人を誘拐してまで奴隷を供給していたという事実にショックしかありません。その一人がソロモン。それまでの生き方とは180度変わり、人に従うことで生きていけなければならないという、まさにこの世の地獄を描いている。反対に黒人を当たり前のように奴隷としか思っていないマイケル・ファスベンダーやポール・ジアマッティたちが演じる白人たちの哀れさと狂気が、どこか自分たちにも陰を投げかける。
ソロモンが、反目する大工のティビッツ(演じるはポール・ダノ。素晴らしいまでに忌々しい!)に縛り首にされかけ、間一髪で助けられたものの足が、着くか着かないかの足の状態で主人が来るまで放置されて下り、その後ろの方で奴隷仲間たちは日常の仕事に戻り、子どもたちは遊んでる。この場面にはこの映画で一番の恐怖。しかも長回しで撮られているので緊迫感がすごく絵の持つ力が皮膚レベルまで染み込んでくるような感じ。そして、主人に弄ばれる若き奴隷女性、パッツィがソロモンに沼へ連れて行ってのどが動かなくなるまで掴んで沈めてと懇願する場面は、絶望という言葉以外浮かばない。そんな二人にはさらなる絶望が待っているのだけど・・・、最後まで家族と会うという一縷の望みだけを糧にソロモンは絶望の淵で戦う。 これは観なければいけない、しっかりと観なければいけない映画、そして作品賞を受賞した価値のある映画。

今年のアカデミー賞発表は現地時間の2月26日。どんな作品が受賞をし、歴史に名前を残すのでしょうか。その前に、今回チョイスした作品を見て、絵が発する力を感じ、今年のノミネートを予想して見てはいかがでしょうか。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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