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盗み見NGは分かっちゃいるけど…とにかくお隣が気になる映画5選

2017.04.12(Wed) | 足立美由紀

いよいよ春本番。新生活が始まるこの時期は、新たな出会いの季節でもあります。引っ越しや旅先で素敵な人とお隣り同士になったり、ふとしたきっかけでそれまで気にも留めなかった人に興味を持つ~なんてこともあるかもしれません。けれど、いくら気になっても盗み見はほどほどに。時にはその好奇心が思わぬトラブルを呼んでしまうかも! ということで、今回はとにかくお隣さんのことが気になって仕方がない人たちを描いた映画を5本紹介します。

愛読小説そっくりの状況に、妄想とのぞき見が止まらない!ユーモア漂う人間ドラマ 『ボヴァリー夫人とパン屋』
ボヴァリー夫人とパン屋
平凡で退屈な田舎暮らしをする医師の妻が、不倫の恋に身をやつす焦燥感を描いた作家ギュスターヴ・フローベールによる傑作小説ボヴァリー夫人。この小説を愛読するパン屋の主人宅の向いに、“ボヴァリー”という名の夫婦が引っ越してきたことで始まるちょっとユーモラスなヒューマンドラマです。

仏・ノルマンディーの美しい田園風景が広がる村。12年間務めた出版社を辞め家業のパン屋を継いだマルタンは、大好きな本を読むことで田舎暮らしの退屈さを紛らわせています。そんな折、新たな隣人となったボヴァリー家の若妻ジェマの不倫現場を目撃。まるで小説さながらの展開に興奮した彼は、常にのぞき見をして彼女の様子をうかがうのですが。

まぶしいほどの若さと肉感的な美しさをそなえたボヴァリー家の妻ジェマ。彼女もマルタンと同様に田舎に飽いていたのでしょう、マルタンの作る都会的なパンを「どんだけの味!?」というくらい褒めるのですが、その味わう様子が少しエッチ(笑)。マルタンはそんな彼女の持つ“危うさ”にすっかり魅せられてしまいます。映画は朝に夕にとボヴァリー家をのぞき見するマルタンの視線を借りて、この美しい若妻の“堕ちていく様子”を映し出していきますが、いつしかマルタンは小説と現実がごっちゃに。のどかな風景の中展開していく不穏なシークエンスは、疾走感満点。退屈しのぎのラブアフェア&のぞき見の代償はあまりに大きかった! まさにペーソスあふれる大人のファンタジーです。
引っ越し先で出会った、不気味な隣人から目が離せない! クロサワ・ワールド全開のミステリー 『クリーピー 偽りの隣人』
クリーピー
これまでオリジナルストーリーの多かった『CURE』(97)、『回路』(00)の黒沢清監督が、日本ミステリー文学大賞・新人賞を受賞した小川裕の小説を実写化したサスペンス・スリラー。スリラーの名手としていまフランスでは“クロサワ?”と聞けば「アキラ」でなく「キヨシ!」という答えが返ってくるほど人気が高い黒沢監督が、西島秀俊を主役に、奇妙な隣人家族と未解決の一家失踪事件に潜む2つの謎を活写します。

新居に引っ越したばかりの犯罪心理学者・高倉(西島秀俊)は、かつて警察務めだった頃の同僚・野上(東出昌大)から6年前に起きた一家失踪事件の分析を頼まれます。捜査はなかなか進展しませんが、そんな時、隣人である西野(香川照之)の娘・澪(藤野涼子)が「あの人、父親じゃありません。全然知らない人です」と告げてきて…。

高倉の妻・康子(竹内結子)は、奇妙な隣人・西野が気になって仕方がありません。よせばいいのにつまらない用事を作っては西野家を訪れ、一家の生活をのぞき見します。この行為は一見単なるミーハーのようにも感じますが、実は心に闇を抱える康子が、誘蛾灯のように西野の闇に惹きつけられたせい。同じく過去にトラウマを持つ高倉が、このクリーピー(=身の毛のよだつような、不気味な)で魅力的な西野とどう対峙するのか~。

人間の心の奥底に潜む恐怖を描き続けてきた黒沢監督が満を持して放つ本作は、心をザワつかせるクロサワ・ワールド全開の衝撃作。ケレン味あふれる舞台装置とともに、西野に扮した香川照之による変幻自在の怪演もご堪能ください。
のぞく側ものぞかれる側もフェティッシュでアブノーマル。なのに美しい物語 『女が眠る時』
女が眠る時
スモーク』(95)が世界で評価されたウェイン・ワン監督がメガホンをとった意欲作。ビートたけし、西島秀俊、忽那沙里をキャストに迎え描く、自身初の日本映画です。

スランプに陥った作家・清水健二(西島)は、休暇で訪れたホテルで初老の男・佐原(ビート)と若く美しい女性・美樹(忽那)の二人組に目を奪われます。健二は見るからに訳アリそうな年の差カップルに興味を持つのですが。

佐原と美樹の滞在する部屋を盗み見したり、外出時には後をつけるなど、健二は2人に強い関心を示します。その常軌を逸する執着ぶりや佐原が部屋で美樹にする行為はかなりフェティッシュでアブノーマルですが、極限まで削られたセリフや静けさをまとった美しい情景が物語に幻想的な美しさを与えています。原作はスペイン人作家ハビエル・マリエルの短編小説。役者ビート・たけしの存在感が光る、珠玉のミステリーです。
ワケありな人々が暮らす、隣家の芝生は赤かった… 『レッド・ファミリー』
レッド・ファミリー
疑似ファミリーとなって韓国に潜伏する北朝鮮スパイを描いた衝撃の感動作。その斬新さと胸を打つストーリーで、第26回東京国際映画祭・観客賞を受賞した社会派ドラマです。

北朝鮮のスパイ「ツツジ班」の4名は、国のため、国に残してきた家族のために理想的な家族を装いながら諜報活動をしています。常に監視を続ける隣人の韓国一家はケンカの絶えないダメファミリーで、彼らは「資本主義の限界」といつもバカにしていますが、そんなある日、ツツジ班に脱北者の暗殺命令が下されて…。

笑って、怒って、ケンカする隣人の韓国ファミリーに“自由”を感じ取ったツツジ班のメンバーは、彼らをディスりながらも眩しい存在として眺め続けます。これまで過激な描写とメッセージ性の高い作品を世に送りづつけてきた韓国の鬼才キム・キドクが製作・脚本を担当。「南北統一を心から願って書いた」という脚本は“当たり前の幸せ”の重要性を訴えかけてきます。
“理由のない尾行”から隣人の盗み見にハマる女子大生の成長ストーリー 『二重生活』
二重生活
修士論文のために隣人の尾行を始めた女子大生が、尾行対象者の裏の顔を知ったことで盗み見にハマっていく禁断の人間ドラマ。原作はフランス人女性アーティスト、ソフィ・カルの「本当の話」に触発されたという直木賞作家・小池真理子がつむいだ長編小説です。

大学院で哲学を専攻する珠(門脇麦)は、修士論文のテーマとして「1人の人間を追いかけて、人間とは何か考察してみては?」と指導教授(リリー・フランキー)に尾行をすすめられます。自分に全く関係のない人を追跡するという、いわば“理由のない尾行”のターゲットとして隣人・石坂(長谷川博己)を選んだ珠は、同棲している恋人の卓也(菅田将暉)そっちのけで監視をスタート。しかしある日、石坂が浮気していることに気が付いて…。

幸せな隣人一家の良きパパだと思っていた石坂に “浮気”という裏の顔があることを知った珠は、人の秘密を盗み見するという背徳の喜びにハマってしまいます。案の定彼女はトラブルに巻き込まれますが、それまで孤独に苛まれながら生きてきた珠は、秘密の先に潜む他人の孤独を知って精神的に成長していきます。尾行の高揚感やとまどいの表情など、リアルなカメラワークが映す禁断の心理エンターテイメントは絶品。したたかでしなやかな力強さを獲得した珠の、晴れ晴れとした笑顔の美しさったら!

誰かに興味を持ち、その人の秘密を共有する。人がのぞき見をするのは、誰かとつながりたいからかもしれません。もし興味をそそるお隣さんが引っ越してきても、のぞいたり盗み見したりせず、まず朝の挨拶から始めてみてはいかがでしょう。そこから何かが始まることもあるかもしれません、よ?

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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