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監督を、もっと!

2017.04.14(Fri) | 仲谷暢之

映画を見て感じることは、監督はどんな思いで作品を生み出したんだろう?ってこと。もっと監督のことを知れば、もっと作品を楽しめるのではないだろうか。バックボーンを理解することによって“わかる”映画の見方。
今回はそんな監督の姿を追ったドキュメンタリーを4本紹介します。

『ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』 >>★監督知る上での言葉:「真のアメリカ人の姿」
ロバート・アルトマン
 ロバート・アルトマン監督の作品を初めて見たのは1994年に公開された『プレタポルテ』。パリコレを舞台にデザイナーや記者、モデルなどが虚実入り混じった群像劇でマルチェロ・マストロヤンニやジュリア・ロバーツ、ソフィア・ローレン、アヌーク・エーメなどが出演のスター映画としても楽しめる作品でした。
 シニカルな視点、ブラックな笑い、20人以上もの名のある俳優に絶妙な見せ場を作り束ねる演出にいっぺんに酔いしれ、そこからアルトマン作品をチェックするように。
 『ザ・プレイヤー』はハリウッドの映画業界を舞台にした群像劇。ティム・ロビンス演じる映画会社の重役が誤って殺害してしまったことを巡って繰り広げられるストーリーでピカレスク・コメディと言った趣。この作品で再びロバート・アルトマンが脚光を浴びた作品。ハリウッドに群がる男女の姿のグロテスクさが素晴らしかった!
 『ショート・カッツ』はロサンゼルスに住む男女の日常から生まれるちょっとした事件が次々といろんなことを引き起こしてはどーたらこーたらと解決したり解決しなかったりというスケッチ集のような作品。しかもラストはアッと驚くばかり。これまた群像劇としても秀逸。『ナッシュビル』はロバート・アルトマンの作品の中でも評価の高いもので、確かに見ると大勢の人物が大統領選候補者の後援ライブに向かって様々なエピソードを紡いでいく展開に感心、さらに終盤に向かっていく高揚感もさすが。
 ただ作品の当たり外れがあるのも事実で、個人的には好きな作品、苦手な作品を併せ持った監督のひとりとしての位置付けでした。
 今作はそんなアルトマンの作品を検証しながら、彼ゆかりの俳優、スタッフ、奥さんのインタビューが挟み込まれたドキュメンタリー。
 アメリカ・インディペンデント映画の父と呼ばれたのは何故なのか?そして彼の作品には何故、俳優たちがこぞって出演したがったか?得意とした群像劇はどうやって演出したか?などが浮かびあがってくる面白さ。常連俳優のキース・キャラダインがアルトマン映画とは?と聞かれ「真のアメリカ人だ」と答えているのだけど、まさにアルトマンの作品はそうなんだと実感。だから失敗作と言われた実写化『ポパイ』も気持ちを切り替えて見直します。
『ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー』 >>★監督を知る上での言葉:「カンヌの海岸通りを歩く古いタイプの映画人は自問自答するだろう“これが映画か!”」
ふたりのヌーベルバーグ ゴダールとトリュフォー
 フランソワ・トリュフォーとジャン・リュック=ゴダールといえばヌーヴェルヴァーグの立役者。1950年代から始まったそれまでのフランス映画の作り方とは違う撮影所での経験もない若い作家が、ロケ撮影をメインとした即興演出、同時録音という手法で作る映画運動のことで、日本語で直訳すると新しい波のこと。
 昨年亡くなったジャック・リヴェット監督(『美しき諍い女』は必見!)の『王手飛車取り』という短編映画がヌーヴェル・ヴァーグの最初の作品と呼ばれているのだけど、世界中にその名が広がったのは、カンヌ映画祭でも絶賛され、監督賞を受賞したトリュフォーの初長編『大人は判ってくれない』。自身の分身とも言われたジャン=ピエール・レオーを主役に、自身の少年時代の自伝的作品で、家庭にも自分にも問題を抱える12歳のドワネル少年の日常を描いたストーリー。
 かたやゴダールは『勝手にしやがれ』。警察官殺しの青年の逃避行を描いたストーリー。ジャンプカットや高感度フィルムを使った荒く白黒が独特の風合いを出していたり、手持ちカメラゆえのブレた映像、照明を無視した画面など、その実験的な絵作りはむしろこちらの方がヌーヴェルヴァーグそのものと評されることもある映画。両作品は高校生の時に初めて観たけれど、かっこよさではゴダール、胸にきたのはトリュフォー。でもどちらも理解できたかというと、正直わからなかった。“なんかオシャレやん”というキーワードで見たような気になっていただけやったなと。だけど今回、このドキュメンタリーと併せて見直してみると、今では二作品の影響下にある映画をたくさん見ているせいか、なるほどそうかと感心したり、逆に可愛く感じたりして自分なりに理解できたけれど、公開された当時は本当に衝撃的だったんだろうなぁと実感した。淀川長治さんは昔、ヨーロッパには映画を潰した犯罪者がふたりいる。その一人はゴダールと言っていた(もう一人はイタリアの映画監督でヌーヴェルヴァーグの父と呼ばれるロベルト・ロッセリーニ)。理由は誰でも映画を作れるようにしたから。そんな淀川さんもある意味衝撃を受けたヌーヴェルヴァーグが、一体なんだったのか?をトリュフォーとゴダールを通して浮かび上がらせたのがこのドキュメンタリー。
 『大人は判ってくれない』の、当時としては衝撃的だったラストシーンから始まり、カンヌ映画祭で上映された後の興奮を映画批評雑誌『カイエ・デュ・シネマ』が書いたリポート記事が紹介される。「カンヌの海岸通りを歩く古いタイプの映画人は自問自答するだろう“これが映画か!”」。このトリュフォーへの評価が、ゴダールを刺激し『勝手にしやがれ』が生まれ、ヌーヴェルヴァーグが世界中の作家に影響を与えていき、ふたりが時代の寵児になっていく様が関係者の証言や当時の映像でわかる。しかし1968年にパリで起こった五月革命(学生運動を発端とした民衆の反体制運動)がきっかけとなってトリュフォーとゴダールは考え方の違いから袂を別つことになる。そしてヌーヴェルヴァーグの行く末も・・・。
 今作を見てから70年代以降のふたりの作品の変化を観ると、感慨深いものがあります。
『ホドロフスキーのDUNE』 >>★監督を知る上での言葉:「あまりのひどさに嬉しくなった」
ホドロフスキーのDUNE
 カルト映画の金字塔とも言うべき『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』を発表しているアレハンドロ・ホドロフスキー監督が70年代に企画した一本の映画、フランク・ハーバート原作のSF小説『デューン』。しかし残念ながらいろんな事情で映画化されることはなかった。もしこれが実現していたらとんでもない作品になっていただろうということを監督本人やプロデューサーなどの証言と当時の資料で、事の顛末を知らしめてくれるドキュメンタリー。
 『エル・トポ』はガンマンとその子どもの旅を描いた西部劇。でもひと筋縄もふた筋縄もいかない今見ても理解できないシュールな映画。『ホーリー・マウンテン』は不老不死の秘法を得るために修行に出る錬金術師の話。これもまたシュールな映像を堪能できる作品。まだ見ていない人はぜひ体験すべき映画!
 そんなホドロフスキーが今やから話せますねんという感じで語るエピソードが面白い。さらに実は今も映画化諦めてまへんでと『デューン』のことを詳細に語る様もなんだか楽しくなってくる。そう、まるで講談を聴いてるような感じ。
 すでに大スターだったミュージシャン、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーをパーティ会場で目が合ったからと出演を口説き、『市民ケーン』などの監督のオーソン・ウェルズに出てもらいたくて好きなレストランのシェフを雇うからと口説き、さらにはタロットカードを使ってサルバダール・ダリも口説く!(ギャラの話は最高!)そして絵コンテにはフランスの漫画家メビウスやSF画家の大家クリス・フォス、デザイナーには『エイリアン』でお馴染みのH・R・ギーガー、音楽にはピンク・フロイド、全財産売ってパリに来いと言われて来た『エイリアン』の脚本家であるダン・オバノンなどもうそうそうたるメンツが、人たらしのホドロフスキーによって集められるエピソードの面白いこと!
 そしてもう見てるだけでワクワクする絵コンテやキャラクターデザインの素晴らしさ。返す返すも完成しなかったのが悔やまれる。けれど、できなかったからこそ未完の『デューン』にまつわるドキュメンタリーを見ることができる幸せ。特に1984年にデヴィッド・リンチが監督した『デューン/砂の惑星』をホドロフスキーは見たかどうかを聞かれた時の「あまりのひどさに嬉しくなった」というコメントに爆笑。そして映画ができなかった事で疎遠となったプロデューサーと和解し、一緒に23年ぶりに新作リアリティのダンスを完成させた奇跡。人たらしは、いつまでも人たらしなんだなぁ。
『トルナトーレ 我が映画人生』 >>★監督を知る上での言葉:「この仕事は学ぶことに終わりがない」
トルナトーレ 我が映画人生
 今も映画評論家のおすぎのことをちょっと恨んでいる。淀川長治との対談で『ニュー・シネマ・パラダイス』を取り上げていた。その中であろうことか、いちばん涙がこみ上げてくるラストシーンのことをシレっと語っていたのだ。まだ見ていなかった自分が悪いと思ったけれど、やはり“あのシーン”を知ってしまってから見ると涙袋に溜まっていたであろう涙も出なかった。それだけに新鮮な気持ちで『ニュー・シネマ・パラダイス』を見直すには年月がかかった。
 それにしてもこの映画を監督したジュゼッペ・トルナトーレは当時33歳。なんと老成してたんやろうか!自分が33歳の時のことを思い出すとあまりの違いに愕然とする。さらに翌年にはイタリア版『東京物語』のような『みんな元気』を発表。名優マルチェロ・マストロヤンニ、名女優ミシェル・モルガンを演出するだけで凄い!
 その後も『海の上のピアニスト』『記憶の扉』『マレーナ』『シチリア!シチリア!』鑑定士と顔のない依頼人ある天文学者の恋文といった作品を発表する監督の創作の秘密を探ったドキュメンタリー。
 「この仕事は学ぶことに終わりがない」とトルナトーレ監督は言う。いい言葉だなと思う。学ぶからこそ生まれてくる創作意欲、アイデアを映画として完成させる熱意。さらにインタビューや関係者の証言から浮かび上がる“郷愁”。英語ではノスタルジア。『ニュー・シネマ・パラダイス』は映画への“郷愁”。『みんな元気』は俳優への“郷愁”。『マレーナ』は女性への“郷愁”。『海の上のピアニスト』は音楽への“郷愁”。『シチリア!シチリア!』は故郷への“郷愁”など、トルナトーレの作品には何かしらの“郷愁”が込められているのがわかるのは興味深い。その“郷愁”と言うキーワードで作品群を見れば、また新しい感動が得られるはず。

これら監督のドキュメンタリーを経て、まだ見ていない作品、もしくはまだ見ていない作品に触れれば、彼らの映画に対峙する姿を再認識できるはず。そして映画の見方もちょっと変わるかも。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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