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魅力炸裂! 鬼才・三池崇史監督の限界ギリギリ映画5選

2017.04.23(Sun) | 足立美由紀

ティム・バートン、ポール・バーホーベン、M・ナイト・シャマラン…。世界に鬼才と言われる監督は多数いますが、日本だったら断然、三池崇史監督!
4月29日には最新映画『無限の住人』が公開されるほか、大ヒットコミックの実写化『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(8月4日公開)、東野圭吾のデビュー30周年記念小説を櫻井翔主演で描く『ラプラスの魔女』(2018年)など注目作が続々と公開予定。「依頼された仕事は基本的に断らない」と公言し、アクションからファミリー映画まで数多くの作品を手がける監督ですが、今回はその中でも鬼才の冠に相応しい “限界ギリギリ映画” を5本お届けします。

300人をぶった切る、チャンバラ・エンターテインメント! 『無限の住人』
無限の住人_WEB用ポスター
累計発行部数750万部を記録する沙村広明の大ヒット時代劇コミックを、木村拓哉主演で実写化。不老不死となる「血仙蟲(けっせんちゅう)」を体内に宿した浪人・万次(木村)が、少女・凛(杉咲花)の仇討ちの用心棒となって大暴れする“ぶった切り”アクション時代劇です。

“100人切り”と呼ばれる万次の異名のルーツとなったのが、映画冒頭で描かれるシークエンス。賞金稼ぎに最愛の妹・町(杉咲花/一人二役)を殺された万次が、激昂してバッタバッタと100人の敵を切り捨てるモノクローム映像が最高にクールでスタイリッシュ。万次は最強の剣客集団・逸刀流を統べる天津影久(福士蒼汰)への仇討ちが無謀な計画だと思いながらも、妹の面影を持つ凛をほっておけません。時折ボソっとつっこみを入れる口調に既視感があるのは残念ですが、そこはキムタク。小さい頃から剣道を嗜んでいるだけあって腰が入った刀さばきは見事ですし、スクリーン映えする華がある。彼が生来のスターであることを実感させられます。

また哀しみを抱えたミステリアスな強豪・閑馬永空(市川海老蔵)とのショッキングな格闘シーンや、スリットが入った着物姿が妖艶な三節槍の使い手、逸刀流の女傑・乙橘槇絵(戸田恵梨香)との変則戦、宿敵・天津と共に挑む脅威の300人切りなど、キムタクがノースタントで臨んだというバトルシーンは圧巻の迫力。時に肉薄し、時に俯瞰する娯楽性に富んだカメラワークが高揚感をあおります。

死ぬことを禁じられた万次の悲哀と限界ギリギリな格闘シーンが堪能できる2時間20分のチャンバラ・エンターテインメント、いよいよ開幕です。

◆『無限の住人
4月29日(土)より全国公開
(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会
不吉な嫌われ者のクローズ(=カラスたち)が拳で語る青春!「クローズZERO」シリーズ
クローズZERO
高橋ヒロシの人気コミック「クローズ」の前日譚をオリジナルストーリーで実写映画化。不良たちが集まる鈴蘭高校の覇権争いを描いたシリーズ3本で、三池監督は『クローズZERO(以下「I」)』(2007年)、『クローズZERO II(以下「II」)』(2009年)を手がけています。

県内でも不良校として悪名高い鈴蘭高校では、拳に自信のある猛者たちが常に熾烈なテッペン争いを繰り広げています。その群雄割拠の状態に新たな強敵が現れて…というのがシリーズのパターン。高校生の抗争のため、基本的なバトルは徒手空拳の肉弾戦ですが、それだけに接近戦がつづく格闘シーンはこれぞ三池映画と言うほどの濃密なバイオレンス描写が続きます。

「I」では最もテッペンに近い男とされる芹沢多摩雄(山田孝之)率いる芹沢軍団に、転校生の滝谷源治(小栗旬)率いるG.P.S(GENJI.PERFECT.SEIHA)がバトルを仕掛けますが、これは源治がヤクザの跡目を継ぐための課題として組長から鈴蘭制覇を言い渡されたから。がむしゃらにテッペンを目指す滝谷を演じた小栗旬のすさまじい気迫に痺れます。一方「II」では、休戦協定を結んでいたはずの武闘派集団・鳳仙学園との抗争が勃発。滝谷ほか鈴蘭高校のクローズが決起して敵地へとなだれ込む、総勢500人の殴り合いは壮観すぎてむしろ清々しい!
少年2人のプラトニックで耽美な愛 『46億年の恋』
46億年の恋
故・梶原一騎の遺稿を弟の故・真樹日佐夫がまとめ、正木亜都の名で発表した小説「少年Aえれじぃ」を、三池監督が大胆にアレンジして実写化したラブ・ファンタジー。刑務所の中で偶然同じ日に入所した少年が、奇妙な殺人事件の当事者となる詩的で刹那的な物語です。第56回ベルリン国際映画祭に出品され、絶賛されました。

これまで独自性の高い作品を多数手がけてきた三池監督作の中でも特に異彩を放つ本作。男性どうしの様々な欲望が登場するものの、刑務所という狭い空間で育まれた主人公2人のプラトニックで耽美な愛が描かれています。注目すべきはゲイバーで男性客を殴り殺した有吉淳を繊細に演じた松田龍平と、幼い頃から犯罪に染まって生きてきた凶暴な香月史郎に扮した安藤政信が醸し出す“静”と“動”のコントラスト。 ロケットの発射台や天国へ通じると噂されるピラミッドを遠方に臨む刑務所の屋上で、「死んだら宇宙と天国どっちに行きたい?」という有吉の問いかけに、自分は「宇宙」と答えながらも、「あまえはあっち(天国)に行けよ」と香月がピラミッドを指さすエピソードは切なく美しい。三池監督のロマンティックな一面も垣間見ることができる、日本映画としては珍しいSFの香り漂うファッンタジックなアート作品です。
歌舞伎界のプリンス・市川海老蔵の面目躍如! 『一命』
一命
大名家の相次ぐお取り潰しで喰うに困った浪人が、裕福な大名屋敷に押しかけ「切腹したいので軒先をお借りしたい」と申し出て金銭をせびる“狂言切腹”。ある日、名門・井伊家にやってきた浪人・津雲半四郎(市川海老蔵)が切腹を願い出たことで物語が始まる3Dヒューマンドラマ。井伊家の家老・斎藤勧解由(役所広司)は、数日前に狂言切腹に訪れた浪人が竹を刀にした“竹光”で本当に切腹させられた悲惨な話を半四郎に聞かせ、追い払おうとするのですが。

「武士に二言はない」と武家の崇高な志を主張する斎藤と、「人の道とは?」と道徳について説く半四郎の会談は、それぞれの信念が激突するまさに胆力の攻防戦。回想の中に登場する瑛太演じる千々岩求女の切腹シーンの痛々しさに息を飲み、歌舞伎界のプリンス・市川海老蔵扮する半四郎の流麗な所作に見惚れ、3D撮影を意識した縦横無尽な大立ち回りに圧倒されるハズ。作家・滝口康彦の時代小説「異問浪人記」を映画化した本作で、三池監督は時代劇初となる3D撮影に挑戦しています。
描いたのは理不尽で不条理な人生そのもの 『神さまの言うとおり』
神さまの言うとおり
突然、問答無用のデスゲームに巻き込まれた高校生たちが、生き残りをかけて課題をクリアしていく不条理サバイバルアクション。原作・金城宗幸、作画・藤村緋二による人気漫画を実写化した衝撃の問題作です。

「ダルマさんが転んだ」で教室を血の海に染めるダルマ(声:トミーズ雅)、「かごめかごめ」で人をなぶり殺すこけし(声:ダチョウ倶楽部)、ネズミコスプレの生徒を食らう招き猫(声:前田敦子)など、幼い頃からなじんできた遊びや工芸品をスプラッタな死の遊戯に転換させたコミカルでシュールな仕掛けは好き嫌いが分かれるところ。福士蒼汰演じる主人公の高畑瞬が、同級生の秋元いちか(山崎紘菜)や問題児・天谷武(神木隆之介)らと協力しながらも、裏切り者の存在を知り疑心暗鬼になっていく心理サスペンスもヒリヒリさせられます。

三池監督は「この映画は誰しもが経験する理不尽で不条理な人生そのものを描いている」とインタビューで答えていますが、大がかりでユニークな舞台装置をとっぱらって作品を観てみれば、なるほど先の見えないじれったさや不平等感、疑心暗鬼、裏切りなど、人生で体験する負の感情がゾロゾロと…。まさかダルマや招き猫がメタファーだったとは!

「三池組の撮影はキツい」と言われていますが、『無限の住人』でキムタクは右膝じん帯を損傷、三池監督も骨折するなど今回もかなり過酷な現場だったよう。そんな中でも監督はローリングストーンズのステッカーがついたロックな松葉杖を愛用して制作を続行。ギリギリの状況をポジティブで彩る監督の“前のめりの姿勢”、素敵です!

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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