ホーム > 時に疎ましく、時に面倒だけど…愛してる。“母と息子”の物語5選

時に疎ましく、時に面倒だけど…愛してる。“母と息子”の物語5選

2017.05.31(Wed) | 小林未亜

家族の中でもとりわけ、母と息子の関係は、不器用でやっかいでもどかしい……そんなイメージがあるのは、これまであまた描かれてきた物語の影響でしょうか。
そんな作品群に新たな仲間入りを果たす6/3(土)公開の「20センチュリー・ウーマン」を筆頭に、母と息子の関係を中心に描かれる5つの映画を紹介します。

父親に続き、母親との関係をテーマにした『20センチュリー・ウーマン』
20センチュリー・ウーマン
75歳でゲイをカミングアウトした父親と自分自身の関係を描いた「人生はビギナーズ」から6年。マイク・ミルズ監督が新たに描いたのは、1979年、故郷サンタバーバラを舞台に、自身の母親をテーマにした“母と息子”のひと夏の物語。

離婚によって、母ひとり子ひとりの生活を続けてきた、55歳のワーキングマザー兼シングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)と15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)。思春期&反抗期のためか、息子のことがさっぱりわからないドロシアは、息子が“気絶ごっこ”で意識を失う事件を起こしたことで、ますます不安を深めていく。そして息子を導き支えるには私一人では無理、と考え至り、家で間借りする24歳の写真家・アビー(グレタ・ガーウィグ)とジェイミーの幼なじみ・ジュリー(エル・ファニング)にその役目を託すことに…。

愛し合いながらも、お互いがお互いを理解できない“母と息子”のラブストーリー。と同時に、20世紀に生まれ、人生を力強く突き進む女性たちの姿が描かれ、今を生きる私たちもどこか勇気づけられる。そして当時の音楽カルチャーが彩る1979年という時代。まったく知らない世代が見ても、自分の中にしまってあった遠い記憶がよみがえる気がするから何とも不思議。

◆『20センチュリー・ウーマン
配給:ロングライド
6月3日(土)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開
© 2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
監督自らボクとママを一人二役!『不機嫌なママにメルシィ!』
不機嫌なママにメルシィ
続いても、監督自身の実体験から生まれた作品。フランスの人気俳優、ギヨーム・ガリエンヌの自伝的舞台を映画化し、ギヨーム自身が監督・脚本に加え、主人公の“ボク”、さらには女装して“ママ”まで演じている。

開演5分前の知らせを受け、ステージへ向かい、ギヨームは観客の前で自身の物語を語り始める。美しくエレガントなママの真似をして、女の子のように育ち、家族にゲイだと思われていたボク。スペインへの語学留学、男子校でのいじめ、転校先のイギリスでは男子生徒に失恋…何もかもうまくいかず、自分のことも嫌いになりそうなボクは、必死に本当の自分を見つけようともがいていく。

描かれているのは、黒か白かを決めることではなく、あくまでもギヨームという俳優が誕生した軌跡。波乱に満ちた日々が笑いをもって語られるこのドラマには、母から与えられた愛と、母への愛であふれている。それにしても、自身の若かりし頃を演じた“ボク”以上に、“ママ”役が妙に自然でしっくりきているのが俳優ギヨームのスゴイところ。
部屋から世界へ飛び出した2人を待つのは…『ルーム』
ルーム
ブリー・ラーソンの第88回アカデミー賞主演女優賞受賞という話題性や、設定の衝撃度もあり、母と息子の映画で思いつく人が多そうなのがこの「ルーム」。確かに“母と息子”の結びつきは純度100%な濃厚さだ。

母は17歳の時から7年間も閉ざされた“部屋”に監禁され、息子ジャックは生まれ育ったこの部屋しか知らない。そしてジャックが5歳になり、母は奪われた人生を取り戻し、息子に本当の世界を見せるため、部屋からの脱出を決意する。

部屋を飛び出してハッピーエンド、ではなく、むしろここからが本当の始まり。息子ははじめましての世界へと冒険を始めるが、母は待ったなしの現実に追い詰められ、母と息子の絆が試されていく。それにしても、こんな劣悪な環境で、息子が身も心も健やかに育ったのは、母の愛があってこそ。
不器用な2人が迎える最後の時間『母の身終い』
母の身終い
ここからは、老いた母と息子の関係を見つめた作品を。
18か月の服役を終えて出所した息子アランは、年老いた母の元で居候を始めるが、母は不治の病に侵され、尊厳死の選択をしていることを知る。映画はそんな2人の残された日々を、静かに淡々と紡いでいく。

もともと折り合いの悪かった2人は、お互いへの思いを通わせることもなく、口を開けばぶつかり合う。けれども、息子は気の優しいお隣さんに「(母が)面会に2回しか来なかった」とすねてみたり、母は愛犬を利用して息子を呼び戻したり、2人のこじらせすぎな不器用さが微笑ましくて萌え。しかし最期の時が迫るにつれ、見ている方はもどかしくて仕方ない。相手への思いは時間に余裕をもって伝えようと痛感すると共に、最期の選択、人生とは、なんてことをしみじみと考えてしまう。
誰もが不安な認知症問題を笑いで包んだ『ペコロスの母に会いに行く』
ペコロスの母に会いに行く
最後は、長崎在住の漫画家・岡野雄一のエッセイ漫画を実写化した「ペコロスの母に会いに行く」。小さなタマネギ=ペコロスのようなハゲちゃびんの息子と、認知症の母との何気ない日常を、2人が思いを馳せる過去の記憶と共に、ユーモアで包んで描くヒューマンドラマだ。

自分の親が、あるいは自分がなったらどうしよう……誰しもが不安をもって語る認知症の問題。でも「ボケるとも、悪かことばかりじゃなかかもなー」と笑うペコロスを見ると、何だか少し気持ちが軽くなる。

母親との関係は家庭によってさまざまで、一概に「母を大切に」なんて言えないけれど、ただ照れちゃうとか、素直になれないとか、そんな理由で突き放してしまっているなら、ちょっと勇気を出して思いを伝える方がいい。映画がそんな後押しになったら最高だなぁ。

Writer | 小林未亜

編集プロダクションに勤務し、情報誌やWEBの編集・取材・原稿執筆をしています。かつて勤めていた映画館が2つともクローズしてしまったのが悲しく、休日はなるべく映画館へ。この仕事をしていても「衝撃の結末!」などのあおりに弱い

Banner

関連するポスト

Copyright (C) GAGA Corporation. All Rights Reserved.
GAGA