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底力がハンパない!今観るべき韓国映画の注目作品はコレ!vol.1

2017.06.14(Wed) | 上原礼子

2017年は、『オールド・ボーイ』パク・チャヌク監督の『お嬢さん』、『チェイサー』ナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』など、韓国映画の魅力を広く知らしめた鬼才監督たちの作品が続々と日本上陸しています。韓国映画といえば、猟奇サスペンスや骨太アクション、あるいは韓流ドラマのような純愛ものなどの印象が強いかもしれませんが、そればかりではありません。今回は、新進気鋭の監督たちが手がける一風変わったファンタジックなラブストーリーや泣かせるコメディ、新機軸の時代劇などなど、日本でもよく知られる有名俳優たちがこぞって出演する注目作品を2回に分けて紹介します。

上野樹里も出演!人は見た目か、中身か?『ビューティー・インサイド』
ビューティー・インサイド
CM界で活躍していたペク監督が長編デビュー作として手がけた、史上初、1役を123人が演じるかつてないファンタジーロマンス。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(広告賞)三冠グランプリを受賞した「The Beauty Inside」('13)を原案に映画化され、韓国で公開された際には『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作や数々の話題作を抑えて大ヒットに。

朝、目覚めるたびに、心はそのままながら姿だけが変わってしまう主人公ウジン。太ったり、やせたり、外見はもちろんのこと、時には性別や人種まで変わってしまう、という不思議な“体質”の持ち主で、その秘密を知るのは、彼の母親とたった1人の親友だけ。極力人と接することがないよう、家具デザイナーとして働いています。そんなウジンが、あるとき、家具店で働く女性イスに恋をすることに…。

主人公ウジンがその奇妙な“体質”にどうやって折り合いをつけ、日々暮らしているのかが、衣装や小物などの演出も見事に、細やかに丁寧に描かれているため、奇想天外な設定もスッと受け入れられるのが不思議。また、ウジン役を演じる俳優たちが、それぞれなんて魅力的なことか! 韓国を代表する俳優たちばかりですが、特に注目なのは韓国映画に初出演を果たした上野樹里はもちろん、『サニー 永遠の仲間たち』『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』の恐るべき(褒めてます)実力派チョン・ウヒ、『グエムル 漢江の怪物』のコ・アソン、『尚衣院』のパク・シネなどの女優陣。そして、ウジンが恋をする相手役を演じるのは、ドラマ「トンイ」やイ・ビョンホン主演作『王になった男』、日本映画『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』などで知られるハン・ヒョジュ。毎日、外見が別人となる恋人を愛そうと苦悩するさまを、美しく好演します。ちなみに、ハリウッドリメイクも決定しており、ハン・ヒョジュが演じたヒロインを『世界一キライなあなたに』のエミリア・クラークが務めるというので、そちらも楽しみです。
ペ・ドゥナ×『アジョシ』の名子役『私の少女』
私の少女
是枝裕和監督の『空気人形』や山口敦弘監督の『リンダリンダリンダ』などで日本映画にも出演してきたペ・ドゥナが、久々に臨んだ韓国映画の主演作。現在は、ハ・ジョンウと夫婦役を演じた『トンネル 闇に鎖された男』が日本公開中ですが、『マトリックス』のウォシャウスキー姉妹に気に入られ、『クラウド アトラス』『ジュピター』、ドラマ「sense8」などアメリカでの活躍も知られています。本作で初監督を務めたのは、『オアシス』『シークレット・サンシャイン』の名匠イ・チャンドンに見いだされた女性監督のチョン・ジュリ。

物語は、あることがきっかけで、ソウルから小さな港町に赴任してきた女性警察官ヨンナムが、継父・祖母と暮らしながら日常的に虐待を受けている少女ドヒと出会ったことから始まります。過疎の漁村の閉鎖的なコミニュティで、育児放棄、セクシャルマイノリティへの偏見、外国人の不法就労など、さまざまな現代の社会問題が色濃く映し出されていきますが、核となるのは、愛する人と引き離され心が壊れた女性と、愛されることを知らずに育った心を閉ざした少女のわずかながらの再生への道すじです。

ドヒを演じたのは、『アジョシ』『冬の小鳥』の名子役から成長を見せるキム・セロン。彼女も恐るべき名演を見せています。継父役のソン・セビョクも、憎ったらしくて本当にうまい。強烈な印象を残すバイプレイヤーがここにも登場します。
カンヌ女優賞のチョン・ドヨン熱演『マルティニークからの祈り』
マルティニークからの祈り
東野圭吾原作『容疑者Xの献身』の韓国版『容疑者X 天才数学者のアリバイ』を手がけた、元女優のパン・ウンジンが監督を務め、異国の地に投獄された、ある主婦の壮絶な実話を映画化。イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞し、世界的にも名が知られているチョン・ドヨンが熱演を見せます。

2004年、主婦のジョンヨンは多額の借金により困窮した家族を救うために、南米からフランスまで“金の原石”を運ぶだけ、という仕事を引き受けますが、フランスの空港で逮捕されてしまいます。彼女が運んでいたのは、実は大量のコカイン。何も知らなかったジョンヨンは言葉も通じない中、弁解の余地も与えられないまま、祖国から1万2400kmも離れたカリブ海にあるフランス領の島マルティニークの刑務所へ収監されることに…。

チョン・ドヨンが自身も母親になり、女優活動を休業していた後の本格復帰作としてに出演。汚れメイクすら不要かのように、過酷な日々に耐え、やつれきったジョンヨンを演じており、その姿からは一瞬たりとも目を離すことができません。妻の帰りを娘とともに待つ夫役には、『高地戦』『尚衣院』のコ・ス。この主婦の収監が756日と長期化する一因にもなった怠慢な駐仏大使館員として、『ビューティー・インサイド』『ベテラン』『インサイダーズ/内部者たち』など、数多くの作品に出演するペ・ソンウも効いています。
日本でもリメイク!若手実力派シム・ウンギョン主演『怪しい彼女』
怪しい彼女
多部未華子主演で日本でもリメイクされたほか、中国、ベトナムなどでも同じプロットで制作されている『怪しい彼女』。『トガニ 幼き瞳の告発』で聴覚障がい者施設で日常化していた児童虐待の実態を描き、社会派として大きな注目を集めたファン・ドンヒョク監督が一転、ファンタジー・コメディを手がけました。

女手一つで息子(日本版では娘)を育ててきた毒舌でおせっかい焼きの70歳のおばあちゃんが、ある日突然、見た目だけが20歳に若返り! 憧れのオードリー・ヘプバーンのつもりで“オ・ドゥリ”と名乗り、夢だった歌手を目指すことに。しかも、彼女の歌声を聴いてスカウトしたイケメン音楽プロデューサーと、バンド仲間で自分の実の孫、双方から思いを寄せられてしまうのです…。

根っからのコメディエンヌかと思いきや、泣かせる芝居もできる主演のシム・ウンギョン。『サニー 永遠の仲間たち』『王になった男』で一躍注目を集め、2016年はクライムスリラー『少女は悪魔を待ちわびて』で、父を殺した殺人犯への復讐の機会を狙う少女という新境地にも挑みました。今年から満島ひかりや東出昌大らが所属する日本の事務所と契約を結んだそうで、日本でも何らかの活動が見られるかもしれません。
“国民の妹”パク・シネが成長見せる!『尚衣院 サンイウォン』
尚衣院
朝鮮王朝時代を舞台にした、いわゆる韓国の時代劇は1ジャンルとして定着してきましたが、アメリカに留学経験もある新鋭イ・ウォンソク監督が手がけたのは、朝鮮王室の“衣装部”にあたる尚衣院(サンイウォン)を初めて描く異色作。徹底した考証のもと、現代の婚礼衣装を彷彿とさせる純白の衣装をはじめ100 着以上が用意され、日本円にして約1億円が投じられたとか。絢爛豪華な王朝の衣装とともに、衣の下に渦巻く愛憎にも目を奪われます。

王(ユ・ヨンソク)や王妃(パク・シネ)の絢爛豪華な衣を一手に引き受けていた御針匠のドルソク(ハン・ソッキュ)は、お針子の身から腕1本で成り上がった職人。3代の王に仕えてきた功績から異例の両班(当時の特権階級、高級官僚)への昇進が約束されていました。しかし、彼の前に、巷で話題を集めていた天才仕立師ゴンジン(コ・ス)が現れます。ゴンジンの生み出す衣装は革新的で、時に実用的。その大胆な美的センスはたちまち王宮でも話題となり、王妃からも一目置かれます。ドルソクは、自身に刺激を与えてくれる後進として彼を気にかけるものの、やがてその才能と人気ぶりに脅威を感じはじめ…。

本作は、時代劇の定番要素といえる権力争いや、若き王族たちの歪んだパーソナリティー、叶わぬ悲愛などがあるものの、序盤はコメディ要素あり、途中、ウェス・アンダーソンのような世界観も登場し、作品自体も革新的。その中心には、努力の末に現在の地位を手に入れた職人師匠と、天才肌の弟子との愛憎というストーリーがあり、ドロドロの宮廷絵巻かと油断していると、ふいに泣かされます。『シュリ』のハン・ソッキュの怪演、『マルティニークからの祈り』のコ・スの情熱あふれる演技、『オールド・ボーイ』でユ・ジテの少年時代を演じ、『ビューティー・インサイド』にも出演しているユ・ヨンソクの壊れた王の演技、そして“国民の妹”といわれる王妃役パク・シネのイノセントな演技の競演が見もの。加えて、今秋一番の話題作『新感染 ファイナル・エクスプレス』のマ・ドンソクら脇役陣がコミカルなパートを担っています。

題材も実にバラエティに富み、独創性があり、今をときめく女優たちや俳優たちが集った注目監督の作品ばかり。『ビューティー・インサイド』を例にとっても、改めて思うのは、その俳優陣の層の厚さと芸達者ぶり。ウジン役の俳優たちを知るだけでも、韓国映画の楽しみ方がさらに広がるはずでしょう。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当したこともあり、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録と、映画を通じて悲嘆を癒やす試み【映画でグリーフワーク】をFacebookにて随時更新中。

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