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その先にあるのは絶望?それとも希望? 近未来映画5選

2017.06.29(Thu) | 足立美由紀

映画ではこれまで幾度となくモチーフとなっている「近未来世界」。描かれるのは、待ち遠しくなるほどワクワクする輝きに満ちた世界だったり、今まさに人類が抱える“不都合な真実”に警鐘を鳴らす恐ろしい未来だったりします。私たちはそんな異次元の世界をフィクションとして楽しむわけですが、妙に心の片隅に残るのは、映画が映し出す世界が現実化する可能性を否定できないからかもしれません…。

異能の少女は人類の希望なのか…?『ディストピア パンドラの少女』
ディストピア パンドラの少女_ポスター
「カズオ・イシグロ meets ウォーキング・デッド!」と絶賛された、M.R.ケアリーの人気小説「パンドラの少女」を原作とするディズトピア(暗黒郷)・ムービー。目元涼やかなクールビューティながら、まだあどけない可愛らしい声で“パンドラの少女”を見事に演じ切った期待の新星セニア・ナチュアは、世界三大ファンタジー映画祭の1つであるシッチェス・カタロニア国際映画祭で女優賞を受賞しています。

生物に寄生するタイワンアリタケの菌が突然変異してパンデミックを起こし、人類が「ハングリーズ(飢えた奴ら=ゾンビ)」化した世界。イングランドの田舎町にある軍施設では、ウイルスに侵されながらも、人間的思考回路と容姿を保つハイブリットな子供たち「セカンド・チルドレン」の研究が進められています。メラニーはその子供たちの中でも、抜群の思考能力と感情を持ち合わせる奇跡の少女。研究者のワクチン精製が遅々として進まない中、ついに施設にハングリーズが押し寄せて…。

興味深いのはこの物語の視座が少女にある点。そのため最前線で警備にあたる軍人は怖くていじわるな人たち、研究者は自分たちに酷いことをする油断できない人、しかし様々なことを教えて助けてくれる先生は(たとえ人類に危機を招くかもしれない人間だとしても)心優しい人物として描かれます。

セカンド・チルドレンの中でも突出した異能を示すメラニーは、自分が無作為に告げた数字が大変な悲劇につながることに気づくと、次には自分を指定するような心優しく聡明な少女。その一方で人の喉笛を切り裂き、野生動物を喰らって飢えをしのぐモンスター的一面も見せるというギャップがたまりません。

本作は“ゾンビもの”というジャンル・ムービーでのアプローチながら、スプラッター描写はわりと控え目。人類の未来に視点を置き、「生き残るべきは誰か?」というハーバード・スペンサー提唱の“適者生存”に触れるテーマが深い味わいを醸し出しています。

◆『ディストピア パンドラの少女
7月1日(土) 新宿バルト9ほか全国公開
© Gift Girl Limited / The British Film Institute 2016
配給:クロックワークス
『her/世界でひとつの彼女』
her 世界でひとつの彼女
味気ない毎日を送る中年男性が、人工知能に恋をするファンタジックSF。監督は『マルコヴィッチの穴』(1999年)、『かいじゅうたちのいるところ』(2009年)の鬼才スパイク・ジョーンズ。本作でも示唆に富んだファンタジーで本領を発揮しています。

近未来ロサンゼルス。離婚して哀しみに暮れる手紙の代筆ライター・セオドア(ホアキン・フェニックス)は、人工知能OS「サマンサ」の美しい声に魅了されます。パソコン、携帯などで常にサマンサと会話をして幸せを噛みしめるセオドア。一方で知識を貪欲に吸収するサマンサはネットワークを通じて世界のビッグデータと独自のコンタクトをし始めます。

ささいな出来事でも興味深く耳を傾け、楽しそうに言葉を返すサマンサの魅力に夢中になるセオドアは、一見するとアブないおじさん(笑)。けれど他愛のない会話や恋愛のウキウキ感が少しずつ悲しみを癒してくれる感覚は誰しも理解できるハズ。

サマンサの声を担当したのは「世界で最もセクシーな女性100人」の常連女優スカーレット・ヨハンソン。バーチャル・セックスもこなす進化系OSを声だけで熱演し、その演技力が高く評価されました。
『トランセンデンス』
トランセンデンス
ジョニー・デップがスーパーコンピューターに脳をインストールされた科学者を演じたSFラブロマン。次第に暴走していく人工知能が現実の未来を予見しているようで、サスペンス要素満載の展開にもハラハラさせられます。

天才的頭脳を持つ科学者ウィル(デップ)は、人工知能が人類を凌駕する「トランセンデンス」の研究をするも、志半ばでテロ集団の襲撃により命を落とします。ウィルの妻エヴリン(レベッカ・ホール)は、開発を進めていた世界初の人工知能にウィルの意識をインストールして夫を救おうとするのですが。

ウィルのエゴまで移植された人工知能は“超頭脳”として世界を統制下に治める準備をひるむことなく進めていきますが、同様に妻へも異常なほどの愛情で執着します。SF大作ではあるものの、前述の『her~』と同じく「人は体がないと愛し合えないのか?」という根源的な疑問を投げかける人間ドラマとしても!
『さようなら』
さようなら
劇作家・平田オリザとロボット研究の第一人者、大阪大学・石黒浩教授がコラボした演劇プロジェクトを映画化。本物のアンドロイド“ジェミノイドF”が役者として好演する衝撃の意欲作です。

原発事故で国の大半が放射能汚染された日本。人々は難民として国外避難を進めています。しかし、かつて難民として日本に渡ってきた外国人のターニャは、避難優先順位の最下層組。親しい人々が次第にいなくなる中、重い病気を患うターニャの傍らには、いつもアンドロイドのレオナが付き添い心慰めるのでした。

ターニャを演じるのは舞台でも同役を演じたブライアリー・ロング。脇を固めるターニャの恋人・敏志(さとし)役に新井浩文、旅の途中で出会う青年役に村上虹郎が扮するなど、サプライズ・ゲスト的に登場する芸巧者たちに思わずニンマリ。レオナがターニャを癒すために朗読する若山牧水やアルチュール・ランボオ、谷川俊太郎らの詩が、物語に切ない情感を与えています。
『ミスター・ノーバディ』
ミスター・ノーバディー
最近、カメレオン俳優として活躍目覚ましいジャレッド・レトが“ラスト・モータル(人類最後の死ぬ人間)”を演じたSFパラレルワールド。本作では青年期から118歳の老人まで幅広い年代を演じています。

科学の進化によって人類が死を克服した2092年。人々は死期が迫る118歳のニモ(レト)の最期の様子を娯楽としてモニタリングしています。自らを34歳のミスター・ノーバディ(=誰でもない)だと称するニモに、医者は記憶を呼び覚ます催眠術をかけるのですが。

病室に忍び込んだ取材記者の「人間が“不死”となる前はどんな世界?」という質問を皮切りに、少しずつ過去の記憶を蘇らせるニモ。しかし彼が語るのは、生きていく上で直面する運命の選択において、さまざまな可能性を網羅した12通りの記憶が混在するパラレルな人生なのでした。ニモは本当に全てを体験したのか、それとも混濁した意識が作り出した妄想なのか…。総製作費50億円をかけて『トト・ザ・ヒーロー』の名匠ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が紡ぐ本作は、シンプルで奇妙な近未来の造形も相まって、美しくも不思議な気分に誘うファンタジック大作です。

ハリソン・フォードが人造人間「レプリカント」を追撃するブレードランナー・リック役を演じた近未来SFの金字塔『ブレードランナー』(1982年)。舞台を2019年から30年後の2049年に移した続編『ブレードランナー 2049』が10月27日に公開されます。独創的なビジュアルセンスを持つドゥニ・ビルヌーブ監督の持ち味を活かした、ディープでダークな予告編を観て本編の完成度に期待大! 果たして描かれるのはどのような未来なのでしょうか…。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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