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夏休み!大人になった今こそ観たいアニメ映画5選

2017.08.02(Wed) | 上原礼子

昨年公開された『君の名は。』は興行収入250億円を突破、日本映画歴代2位の記録的ヒットとなり、社会現象となりました。また、女優・のんが声を務めた『この世界の片隅に』も口コミから評判が広がり、各賞で絶賛を受けました。世界的にも日本のアニメへの注目度が高まっている昨今、ふだんアニメは観ないという方にもぜひ観てほしい、大人にこそオススメのアニメ映画をご紹介します。

“のん”のキャラクターと声がぴったり!『この世界の片隅に』
この世界の片隅に
あの『魔女の宅急便』を監督していたかもしれないという(結果的に演出補)片渕須直監督が、こうの史代の同名漫画を6年の歳月をかけてアニメーション映画化。太平洋戦争真っ只中の広島を舞台に、ひとりの女性・すずの姿と、彼女が生きたつつましくも温かい戦時中の暮らしを、丁寧な作画と時代考証のもとで描きます。

子どものころから空想好きで絵を描くことが大好きな、のんびり屋の少女すずの声を、女優・のんが務め、ハマリ役と話題を呼んだ本作。そのすずさん、広島から軍港の町・呉にお嫁にやってきますが、暮らしの中にどんどんと戦争が入り込んできます。しかし、昭和20(1945)年8月6日に、広島に何が起きるのか知っている私たちとは裏腹に、すずさんは健気に、まっすぐに毎日を生きていきます。

この映画は、戦時下の日常や市井の人たちの心情を見事にとらえたアニメではありますが、実は“居場所”についての物語でもあります。劇中、すずさんは利き手の右手をなくし、一緒にいた小さな命をも失います。家事ができなくなり、1人での着替えもままならない中、右手も失ったことで絵を描くことも奪われます。初恋の水兵さん、そして故郷をも失い、居場所を見失ってしまったすずさん。最後に彼女が見つけるものには、涙が止まりません。

公開直後からSNSを中心に口コミで評判が広まり、広島国際映画祭・ヒロシマ平和映画賞受賞、キネマ旬報の日本映画ベスト・テン、日本映画監督賞などに選出、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品を受賞するなど、公開の広がりとともに絶賛を受けました。

現在では“原爆ドーム”という名の、広島県産業奨励館の当時の姿などもあり、すでに存在しないものを蘇らせることができる、アニメと物語の力を思い出させてくれることはもちろん、コトリンゴによる優しい歌声の主題歌や音楽、片渕監督が自ら監修した音響にも注目です。さらにエンドロールでは、本編ではカットされてしまったすずさんと遊女・リンとの関わりを描いた、スピンオフのようなショートアニメも必見です、ぜひ。
主題歌を超えたRADの音楽と言葉にも注目『君の名は。』
君の名は。
昨年8月、新海誠監督の『君の名は。』がこれほどまでの大ヒットとなるとは、予想だにしていませんでした。『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』と築かれてきた、美しく緻密な風景描写と詩的なスケール感を持つ“新海ワールド”の最新作にして、集大成。しかも、この映画も人気バンド「RADWIMPS」が「前前前世」をはじめとする主題歌4曲を含めたすべての劇中音楽を手がけており、彼らが生み出す音楽がその魅力をさらに後押しします。

山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉。町長である父の選挙運動に、家業の神社の古き風習。周囲の目が気になる小さな町から、都会への憧れを強く抱いています。そんな彼女はある日、自分が男の子になる夢を見ます。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。戸惑いながらも、念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。一方、東京で暮らす男子高校生・瀧(神木隆之介)も奇妙な夢を見るのです。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高生になっていて…。

大林宣彦監督の『転校生』を思わせる少年と少女の入れ替わりの物語に、『時をかける少女』のような時空を超えたラブストーリー。さらに田舎の風景に、小さなコミュニティでの親密感と閉塞感、加えて、地震や原発事故を想起させる彗星の衝突。“あのころ”への郷愁と、日本人がこれまで何度も経験してきた“日常が一瞬にして消えてしまう”もののメタファーに、鼻の奥がツンとします。
アイルランド神話がいざなう普遍のテーマ『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』
ソング・オブ・ザ・シー 海のうた [DVD]
アイルランド発のアニメ映画ですが、音楽が作品の世界観を後押しするといえば、こちらもオススメ。本国では“ポスト・スタジオジブリ”とも称される「カートゥーン・サルーン」が手がけ、第87回アカデミー賞では『かぐや姫の物語』(高畑勲監督)とともに長編アニメ映画賞にノミネートされました。

海ではアザラシ、陸上では人間の女性の姿をしている妖精・セルキー。セルキーである母ブロナーと人間の父コナーの間に生まれた、幼い兄妹ベンとシアーシャ。しかし、言葉が話せないシアーシャが生まれたその日、母が突然姿を消したことから、兄ベンは事あるごとにシアーシャにきつく当たっています。やがて兄妹は、母が残した“海のうた”を頼りに、大冒険に向かうのですが…。

絵本がそのまま動き出したかのような、可愛らしく素朴で、神秘的なタッチの画風ですが、アイルランドに伝わる神話を基にしたストーリーはなかなかディープ。人が避けられない別れと悲しみ、喪失感との向き合い方のみならず、兄妹の再生をも描いていきます。数々の映画音楽を手掛けてきたブリュノ・クレとアイルランドの音楽グループ「KiLA」が神話の世界に誘い、日本語吹替では母ブロナー役の声を務めた「EGO-WRAPPIN'」の中納良恵が日本版テーマソングを歌い上げます。また、ベンの声は本上まなみ、コナーはリリー・フランキーが務めています。

なお、本作のトム・ムーア監督が、長編デビュー作にして第82回アカデミー賞にノミネートされたブレンダンとケルズの秘密(’09)が現在、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開中。合わせて、その世界観を堪能してみてはいかがでしょう?
現代人がなくした心の原風景がある『河童のクゥと夏休み』
河童のクゥと夏休み
「映画クレヨンしんちゃん」シリーズの中でも評価の高い『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』や、『君の名は。』とともに世界でも絶賛された『百日紅~Miss HOKUSAI~』の原恵一監督が、木暮正夫による児童文学を自ら企画、脚本を担当して映画化した渾身作。

夏休み前のある日、小学生の上原康一が帰り道で拾った大きな石を水で洗ってみると、中から現れたのは、なんと河童の子ども! しかも、おしゃべりもします。康一は「クゥ」と名づけ、家族だけの秘密としてこっそり一緒に暮らすことに。夏休みに入ったある日、康一は河童伝説の残る豊かな自然に囲まれた岩手・遠野へ、クゥを連れて初めてのひとり旅に出ることに。やがて、クゥの存在が世間に知られるようになり…。

現代の大都会に現れた河童のクゥと少年・康一が、一緒にお風呂に入り、同じベッドで眠る様子や、上原家の妹・瞳とのやりとり(ヤキモチです)、何よりへっこへっこと歩くクゥがとってもキュート。また、康一とクゥが訪れる遠野のシーンでは、美しい日本の原風景が広がり、夏休みに小旅行した気分に!? その一方で、クゥがきっかけにしたいじめやマスコミ報道の過熱など、問題提起と風刺もたっぷり。10年前の映画ですが、今だったらSNSで大パニックが起きていることでしょう。たくさんの笑いとともに、ラストにはタオルが必須となるほどの涙も用意されています。
今こそ響く『あらしのよるに』のメッセージ
あらしのよるに
きむらゆういち作のベストセラー絵本を、TVアニメ「タッチ」や『銀河鉄道の夜』で知られるベテラン、杉井ギサブロー監督がアニメ映画化。あの『ズートピア』以前にあった、種族を超えた友情の物語です。

ある嵐の夜、仲間とはぐれたヤギのメイが、壊れた山小屋で雨風をしのいでいると、そこへ同じように嵐から逃げてきたのが、オオカミのカブ。真っ暗で何も見えない小屋の中、身の上話をするうちにすっかり仲良くなった2匹は、翌日「あらしのよるに」を合い言葉に再会を約束します。お互いがヤギとオオカミということに気付かぬままに…。

ヤギとオオカミ、草食動物と肉食動物の間に友情は成立するのでしょうか? オオカミのガブは何度も“誘惑”に負けそうになり、また、そんな2匹をそれぞれの種族が許しておくはずありません。しかし、2匹には、“あらしのよる”にお互いの姿は見えないまま「同じですね」と話したように、生い立ちや境遇に似通っている面があります。オオカミのガブはちょっと気持ちが優しく臆病なために、仲間たちから何かとからかわれてきました。一方、メイは“秘密のともだち”の正体がオオカミであっても、逃げ出したりすることなく一緒にいます。ほかのヤギたちの反応を見ても、彼はユニークな感覚の持ち主といえるかと思います。群れの中では、いわば浮いていた存在といえる2匹。今、改めて観ると、たくさんの示唆に富んでいます。

アニメだからとあなどるなかれ!? 泣いたり笑ったり、考えさせられたり、価値観が揺らぐこともしばしば。大人になった今だからこそ、人生の真理をさりげなく伝えてくれるアニメ映画を堪能してみてはいかがでしょう。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録と、映画を通じて悲嘆を癒やす試み【映画でグリーフワーク】をFacebookにて随時更新中。

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