ホーム > 美しさと人情と戦慄!多彩な顔を持つ北欧映画

美しさと人情と戦慄!多彩な顔を持つ北欧映画

2017.08.25(Fri) | 斎藤香

インテリアの人気とともに北欧映画の認知度も上がってくるようになりました。映画の中にも素敵なインテリアが出てきますからね。でも北欧映画の魅力はオシャレな美術だけではないのです。笑ったり、感動したり、そして、ゾクっとさせるミステリー作品も。では、北欧映画の様々な顔をご紹介しましょう。

頑固なおじさんとご近所さんたちのほっこり感動作『幸せなひとりぼっち』
幸せなひとりぼっち
「生きていても楽しくない!」と自殺しようとした頑固おじさんが、近所に越してきた人々との交流で変わっていく姿を、コミカルに描いた心が温かくなる作品です。

オーヴェ(ロルフ・ラッスゴード)は、愛妻に先立たれ、会社もクビ。誰にも必要とされない孤独を抱え、自殺を決意しました。そのとき、隣に引っ越してきた移民家族が自宅前で大騒ぎをして自殺は中止することに。これをきっかけにオーヴェと移民家族の交流が始まるのです。

人間、ひとりでは生きていけない。生活を支えてくれるのは、誰かとの交流です。主人公は孤独から、自殺を選ぼうとしますが、何かと頼ってくる隣人によって「やらなくてはいけないこと」が生まれます。それが彼の孤独な生活に光を点すことになるのです。オーヴェの若い頃、妻との出会いから結婚までの回想も綴られ、頑固なおじさんも昔はかわいくてピュアな恋をしており、実は愛情深い人だったことがわかります。それだけに妻を失った悲しみは、計り知れないとも……。ユーモアと感動のさじ加減が絶妙な人間ドラマです。
老舗家具屋の店主の執念をコミカルに描く『ハロルドが笑う その日まで』
ハロルドが笑うその日まで
老舗家具屋の店主が「大型家具店IKEAに店を潰された!」と、なんと創業者を誘拐してしまうという、誘拐の旅をコミカルに見せるロードムービー。

ノルウェーのオサネという街にある家具店は、隣にIKEAが出来た途端、お客を取られて閉店へと追い込まれます。店主のハロルド(ビヨーン・スンクェスト)は、同じ時期に妻も失い、自分の不幸はIKEAのせいだと、創業者誘拐を計画。目的を達成するために邁進していたハロルドでしたが、息子、家出少女、そして宿敵のIKEAの創業者との出会いで、彼の心はあっちこっちに揺れ動くのです。

思いつきの誘拐計画の道中は思いがけないことばかり。息子に協力してもらおうと、久々会いに行くと、彼は酒浸りのダメ息子になっておりガッカリしたり、家出少女に出会い、彼女と母親の確執に心を痛めたり……。しかし、みんなそれぞれの事情を抱え、苦しみながらも必死に生きていることを知るのです。不幸なときは自分だけがドン底だと思いがちだけど、実は、みんな怒ったり悲しんだり、あちこち寄り道しながら頑張っている……。それが人生だと教えてくれる本作。寒々とした北欧らしい景色も綺麗だし、インテリアも素敵ですよ。
北欧ミステリーの真骨頂!ベストセラーの映画化『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
ミレニアム ドラゴンタトゥーの女
日本でも大ヒットしたスティーグ・ラーソンの同名小説の映画化。デヴィッド・フィンチャー監督がリメイクしたことも話題になりましたが、本作が映画化第一作目です。

ジャーナリストのミカエル(ミカエル・ブルムクヴィスト)は、大財閥の元会長から、40年前の迷宮入り事件の再調査を依頼されます。しかし、調査は難航。そんなミカエルの言動をひそかにチェックしていたのが天才ハッカーのリスベット(ミカエル・ブルムクヴィスト)。彼女は元会長からミカエルの身辺調査を依頼されていたのです。そのうち真相を解くきっかけとなる情報を得たリスベットは、ミカエルとコンタクトを取るように。

北欧の孤島で起こった行方不明事件、わけありの大家族など、事件の概要はアガサ・クリスティの推理小説のようですが、その40年前の謎を天才ハッカーのリスベットが紐解いていく……。昔懐かしの推理小説の趣といまどき感の融合が面白く、またリスベットのキャラクターも最高! ルックスはパンクで愛想もなしけれど、仕事はできる! そこがカッコイイ。フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』と見比べてみるのもいいですね。
アスペルガー症候群の青年への温かなまなざしが気持ちいい『シンプルシモン』
【Amazon.co.jp限定】シンプル・シモン(ポストカード付) [DVD]
アスペルガー症候群の青年と兄の兄弟愛をユーモラスに描いた心温まる作品。主演のシモン役はスウェーデンの名優ステラン・スカルスガルドの息子ビル・スカルスガルドです。

シモン(ビル・スカルスガルド)は、SF好きのアスペルガー症候群の青年。人の気持ちを考えたり、立場をおもんばかったりすることができず、思い通りにならないと部屋にあるドラム缶ロケットに閉じこもってしまいます。しかし、大好きな兄が自分のせいで失恋したと知ったとき、シモンは兄の恋人探しに出かけるのです。

まず目に飛び込んでくるのは可愛いヴィジュアル。家のインテリアがすべて素敵で、特に壁紙に個性が現れています。マネしたくなること必至。しかし、何より良いのはシモンの描き方。アスペルガー症候群の青年を温かな目線で見つめ、彼の個性を尊重し、シモンならではの優しさや愛し方を見せてくれます。普通とちょっと違うことをネガティブに捉えていないので、見ていてとても清々しく好ましい作品です。
ヴァンパイアと少年の初恋ストーリー『ぼくのエリ 200歳の少女』
ぼくのエリ 200歳の少女 スペシャルプライス版 [DVD]
同じ団地の隣同士で仲良くなった少年少女は心惹かれあいますが、少女はヴァンパイアだったのです……という北欧ヴァンパイア版『小さな恋のメロディ』です。

ストックホルムの集合住宅で出会った12歳のオスカー(カーレ・ヘーデブラント)とエリ(リーナ・レアンデション)。いじめられっ子のオスカーにとってエリは唯一の友達。同じ頃、町で猟奇的な殺人事件が頻繁に起こりますが、それはエリの仕業でした。なぜなら彼女はヴァンパイア、血を求めて残酷な殺人を繰り返していたのです。

オスカーに惹かれたエリは彼を襲わず、オスカーはエリの正体を知っても彼女への気持ちは変わぬまま。そんな二人は、ティーンの仲良し男女のように見えますが、エリが血を求めるときの残酷さが生々しく、やはり彼女はヴァンパイア……と、背筋が凍ります。同級生からオスカーへのいじめが加速した先で彼女の取った行動、彼女の父親の正体など、恐怖の中にも切なさや悲しみが横たわる、情感あふれる北欧スリラーです。

北欧=お洒落なイメージを覆すような怖い映画もありますが、北欧映画界は昔から天才奇才監督を多く輩出しているのです。アキ・カウリスマキ、ラース・フォン・トリアー、ラッセ・ハルストレム……。これからの監督の映画もぜひ見て、北欧映画通になってくださいね。

Writer | 斎藤香

映画ライター 映画誌の編集者を経てフリーに。映画レビュー、監督&俳優へのインタビュー、書籍ライティングなどで活動中。映画のほかには教育関連の取材執筆もいたします。好きな監督はウディ・アレン、トーマス・アルフレッドソン、アルフレッド・ヒッチコックなど多数。

Banner

関連するポスト

Copyright (C) GAGA Corporation. All Rights Reserved.
GAGA