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『三度目の殺人』を見る前に是枝作品の魅力知っとこ。

2017.09.01(Fri) | 仲谷暢之

9月9日(土曜日)から公開される福山雅治主演の映画『三度目の殺人』。
監督は作品を発表するたび話題となる是枝裕和。『三度目の殺人』を見る前に、是枝作品の魅力を知っとこ。

福山雅治主演 『三度目の殺人』
三度目の殺人
9月9日(土曜日)から公開される福山雅治主演の映画『三度目の殺人』。
監督は作品を発表するたび話題となる是枝裕和で、原案・脚本・演出・編集まで手がけた完全オリジナル作。しかも、初の法廷サスペンス。
法廷サスペンスというと脱出モノと並んで、面白くならないわけがないというテッパンジャンル。ざっと挙げるだけで、古くはヘンリー・フォンダ主演、シドニー・ルメット監督の名作『十二人の怒れる男』が金字塔として君臨(蛇足だけどこの作品からリスペクトした三谷幸喜の戯曲を映画化した『12人の優しい日本人』もおすすめ)。さらにビリーワイルダー監督、マレーネ・ディートリッヒ主演の『情婦』、日本でも岩下志麻と桃井かおりのサンダ対ガイラのようなやりとりを繰り広げる『疑惑』、そして加瀬亮主演、周防正行監督の『それでも僕はやってない』も記憶に新しい。それに黒澤明監督の名作『羅生門』も時代は違えど法廷モノ。それこそ今は無くなってしまった2時間ドラマ枠でも法廷ものはマストシチュエーションだった。
善悪の行方を弁護士、検察、被告、原告、裁判官などなどそれぞれキャラ立ちする人物にスポットを当てやすいのと、見る者にとっては把握しやすいというのも人気なのかもしれない。
そんな法廷サスペンスを是枝監督はどう料理したのか。

引き受けたからには勝ったるんじゃ~とばかりの勝利イズムの弁護士、重盛(福山雅治)が同期の弁護士摂津(吉田鋼太郎)が根をあげた三隈(役所広司)という容疑者の弁護を止むを得ず引き継いだことから簡単そうに見えた事件の真相を追うことに。供述をコロコロ変える三隈に翻弄されながら、そして彼を取り巻く関係者にも迫って行くが・・・というストーリー。
『幻の光』 『ワンダフル・ライフ』 『誰も知らない』
誰も知らない
是枝監督はドキュメンタリー制作を経て宮本輝原作の『幻の光』でデビュー。夫を失った妻の喪失、そして次なる人生への機微を描いた作品。
『ワンダフル・ライフ』では天国の入り口でもう一度人生を見つめ直し、残された家族、そして死んで行く自分に整理をつける様を描き(個人的に大好きな作品!)、主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を最年少で受賞したことで話題となった『誰も知らない』では、母親(YOU)に置き去りにされた兄弟たちのサバイバルな日常を淡々と綴り、この作品をきっかけに“家族”を描くことに定評があると評価されている。これら、そしてそれ以降の監督の作品も見ることによって『三度目の殺人』の変化、進化、同化を楽しむのもいいかも。
『花よりもなほ』 『歩いても 歩いても』
歩いても歩いても
『花よりもなほ』は父の仇討ちに奔走する武士(岡本准一)と彼を支えるその妻(宮沢りえ)を描くもので、実は落語みたいな話。
『歩いても 歩いても』は早逝した兄の命日に実家に帰った阿部寛と夏川結衣演じる主人公夫婦とその“家族”をめぐる話。命日を理由に集まった面々の思惑が家の中で見え隠れするのが本当に素晴らしい。家長としての威厳を保つ父(原田芳雄)、父とソリの合わない主人公、波風を起こしたくないけれど腹に一物ある主人公の姉(YOU)、主人公と子連れ再婚した妻の、なんとか居場所を見つけようとする姿、そんな家族を取りまとめようとする陰のドン的な母(樹木希林)。やり取りのひとつひとつの繊細なこと!言わんでもええことを無意識に言うてしまう感覚とか絶品。
『大丈夫であるように -Cocco終わらない旅-』 『空気人形』
大丈夫であるように
ミュージシャンCoccoの自身が生まれ育った“沖縄”という“家族”との絆を探す『大丈夫であるように -Cocco終わらない旅-』は是枝監督のドキュメンタリー作家としての手腕とCccoのいっちゃった感が冴える佳品。
空気人形は業田良家の漫画『ゴーダ哲学堂 空気人形』をみごと換骨奪胎した作品。ある日、心を持ってしまった空気人形と孤独な人たち、その裏に見え隠れする家族像はなるほどなぁと思える。
ぺ・ドゥナ演じる空気人形の儚さ、浮遊感の素晴らしさは必見!
『奇跡』
奇跡
九州新幹線が全線開通した記念に作られた『奇跡』は、隠れた傑作!離れ離れに暮らす兄弟が“家族”としてまた一緒に住みたいと願いを叶えるために鉄道を使ったある計画を立てるという話。今ではすっかり大きくなったまえだまえだの、幼さが少しづつ成長していくかけがえのない瞬間が切り取られた愛すべき作品。『誰も知らない』でも子役の最高の部分を出していた監督が今作でも発揮。脇を固める豪華な面々もいいアクセントになっているのがいいです。
『そして父になる』
そして父になる
第66回カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞した『そして父になる』は、ある日、子どもの取り替えが判明した互いの“家族”を描いた物語。ここでも子役の自然体な演技が絶妙で、彼らを見守る福山雅治のエリートパパ、リリー・フランキーのざっくばらんなお父ちゃんの対比もズルいくらい際立っている。ラストも本当にいい余韻が残されていて、ぜひ見てほしい作品。
『海街diary』
海街diary
吉田秋生原作の漫画『海街diary』は是枝監督が漫画を読んでぜひ映画化したいと熱望し実現した作品。三姉妹(綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆)と父が残した腹違いの妹(広瀬すず)との生活を描いた作品で、ある意味、是枝版『細雪』もしくは『若草物語』。樹木希林演じる大叔母、娘たちを残して出て行った母役の大竹しのぶ演じる娘たちを残して出て行った母親が、三姉妹と新しい妹たちのきれいな水面に、ポトンと黒のインクを落としていく存在がいいです。こういうところ、『三度目の殺人』でも斉藤由貴が担っています。
『海よりもまだ深く』
海よりもまだ深く
前作『海よりもまだ深く』は俺、まだ本気出してない中年男子・良太(阿部寛)が、愛想つかれて別れられた嫁・響子(真木よう子)に未練たっぷり。でもダメ生活は一向に改められず、月に一度の息子・真吾との面会が唯一の楽しみだけど、怠惰が仇となってその面会すらも断られそうな勢い。そんなある日、台風をきっかけにして、気楽な一人暮らしをしている良太の母親ん家に響子、真吾が集まって一夜を過ごすことに。『歩いても 歩いても』で絶妙なコンビネーションを見せた阿部寛と樹木希林の、あるよなぁと思わせる親子のやりとり、そしてビターだけど前向きなラストは『三度目の殺人』ではさらに複雑に。

さて最新作『三度目の殺人』は、前記したコロコロと供述の変わる役所広司に次第に翻弄される福山雅治とのやりとりはこの映画の最もスリリングな場面だと思う。接見を重ねるごとにパワーバランスが変化していく様は、これまでの是枝監督の作品ではあまり見られなかった部分かも。役者VS役者の本気が伝わる屈指のシーンだと思う。さらに夏の設定が多かった是枝作品が、今作では真冬。しかも雪の場面で印象的なシーンも。
見終わると様々な問題を投げかけられ、呆然とするはず。何が本当で何が嘘か。それを劇場で味わって欲しいです。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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