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下北沢映画祭コンペティション 2014-2016傑作セレクション

2017.09.07(Thu) | 平井万里子

10月7日から9日まで開催される第九回下北沢映画祭。実写やアニメ、ドキュメンタリー、ミュージックビデオなどジャンルを問わず審査するコンペティションをメインプログラムに、下北沢の街の特性を活かした様々なプログラムを行う映画祭です。開催を1ヵ月後に控え、過去3年のノミネート作品の中からおすすめ作品をピックアップしました。

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”あの頃”にタイムスリップできる『こんぷれっくす×コンプレックス』
こんぷれっくす×コンプレックス
実写、アニメ問わず活躍するふくだみゆき監督による短編フラッシュアニメーション。第八回下北沢映画祭グランプリのみならず、国内の映画祭を席巻した作品です。

中学2年生のゆいには誰にも言えないこんぷれっくすがあった。それは男子のワキ毛に興味を抱いてしまうこと。ある日、ひょんなことから同級生マサトと意気投合したゆい。彼は彼で、自分の毛の濃さにコンプレックスを抱えていた。秘密を共有し、距離が縮まる2人。この楽しさは果たして恋なのか——。

本作は、俳優たちが先にセリフを録音し、それに合わせてアニメを製作するという「プレスコ手法」を採用。独特の「間」や、セリフを噛んだりなどのぎこちなさも”味”となり、どこかリアルで瑞々しい青春の一ページが切り取られています。また、通常のアニメと比べ、フラッシュアニメは動きの少ないものですが、本作はよく見ると、目の動きや頰がほんのり赤くなるなど些細なこだわりも見てとれます。

「ワキ毛青春アニメ」と銘打たれた本作ですが、単なるコメディと侮るなかれ。秘密を共有する仲間ができた嬉しさ。そして同志を失った時の切なさ——。思春期特有のありとあらゆる感情が詰まった、涙腺直撃モノの青春映画なのです。

本作を観て、ぜひ”あの頃”にタイムスリップしてみてはいかがでしょうか。
アイドルファンの一夜を描く『始まりの鐘を鳴らせ』
始まりの鐘を鳴らせ
第七回下北沢映画祭観客賞受賞作であり、FOXムービープレミアム短編映画祭2015最優秀賞にも輝いた青春映画。

主人公は、地下アイドル神宿(かみやど)の熱狂的なファンである男性3人組。だが握手会前夜に握手権を紛失してしまう。彼らは握手権をゲットし、ライブ会場にたどり着けるのか?

何と言っても3人組のキャラクターがいい。外人のオタクが混ざっているところに、なんだか妙なリアリティがあります。

そして、3人が一夜のドタバタ劇を通して絆を深め、握手権以上に大事な何かを手にする過程が描かれていきます。象徴的なのが、3人がバンに乗り込みアイドルの曲を大声で歌いながら朝を迎えるシーン。言葉を選ばずに言えば、全編通して荒削りな作品なのですが、なぜか心を掴まれるのは「勢い」にこそあります。本作は川島直人監督が、日本大学芸術学部の卒業制作として仲間と撮った作品。きっと監督自身も、劇中の3人のように仲間と同じような朝を何度も迎えたのかも…と想像するとグッときます。

本作に限らず、監督にとっての”地続きの現実”を想像することも、自主映画を観る醍醐味の一つ。これまでインディペンデント映画に触れてこなかった人にこそ観て欲しい、エネルギッシュな作品です。
名作「恋人までの距離」を彷彿!?『口笛なんか吹いて』
口笛なんか吹いて
日本大学芸術学部映画学科出身の白鳥勇輝監督が手がけた短編映画で、第六回下北沢映画祭準グランプリ受賞作。

花見客で盛り上がる河原沿い。ひと組の男女が買い出しを終え、花見へと戻ろうと歩いている途中、女がアメリカへ留学する気持ちを話し出す。男女の12分間の会話を、カメラはワンシーンワンカットで追う。

他愛のない会話に、それぞれの本音が見え隠れする道すがら。当時、下北沢映画祭審査員で映画評論家の森直人さんは「リチャード・リンクレイター監督の『恋人までの距離(ディスタンス)』を彷彿させる!」と絶賛しました。

なかなか素直になれない女性を、人気モデルの中田クルミさんがキュートに好演。長回しにより、観る側は画面に集中し、登場人物に自然と感情移入していきます。劇中では取り立てて派手な事件こそ起こらないものの、ラストで彼女がとったある些細な行動には、まるで長編映画をじっくり堪能した後の充実感、爽快感すら感じます。

ちなみに、この男女のワンシーンワンカットシリーズは、四季をテーマに作られており、『口笛なんか吹いて』は春篇にあたります。その後、夏篇『渚に呼んで』、渡辺真起子さん出演の秋篇、寺田農さん出演の冬篇と続き、世代の異なる4組の男女を描いたオムニバス映画『めぐりゆく』として完成しました。

お披露目の機会をぜひチェックしてみてください。
吹き替えナシのラップ映画『帰ろうYO!』
帰ろうYO!
第六回下北沢映画祭観客賞をはじめ、国内の映画祭で数々の賞を受賞した話題作。メガホンをとったのは、元お笑い芸人という異色の経歴を持つ松本卓也監督です。

ラッパーのリクはHIPHOPグループで活動していたが、メンバーの脱退により解散。それを機に、リクは恋人マイにプロポーズし、地元に戻って暮らす事を決意。女手一つで育ててくれた母にマイを紹介するため2人は帰省するが、その道中、マイの体が宇宙人に乗っ取られてしまう。

出演は、監督の実弟でもあるラッパーのマチーデフ、園子温監督作にも出演した女性ヒューマンビートボクサーCYBORG KAORI。2人の吹き替え一切ナシのパフォーマンスには圧倒されること間違いなし。特にCYBORG KAORIの”豹変”には誰もがア然とし、映画祭上映時には「体が乗っ取られる前と後、どちらが素の彼女なのか?」という疑問が続出。正解はネットで検索してみてください!

そんな2人の掛け合いに爆笑していたかと思えば、家族の絆のドラマに思わずホロリ。親に対し、うまくことばにできない気持ちを抱える人ならなおさら涙腺が刺激されるはず。一見突飛な映画に見えて、実は誰もが共感できる普遍的な物語。タイトル通り、地元に帰りたくなる映画です。

演劇の街、音楽の街、ファッションの街、グルメの街———。訪れる人の目的によってさまざまな表情を見せる下北沢の街。そんな個性的な街で行われる下北沢映画祭のラインナップもまた、カオスでバラエティに富んだものになっています。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

Writer | 平井万里子

DVD、映画の情報誌編集を経てフリーランスに。書籍や雑誌、フリーペーパー、映画パンフレットの編集、企画、執筆を行う傍ら、最近では映画宣伝もお手伝い。また、下北沢映画祭運営委員会代表も兼任。第九回下北沢映画祭は10/7〜9まで開催。http://shimokitafilm.com

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