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原作を超えてる!?「お見事!」な実写化映画5選

2017.09.22(Fri) | 上原礼子

毎年、数え切れないほどの映画が公開される中、近年はベストセラー小説や人気コミックの実写化作品がヒットの主流になっています。映画ファンを毎度悩ませる「観てから読むか」「読んでから観るか」の原作モノ。今回は“こういう形で観たかった!”、いやむしろ“想像を超えていた!”と原作ファンもうなる邦画をピックアップ。いずれも、屈指の注目俳優×注目監督による傑作ばかりです。

『愚行録』妻夫木聡×満島ひかり×ポーランドで学んだ異色の新鋭
愚行録
ミステリー文学界の魔術師・貫井徳郎による第135回直木賞候補作の映画化。昨今では、読後感がこの上なく悪いのにクセになってしまうミステリーが“イヤミス”と呼ばれ、人気を博していますが、この原作も“イヤミス”を代表する1作。

「内容的にも構成的にも、映像化に向いていない」と貫井氏自らコメントする原作を見事に映画化したのは、もともと物理学科の出身ながら、ロマン・ポランスキーを輩出したポーランド国立映画大学で学んだという異色の経歴の持ち主・石川慶。本作が長編監督デビューであり、昨年の第73回ベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門で正式上映されました。

エリートサラリーマン・田向と、その妻と娘の一家3人が惨殺された事件が迷宮入りして1年。週刊誌記者の田中(妻夫木聡)は彼らの同僚や学生時代の友人たちに取材を重ねるうち、やがて絵に描いたように幸せそうな彼らに、信じがたい数多のエピソードが浮かび上がってきます。一方、田中の妹・光子(満島ひかり)が育児放棄の疑いで逮捕されていて……。

原作では、田中の取材に応じる田向の友人や元カノ、妻・友希恵の友人たち、そして光子の一人称で進むのですが、『マイ・バック・ページ』『ピース オブ ケイク』聖の青春などを手がけてきた向井康介の脚色、ポーランド出身のピオトル・ニエミイスキによる撮影、監督自らによる編集が秀逸。さらに、大学時代と現在を演じ分けたキャストたちが、あえて示したであろう、成長のない“無邪気さ”の演技も素晴らしいのです。いずれも、原作に息づく愚行を重ねる人間たちへの不快感をいっそう強め、これ以上、真実に近づいてもよいのだろうか…と観る者を惑わせる点は原作以上ともいえるでしょう。
『告白』松たか子דイヤミスの女王”湊かなえ×奇才・中島哲也
告白
映画・ドラマなど数多くの映像化作品を持ち、“イヤミスの女王”とも呼ばれるベストセラー作家・湊かなえの言わずと知れたデビュー作が原作。第6回本屋大賞を受賞しています。渇き。』『嫌われ松子の一生の中島哲也監督が映画化し、原作とともに映画も物議を醸しました。

「生徒に娘を殺された」ーー。とある中学校の3学期終業式の日、担任の女教師・森口(松たか子)の“告白”からはじまり、登場人物たちの独白形式で構成される物語。森口は、数か月前に学校のプールで死亡した彼女の娘は、実は事故死ではなく、このクラスの生徒に殺されたと言い放ち、少年法で守られた犯人に自らの手で処罰を与えると宣言するのですが……。

最愛の娘を失った教師役の松さん、そして疑いをかけられる中学生の母親役を演じた木村佳乃の怪演に終始ゾワゾワ。一見、線が細く似ているようでありながら、一方はあまりにも幼く、もう一方はやけに大人びている少年たち(西井幸人/藤原薫)、鮮烈な印象を与える橋本愛らが熱演。ハマれば一気に読んでしまえる原作ですが、松さんの独白や木村さんの“毒親”ぶり、突如として始まるダンスシーンなど、動静入り交じる映画の世界にも没入必至。また、復讐劇でありながら、命の話であり、圧倒的なまでの母の愛の話でもあることを浮き彫りにします。ちなみに、松さんの娘役を芦田愛菜が務め、クラスメイトの1人としてのん(能年玲奈)が出演しています。
『永い言い訳』本木雅弘×竹原ピストルの凸凹コンビに西川マジック
永い言い訳
『ゆれる』の原作小説が三島由紀夫賞候補、『ディア・ドクター』のアナザー・ストーリー「きのうの神様」が直木賞候補になるなど、小説家としても高い評価を得てきた西川美和監督。本作は、第153回直木賞候補作にもなった原作小説を、自ら脚色しメガホンをとって映画化。それだけに、監督の伝えたいことがより取捨選択され、濃縮された映画に仕上がっています。

妻(深津絵里)を突然の事故で亡くしながらも、「ちゃんと悲しむ」ことができない主人公の小説家・幸夫(本木雅弘)が、同じく妻を失ったトラック運転手・陽一(竹原ピストル)と出会い、彼らの2人の子どもたちも交えて疑似家族になっていくことで、亡くなった妻と初めて向き合っていく異色のラブストーリー。

自分大好きで、だだっ子のような幸夫が、子ども中心の生活に介入していくそのぎこちなさと、まるで陰と陽、感情の表現も正反対の陽一との温度の違う凸凹コンビぶりはコミカルであり、余計に哀れ。おくりびと以来の主演で百戦錬磨の本木さんに対する、竹原さんの自然体、深津さんの存在感や、池松壮亮の役割など、演者たちの魅力の引き出し方はもはや監督の魔術のようにも思えます。
『何者』日本最高峰の若手俳優×朝井リョウ×演劇界の雄・三浦大輔
何者
「桐島、部活やめるってよ」でデビューし、一躍注目を集めた朝井リョウの第148回直木賞受賞作。同賞初の“平成生まれ”の作家が、“就活”という日本的文化を通じて現代の若者を切り取った小説を、佐藤健をはじめ有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之と豪華若手俳優陣を迎えて映画化した青春群像劇。愛の渦』『恋の渦を手がけた劇団「ポツドール」主宰の劇作家で演出家の三浦大輔がメガホンをとりました。

大学の演劇サークルに全力投球していた拓人。拓人が片想いをしている瑞月。瑞月の元カレで、拓人とルームシェアをしている光太郎。拓人たちの上階に住む瑞月の友達の理香。理香と同棲中で、就活はしないと宣言する隆良。そんな5人が理香の部屋を「就活対策本部」にして集まりますが、やがて内定者が現れるころ、彼らの人間関係から“建前”がはがれ落ち……。

就活事情やSNSに翻ろうされる若者たちの姿に、原作読者からは「リアルすぎる」「就活中に読んだらマジ凹んだ」といった声が寄せられたそうですが、確かに、就活という自分探しによって、佐藤さん演じる主人公の冷静分析系男子・拓人の抱える闇が顕わになり、それぞれの本音が見えてくる様はヒューマンホラーともいえそう。演劇畑の三浦監督が示した、クライマックスのTwitterの見せ方にも膝を打ちます。
『セトウツミ』池松壮亮×菅田将暉×普通を描き出すコミック
セトウツミ
最後は乱立状態にある漫画原作の映画化から、この作品。壮大なスケールのファンタジーアクションでも、胸キュンコミックでもない、壁ドンもスポ根もない、“ただ喋るだけの青春”を描いた此元和津也の人気コミック(「別冊少年チャンピオン」にて連載中)を、『まほろ駅前多田便利軒』の大森立嗣監督が映画化。

関西のとある河原。男子高校生の瀬戸(池松)と内海(菅田)が、放課後の暇つぶしのためにまったり、ゆったり喋るだけ。ウィットに富んだ台詞、絶妙なユーモアにクスッと笑えて、時にはしんみりとする、これもまた青春の1ページ。

あまり実写化に向いているとは思えない原作を、池松壮亮と菅田将暉という世代きっての実力派で実写化したそのチャレンジに拍手。しかも、ほぼ原作どおりのセリフなのですが、個性がまったく違う2人の絶妙の“間”であったり、醸し出す空気感だったりで、映画独特の可笑しみが生まれました。彼らの会話劇からは、それぞれの性格や人生観まで浮かび上がり、アコーディオンによる音楽によって可笑しみも、もの悲しさも倍増。ちなみに、この秋、高杉真宙と葉山奨之にバトンタッチして連続ドラマ化もされるそうです。

直近では、三島由紀夫の異色SFを現代に置きかえた吉田大八監督の『美しい星』が海外でも評価を集めており、昨年話題を呼んだ怒り』『64-ロクヨン-、東野圭吾原作の容疑者Xの献身』『天空の蜂なども見応えある映画となっています。また、新たなイヤミスの女王とも称される沼田まほかるのミステリー小説が、『ユリゴコロ』(9月23日公開)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(10月28日公開)と相次いで映画化。秋の夜長、映画と原作を一緒に楽しんでみませんか?

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当したこともあり、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録と、映画を通じて悲嘆を癒やす試み【映画でグリーフワーク】をFacebookにて随時更新中。

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