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傑作しかない!カンヌの常連ダルデンヌ兄弟の監督作5選

2017.10.13(Fri) | 清水久美子

カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)に二度輝いた世界の巨匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟。彼らの監督作はまさに傑作ぞろいで、ハズレがないと言っても過言ではありません。今回はカンヌ常連のダルデンヌ兄弟の監督映画、最新作『午後8時の訪問者』を含む5作を紹介します。

あの時ドアを開けていたら…?『午後8時の訪問者』
午後8時の訪問者
第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された極上のヒューマン・サスペンス。

診療所に勤める医師ジェニー(アデル・エネル)は、ある日、診療時間を過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに応じませんでした。翌日、身元不明の少女の遺体が見つかりますが、彼女はジェニーが応じなかったベルを押した人物だったことが発覚。もしドアを開けていたら少女は死ななかったのではないか? 後悔の念に駆られるジェニーは、亡くなる直前の少女の足取りを探り始めますが、危険に巻き込まれてしまいます…。

ダルデンヌ監督の映画の特徴として、劇中にあまり音楽が使われないことが有名ですが、本作も静かに淡々と物語が進んでいきます。出世を約束された医師ジェニーが、時間外の患者を無視したことから生じた葛藤を抱え、キャリアを顧みずに亡き少女のために奔走し始める姿にぐいぐい引き込まれます。セザール賞に輝く若手実力派女優エネルの、静かなのに熱い演技に圧倒される一作です。
同僚を助けるためにボーナスを諦められる?『サンドラの週末』
サンドラの週末
第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演のオスカー女優マリオン・コティヤールが第87回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた感動作。

体調不良による休職から復帰しようとしたサンドラ(コティヤール)は、会社から解雇を言い渡されます。親しい同僚の協力で社長に直談判すると、同僚16人のうち過半数がボーナスを諦めることに賛成すれば解雇を撤回するとのこと。ボーナスかサンドラか。投票が行われるのは月曜日。週末しか残されていないサンドラは、悲壮な思いで同僚一人一人に会いに行って説得を始めますが…。

生活が苦しいのは誰でも同じだと分かっているサンドラは、自分のためにボーナスを諦めてほしいと同僚に頼む度に心が折れそうになります。彼女は決して強い女性ではなく、むしろかなりの後ろ向き。そんなサンドラがいくつもの壁にぶち当たりながら奮闘する週末を描いた本作は、人と人とのつながり、人を信じることの大切さが深く心に染み入る感動の物語です。お約束通りには展開せずとも、心をグッと鷲づかみにされるのは、ダルデンヌ兄弟の手腕によるものだと思います。
孤独な少年に待ち受けるものは…『少年と自転車』
少年と自転車
第64回カンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別賞)を受賞した、ダルデンヌ兄弟が育児放棄された子供の実話に着想を得て作った映画。

もうすぐ12歳になる少年シリル(トマ・ドレ)は、児童養護施設に預けられています。父(ジェレミー・レニエ)と連絡が取れなくなり不安になったシリルは、施設を抜け出して父を探すうちに、美容院を経営する女性サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)と出会います。シリルから週末だけ里親になってほしいと頼まれたサマンサは承諾し、一緒にシリルの父探しに協力。ようやく見つかるものの、父は自分の生活を守るためにシリルを突き放します…。

サマンサの存在がシリルを癒やしますが、傷ついた彼は孤独から逃れるために危険な道へと向かってしまったり、心優しいサマンサにまで逆らったりしてしまいます。どうかシリルを救って!と、何度も心の中で叫んでしまいましたが、ダルデンヌ兄弟が用意した結末には心が震えました。シリル役のドレは、映画初出演とは思えない好演ぶりです。
子供のまま親になってしまった若者『ある子供』
ある子供
第58回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した、大人になり切れない青年を主人公にした社会派ドラマ。

20歳のブリュノ(ジェレミー・レニエ)は定職に就かず、日々仲間と盗みをして、その場しのぎに暮らしています。恋人の18歳のソニア(デボラ・フランソワ)との間に男の子が生まれますが、ブリュノは父親の自覚を持つどころか、盗んだカメラを売りさばくように自分の子供まで売ってしまいます。それを知ったソニアはショックのあまり倒れ…。

若年層の失業率が20%というベルギーを背景に描いた本作を通して、ダルデンヌ兄弟は、貧しさの中、労働の価値も知らず、将来に期待を抱くこともできない、大人になれないブリュノのような若者は特別な存在ではなく、だからこそ「貧しい人たちにこそ、希望の光をわずかでも見せたい」と語っています。わずかな光を感じるラストシーンまで、激しく心を揺さぶられる傑作映画です。
ダルデンヌ兄弟初の男女の愛の物語『ロルナの祈り』
ロルナの祈り
第61回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した、ダルデンヌ兄弟が初めて描くラブストーリー。

恋人とベルギーで店を開いて幸せに暮らすことを目指す、アルバニアからの移民ロルナ(アルタ・ドブロシ)。ベルギー国籍を得るため、麻薬中毒の青年クローディ(ジェレミー・レニエ)と偽装結婚をしたロルナは、彼を疎ましく思っていましたが、薬をやめたいから力を貸してほしいと自分を頼ってくるクローディに情が湧いてきます。でも、偽装結婚を手配したブローカーは計画通りにするようロルナに指示をし…。

本作には、ダルデンヌ兄弟のほかの作品とはどこか違う印象を抱きました。中盤のロルナの感情が劇的に変化する辺りから終盤まで、正直困惑せずにはいられなかったのですが、ダルデンヌ兄弟が描く男女の愛というものを初めて知ったからだと思います。見終わってから少し時間が経つと、ロルナの思いの深さがよみがえってきて、やはり傑作だと感じました。ダルデンヌ兄弟作品常連のレニエの壮絶な演技は、本作でも光っています。

移民、貧困、薬物など様々な社会問題を背景に、登場人物たちの心情を、余計なものを一切そぎ落とした描写で見せるダルデンヌ兄弟。ほかの監督作とは一線を画す彼らの映画作りには脱帽します。カンヌが認めたダルデンヌ兄弟監督作は、絶対に見て損はありません。

Writer | 清水久美子

映画・海外ドラマ・音楽ライター。昼はメーカーでOL、夜は音楽雑誌の編集アシスタントをこなした後、パソコン雑誌で編集業務に就く。その後フリーライターとなり、俳優や監督・ミュージシャンのインタビュー、執筆に日々奔走。試写室通いで時には1日4本の映画を観ることも。移動中もスマホは目が疲れるので、いつもポータブルDVDプレイヤー持参で何かしら観ています。

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