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東京国際映画祭SAMURAI賞受賞記念!坂本龍一の映画音楽に酔う

2017.10.25(Wed) | 斎藤香

2017年10月25日より開催される東京国際映画祭の第30回SAMURAI賞を受賞することが決定した坂本龍一。“比類なき感性で「サムライ」のごとく、常に時代を斬り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称えるSAMURAI賞”を受賞するにふさわしい音楽家です。そこで、SAMURAI賞受賞記念に坂本龍一特集をお届け。役者として出演した2作品も含め、彼の才能をしっかり堪能できる映画をピックアップしました。

坂本龍一のすべてがわかるドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto: CODA 』
坂本龍一CODA
2012年から5年かけて坂本龍一に密着した渾身のドキュメンタリー作品。世界的音楽家の坂本龍一の活動を追いかけ、かなり踏み込んだ作品になっています。

映画は東北大震災で津波に襲われたピアノに対する坂本氏の思いから始まり、そこで彼の目に映った景色や、そこで奏でられた音楽、そこで耳にした音を丁寧に拾っていきます。また原発再稼働反対デモでのスピーチや、病気療養後にアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督から『レヴェナント:甦りし者』の依頼を受けたときの喜び、音楽制作の現場までカメラは追いかけます。過去の映像も多く、イエロー・マジック・オーケストラ時代の映像や『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー』『シェルタリング・スカイ』製作時の裏話もありました。映画音楽のエピソードは映画ファンにいちばん刺さるかも。

天才の言葉は凡人には「?」ということがありますが、彼は伝える言葉を持っており、その言葉は見る人すべての心にきちんと伝わります。坂本龍一の仕事とその人がわかる素晴らしいドキュメンタリーです。

◆『Ryuichi Sakamoto: CODA
11月4日(土) 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
(C)2017 SKMTDOC, LLC
ピアノの旋律が印象的な吉田修一原作のミステリー映画『怒り』
怒り
芥川賞作家の吉田修一の同名原作小説を映画化したのが『怒り』。この映画ではピアノの旋律が印象的な音楽を作り上げています。

残酷な夫婦殺人の犯人は整形をして逃亡。同じ頃、全国3ケ所で3人の素性の知れない男が現れました。千葉の漁港で働き始めた男(松山ケンイチ)は漁師の娘(宮崎あおい)と恋仲になるけれど、彼女は事件を知り、彼を疑い始めます。東京ではゲイの男性(妻夫木聡)がクラブで知り合った男(綾野剛)と同棲するけれど、彼の過去に疑いを抱きます。沖縄では無人島に住むバックパッカーの男(森山未來)と女子高生(広瀬すず)が出会いますが、男は何か秘密がありそうで……。

疑い始めると止まらなくなる人間の心の闇。それぞれが疑惑を深めていくごとに、音楽も盛り上がりをみせていきます。「もしこの男が犯人だったら」と心が波打つ感じがたまらなく、音楽がそれをよりスリルへと高めていくドラマチックなスコアが印象的な映画です。
アカデミー賞音楽賞受賞の代表作『ラストエンペラー』
ラストエンペラー
清朝最後の皇帝溥儀の人生をベルナルド・ベルトリッチ監督が描いた壮大な歴史劇で、坂本龍一は出演&音楽を担当。見事、アカデミー賞音楽賞を受賞しました。

清朝最後の皇帝である溥儀(ジョン・ローン)は、幼い頃から母親と引き離され、子供らしい生活はできないまま即位。紫禁城から出られない生活の中、変わりゆく中国の歴史の波に振り回されていきます。日本に侵略されていた満州へ出向き、建て直そうと皇帝になるものの、積極的な活動も実を結ばず……。

政治に利用され、私生活も家族も失っていく悲劇の皇帝の人生は胸が痛くなるほどですが、映像、美術、スケールの大きさと美しさには圧倒されます。この作品で、満州を仕切っていた甘粕大尉を演じたのが坂本龍一。俳優としてキャスティングされていたのに、プロデューサーの依頼で急に音楽も担当することになったようです。しかし、それで見事アカデミー賞を受賞し、世界のサカモトになるのですから、天才はやることなすことスゴイです。
海老蔵+瑛太+満島ひかり主演の三池監督の時代劇『一命』
一命
三池崇史監督の時代劇で、小林正樹監督作『切腹』のリメイク作品。(原作は「異聞浪人記」)。主演は市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司と演技派揃い、悲劇とアクションがたたみかけてくる壮絶な本作で、坂本龍一は初めて三池監督と組みました。

江戸時代初期、困窮した浪人たちの間で、裕福な大名屋敷で切腹をさせてほしいと言い、面倒に思った大名たちから金銭をもらうという狂言切腹が横行していました。そんなとき、井伊家に津雲半四郎(市川海老蔵)という侍が「切腹させてほしい」とやってきます。家老・斎藤勘解由(役所広司)は、同じように切腹を願い出た若い浪人、千々岩求女(瑛太)が辿った悲惨な運命を語りますが、それを聞いても津雲は恐れず、切腹の意志は変わりません。なぜなら彼には井伊家にやってくる理由があったからです。

津雲半四郎はなぜ井伊家に来たのか、千々岩求女の身に起こったことは何なのか……サスペンスタッチの展開は目が離せず、また千々岩求女の妻(満島ひかり)と子供の運命には涙が止まりません。そんな三池ワールドを彩った坂本龍一の音楽はストイックで、和太鼓などの音がジワジワと効果を発揮するクールな映画音楽です。
坂本龍一と映画を結びつけた『戦場のメリークリスマス』
戦場のメリークリスマス [DVD]
大島渚監督作で役者と音楽を兼業し、共に強烈な印象を残したのが、坂本龍一の映画音楽デビュー作『戦場のメリークリスマス』です。

第二次世界大戦の最中、ジャワ山中の日本軍俘虜収容所。エリート軍人である収容所長のヨノイ(坂本龍一)は英国人捕虜のセリアズ(デヴィッド・ボウイ)に対し、厳しくも熱い眼差しをおくります。収容所での処刑、断食など英国人捕虜への厳しい仕打ちの中、戦争が終わると日英の立場は逆転するのでした。

男だけの収容所は戦時中の厳しさや残酷さと同時に、抑圧された中で生まれる独特の世界がありました。戦争映画なのですが、銃撃戦や空中戦はいっさいなく、ただ戦時下での日本軍と英国人の捕虜の際どい人間関係をじっくりあぶりだすように描いた作品です。ビートたけしが演じるユニークな軍人ハラは強烈な印象を残し、坂本龍一とデヴィッド・ボウイの2ショットはとても美しいです。
1983年の作品なのに、今でもメロディがすぐに浮かぶ『戦メリ』の音楽は『ラストエンペラー』と並ぶ坂本龍一の代表作でしょう。

『戦場のメリークリスマス』から始まった坂本龍一の映画音楽。数多くの作品を手掛けていますが、最近では『レヴェナント:甦りし者』、山田洋次監督作『母と暮らせば』が有名です。また海外で評価が高い作品としては、ベルナルド・ベルトリッチ監督作『シェルタリング・スカイ』の音楽も素晴らしく、LA批評家協会賞、ゴールデングローブ賞の音楽賞を受賞しています。坂本龍一の音楽を聴くために映画を見るという選び方もありですね!

Writer | 斎藤香

映画ライター 映画誌の編集者を経てフリーに。映画レビュー、監督&俳優へのインタビュー、書籍ライティングなどで活動中。映画のほかには教育関連の取材執筆もいたします。好きな監督はウディ・アレン、トーマス・アルフレッドソン、アルフレッド・ヒッチコックなど多数。

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