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日本映画の新たな才能が集まる「田辺・弁慶映画祭」。第10回-第4回 傑作セレクション配信中!

2017.11.01(Wed) | 松村知恵美

和歌山県は田辺市で行われ、今年で第11回を迎える「田辺・弁慶映画祭」。今年は11月10日(金)〜12日(日)の3日間にわたり、9作のコンペティション作品の他、全21作のも日本映画が上映されます。コンペティション部門では若手映画監督を対象に作品を募集しており、過去のコンペティション部門の入選・入賞監督が続々と商業映画の監督を務めるなど、「若手監督の登竜門」としても知られる映画祭です。

現在、青山シアターではこの「田辺・弁慶映画祭」で過去に入賞した作品を配信しています。今回はその中からオススメの5作品をピックアップしてご紹介します。

◆「田辺・弁慶映画祭」絶賛配信中!

特別審査員賞、映検審査員賞受賞! 強烈なキャラクターが誘うブラックコメディ『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』
人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女
2010年の第4回田辺・弁慶映画祭で特別審査員賞、映検審査員賞を獲得したのが、加藤行宏監督の映画『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』です。2014年のNHK連続テレビ小説「花子とアン」で女流作家・宇田川満代を演じた山田真歩が、主人公の山田真歩を演じています。

この映画の主人公は、山田真歩演じる売れない女優、山田真歩。誰にも褒めてもらえない売れない女優がふと思い立ってネットドラマを作っていく過程を描いています。この山田真歩、かなり強烈なキャラクター。ジャージ姿で、やりたいことはやり、言いたいことは言う女性なのです。とはいえ、それがあまりいい意味ではなく、自分の実力や知識不足は棚に上げ、ずうずうしくも人のリソースを活用して自分の目標を叶えていくという…。それでいて底が浅いというか、自分では「アタシの外面の良さを舐めないでよ!」と言っているにもかかわらず、人からは“人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女”と見透かされているなど、そのツメの甘さがキャラクターとしての魅力だったりも。他にも、強烈なキャラクターが次々に登場し、ブラックな笑いを誘います。「こんな女、そばにいたら嫌だ…」などと思いつつも、彼女の行状や彼女に吸い尽くされた人間たちから目が離せなくなる、強烈な個性を持った映画です。
自分だけのアイドルを作り出す男と娘のいびつな関係を描いた第7回弁慶グランプリ、市民賞受賞作品『あの娘、早くババアになればいいのに』
あの娘、早くババアになればいいのに
2013年の第8回田辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリ、市民賞をW受賞したのが、頃安祐良監督の映画『あの娘、早くババアになればいいのに』です。奇抜なタイトルの本作は、アイドル大好きな中年男と、彼の娘として育ち世界一のアイドルを目指す女子高生の、いっぷう変わった親子愛の物語です。

本作の主人公の平田は童貞でありながら、美少女・アンナを赤ん坊の頃から預かって育てている40男。生粋のアイドルヲタクが高じ、娘のアンナを世界一のアイドルにするためのトレーニングを重ねています。しかし、二人で仲良くアイドルを目指していた平田とアンナの前に、平田に気がありそうな美女・小西と、アンナのことを大好きだという高校生・清水が現れ、二人の関係性に変化が訪れていくのですが…。アンナを娘として、そして自分だけのアイドルとして愛する40男を尾本貴史がイタい雰囲気で熱演。そして、アンナを演じる中村朝佳が、汚すべからざる美少女アイドルを全身で体現しています。相互に依存しあったちょっと不思議な関係性は、ある意味アイドルヲタクにとって理想的な関係とも言えるのかもしれない…、そんなふうに思わせられる、アイドル好きの頃安祐良監督だからこそ描けたと言える作品です。
4部門受賞!第8回の田辺・弁慶映画祭を席巻した地方在住アラサー独身女子ドラマ『ひとまずすすめ』
ひとまずすすめ
2014年の第8回田辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリ、市民賞、男優賞、女優賞の4冠を獲得したこの作品。ドラマ「ホクサイと飯さえあれば」などの演出を務める柴田啓佑監督が30歳の頃に制作した30分00秒の短編ドラマです。

本作の主人公は、群馬県藤岡市で公務員をしている実家暮らしのアラサー女子。市役所の市民課で婚姻届や離婚届にまつわる人々のドラマをみつめる日々を送っていたら、いつの間にか5年間も彼氏がいなかった…。そんな、どこにでもいそうな女性です。そんな平穏な彼女の毎日が、無理やり参加させられた街コンや弟の結婚の知らせで変わっていきます。街コンで出会った男性の言葉に心を揺らしながら、自分の幸せとは何かを探すようになるのです。主人公の美幸を演じた女優の斉藤夏美の普通っぽさや、どこにでもありそうな地方都市の町並みに、親近感を覚える視聴者も多いはず。どこにでもあるような物語だからこそ多くの人の心に響く、そんな一作です。

『ひとまずすすめ』からすすんだ、その後の物語。
『ひとまずすすんだ、そのあとに』も配信中。
1992年生まれ!最年少で弁慶グランプリを獲得した柴野太朗監督の意欲作『モラトリアム・カットアップ』
モラトリアム・カットアップ
2015年の第9回田辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリを受賞したのは、1992年生まれの柴野太朗監督が作った映画『モラトリアム・カットアップ』です。2011年7月のテレビのアナログ放送廃止のタイミングを切り取り、このデジタル化の時代にあえてアナログに生きようとする主人公のモラトリアム感をフレッシュな感覚で描いています。

この『モラトリアム・カットアップ』を監督したのは1992年生まれの柴野太朗監督。田辺・弁慶映画祭において最年少でグランプリを受賞しています。自身もデジタルネイティブであろう柴野太朗が描いたのは、あえてアナクロに生きる20歳の若者の姿。テキストやフレーズをランダムに切り刻み、再構築して新たな意味を与える「カットアップ」という手法を取り入れ、現実と虚構を交錯させ、現在と過去を交えながらストーリーを進めていきます。携帯電話もパソコンも持たず、幼なじみ4人で馴染みの喫茶店で意味のないおしゃべりを続けるのが唯一の楽しみという主人公と、時代の変化に合わせて成長したり変化していく幼なじみたち。彼らの屈託のない日々がデジタル化によって知らず知らずのうちに変化していく様子は、多くの現代人が何気なく受け入れて来たこと。その中で感じる些細な違和感や寂しさを、多くの映像ギミックを駆使してコミカルに描いた本作は、荒削りながらも可能性を感じさせてくれる、若さあふれる注目作品です。
第10回田辺・弁慶映画祭で映画.com賞、さらに第24回レズビアン&ゲイ映画祭グランプリ受賞作『私は渦の底から』
私は渦の底から
2016年の第10回田辺・弁慶映画祭で映画.com賞を受賞した野本梢監督の映画『私は渦の底から』は、「第24回レズビアン&ゲイ映画祭」でグランプリを受賞した一作。親友に打ち明けられない恋をする、レズビアンの主人公の葛藤の物語です。

親友に恋心を抱き、レズビアンである自分には普通の幸せは得られないと実家に帰ろうとする主人公・希子が、親友の恋人と出会うことで変わっていく姿を描く本作。性的マイノリティとして自分のあり方について悩んでいた主人公が自身の性を謳歌している人々に出会い、変えられない自分のアイデンティティーを認めて戦いに乗り出していきます。主人公の希子を演じるのは、アクティングコーチも務めるという女優の橋本紗也加。その佇まいもリアリティたっぷりで、まるで主人公の私生活を覗いているような感覚を感じさせてくれます。『わたしが発芽する日』、『はじめてのうみ』など生きづらさを感じながら生きる人々を独特な視線で見つめて描く作風が特徴の野本梢監督が描いた本作、女性監督にしか描けない描写などもあり、これからの可能性を感じさせてくれる一作です。

劇場公開作品が3作以内の監督を対象にした若手映画監督の登竜門として、注目の才能が集まる田辺・弁慶映画祭。30分以上という募集要項のため、30分から1時間といった短尺の作品も多く、気軽に見ることもできます。この青山シアターの傑作セレクションを見て興味を持った方、ぜひ11月に田辺市を訪れてみては? 世界遺産登録された「熊野古道」や「熊野本宮大社」と共に、これからの日本映画界を発展させていく新たな才能を発見することができるかもしれません。

第11回 田辺・弁慶映画祭
開催期間:2017.11.10~11.12
開催場所:和歌山県田辺市 紀南文化会館

Writer | 松村知恵美

家と映画館(試写室)と取材先と酒場を往復する毎日を送る映画ライター、WEBディレクター。2001年から約8年、映画情報サイトの編集者をやってました。2009年に独立し、フリーランスに。ライターとしての仕事の他、Webディレクションなど、もろもろお仕事させていただいています。

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