ホーム > 日本映画を世界にアピール!アカデミー賞外国語映画賞日本代表特集

日本映画を世界にアピール!アカデミー賞外国語映画賞日本代表特集

2017.11.08(Wed) | 斎藤香

2018年1月23日に発表される第90回アカデミー賞外国映画賞にエントリーした日本代表作品は、宮沢りえ主演作『湯を沸かすほどの熱い愛』。受賞が期待されますが、これは狭き門! とはいえ、外国映画賞を受賞した日本映画があるんですよ~ということで、受賞作、惜しかった作品を含めて、アカデミー賞外国語映画賞の日本代表作品から5作をピックアップしました。

宮沢りえ主演!日本映画界で熱く支持された母の愛情 『湯を沸かすほどの熱い愛』
湯を沸かすほどの愛_縦
銭湯を営む女性の絶対の愛を描いた“強いおかあちゃん”の感動作。2016年の日本映画界を席巻し、多くの映画賞を受賞しました。本作が第30回アカデミー外国映画賞の日本代表作品です。

銭湯「幸の湯」を営む幸野家の双葉(宮沢りえ)は、夫(オダギリジョー)が出て行って以来、銭湯を閉めて、働きながら娘(杉咲花)を育てていました。ところが重い病になり余命2ケ月と診断されると、彼女は死ぬまでにやるべきことを決めて、トップスピードで人生を歩み出すのです。

とにかく双葉かあちゃんが凄い。フンワリ包み込むような母の愛とは正反対。自分にも他人にも妥協を許さない強く情熱的な双葉の愛情表現は、残された家族が強く生きていけるように、心を鬼にしてムチを振るっているようです。ラストも「こんなシーン見たことない」という斬新さ。宮沢りえはじめ、キャストの好演も映画のレベルを一段あげています。
湊かなえのミステリーを中島哲也ワールドで染める『告白』
告白
湊かなえの名前を世に知らしめた衝撃ミステリー『告白』を『嫌われ松子の一生』などの中島哲也監督が映画化。独特の映像センスで、美しいのに胸にグサグサ刺さるような生々しい感触がある作品です。

中学校の教師・森口(松たか子)は終業式のホームルームで語り始める。「自分の娘は校内のプールで亡くなった、でもそれは事故死じゃない。このクラスの誰かに殺されたのだ」と。どよめく教室、茫然とする生徒たちの前で、森口は復讐を開始するのです。

中学生男女のピチピチ弾ける姿を映像で切り取りつつも、青春のきらめきの裏の闇をあぶりだした中島監督。教え子相手でも容赦なく徹底的に精神をつぶしにかかる森口の強烈な復讐心がアカデミー会員に刺さったのか、第1次選考の9作品に残りました。最終候補を逃したのは残念ですが、見応えあるミステリー映画。松たか子の無表情演技が怖いです。
見事!アカデミー賞外国語映画賞を受賞『おくりびと』
おくりびと
第81回アカデミー賞外国映画賞の『おくりびと』は、候補作の中でも受賞候補の筆頭ではありませんでした。しかし、結果は大逆転! 納棺師の主人公が他人の死と出会い、向き合う姿を描いた作品は、言葉の壁を超えて感動できる映画だったからこその受賞したのです。

オーケストラが解散し、無職になったチェロ奏者の大悟(本木雅弘)は、妻(広末涼子)と山形県の実家に帰り、納棺師の仕事に従事することになります。人生を終えた人の旅のお手伝いが仕事。彼は次第に納棺師の仕事にやりがいを感じていきますが、そんなとき、大悟は自分を捨てた父と再会することになるのですが……。

日本のお葬式の様子や死の受け止め方、お遺体を敬う姿など、本作は丁寧に描かれており、家族それぞれの死との向き合い方も胸に染みます。そこが国境を越えて人々の心を震わせたのかもしれません。主人公と父親の再会も泣ける!ハンカチを大量に用意してご覧ください。
鮮烈なデビューを飾った小栗康平監督の傑作『泥の河』
小栗康平監督作品集 DVD-BOX
宮本輝の原作小説を小栗康平監督が映画化。昭和30年代の景色と人々の生活、それぞれの事情、そして少年の友情を繊細に切り取った作品です。

食堂を営む両親の息子、信雄(朝原靖貴)はある日、喜一(桜井稔)という少年に出会い友達になります。喜一は学校に行かず、妹と母親(加賀まりこ)と川に浮かぶ古い船に住んでいました。仲良くなる二人ですが、信雄の周囲の大人たちは喜一の船に行ってはいけないと言います。そこで彼の母親はある仕事をしていたのです。

第54回アカデミー賞外国映画賞候補になった『泥の河』。この映画の演出で小栗監督は一気に実力派監督の仲間入りをしました。モノクロの映像の中、川に浮かぶ古い船に暮らす自分の母親とは全然違う、喜一母の女の香りにむせかえる信雄は、ほんの少し大人の世界を垣間見るのです。純粋な子供の世界が大人の事情に汚されるような……切ない気持ちにさせる人間ドラマです。
黒澤明監督が世界に羽ばたくきっかけとなった名作『羅生門』
羅生門 デジタル完全版 [DVD]
世界の映画人に尊敬されている日本人監督といえば、黒澤明監督。黒澤作品で最初に世界で注目されたのが『羅生門』。これは第24回アカデミー賞名誉賞(現:外国語映画賞)を受賞しています。

ときは平安時代。雨降る京都のある場所で3人の男が奇妙な会話をしています。そのうち2人はある事件の証人として調べられたばかりでした。その事件とは、ひとりの男の殺人事件。容疑者は被害者の妻(京マチコ)と盗賊(三船敏郎)です。二人は事件のことを語り始めますが、同じ事件なのに言っていることが全く違うのです。

ひとつの事件の証言が全く違う。誰かが嘘をついている……というのはミステリー映画でときどきありますが、『羅生門』から始まっているのかもしれません。芥川龍之介の『藪の中』をもとにした作品で、シンプルなストーリーを凝った構成で演出。グイグイと見る者を惹きつけます。人間はエゴイスティックで自分を守るためならどんな嘘も自然についてしまう。そんな人間の負の本質をついた傑作ミステリーです。

アカデミー賞外国語映画賞にエントリーする日本代表作品は、日本映画製作者連盟が選考しています。世界中からエントリーされた作品の中から、候補作品が5作品に絞り込まれ、その中から受賞作が決定するのです。日本映画は何度か最後の5作品に残っていますが、名誉賞以外での外国映画賞受賞は『おくりびと』だけ。これから受賞作が増えていくといいですね!

Writer | 斎藤香

映画ライター 映画誌の編集者を経てフリーに。映画レビュー、監督&俳優へのインタビュー、書籍ライティングなどで活動中。映画のほかには教育関連の取材執筆もいたします。好きな監督はウディ・アレン、トーマス・アルフレッドソン、アルフレッド・ヒッチコックなど多数。

Banner

関連するポスト

Copyright (C) GAGA Corporation. All Rights Reserved.
GAGA