ホーム > 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』公開記念!大人だからこそ楽しめる深い余韻を楽しめるアニメ6本

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』公開記念!大人だからこそ楽しめる深い余韻を楽しめるアニメ6本

2017.11.10(Fri) | 仲谷暢之

 11月18日(土)公開のストップモーション・アニメ『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の公開を記念して、大人だからこそ楽しめるアニメーション映画をご紹介!

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
KUBO
11月18日(土)公開のストップモーション・アニメ「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」は、アメリカ産、中世時代の日本を舞台にしたファンタジー・アクション作品。
不吉な子供として生まれ、片目を失ってしまった少年が、亡き母の最後の力によって命を吹き込まれた喋る猿や、折り紙のクワガタ侍とともに自身の出自の秘密を明かすことと母たちの仇討ち誓い、冒険の旅に出るがその道中には数々の困難が待ち構えていた!さて少年たちの運命は?という物語。

第89回アカデミー賞で長編アニメーション部門にノミネートされた今作は、気の遠くなるようなアナログ作業と、最新の技術をミクスチャーして完成。
日本を舞台にした作品ながら、海外でも絶賛された今作は、ただ単にオリンエンタリズム、エキゾチズムを踏襲するのではなく、浮世絵や折り紙などのジャパニーズ・カルチャーをリスペクトし消化し、見事に昇華させたものとなっています。

声の出演に「マッドマックス/怒りのデスロード」「アトミック・ブロンド」「イーオン・フラックス」「トリコロールに燃えて」「スコルピオンの恋まじない」などのシャーリーズ・セロン、「ダラス・バイヤーズ・クラブ」でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、「マジック・マイク」「サハラ-死の砂漠を脱出せよ-」「MUD マッド」などでも活躍のマシュー・マコノヒー、「LION/ライオン~25年目のただいま~」「her/世界でひとつの彼女」のルーニー・マーラ、「ハリー・ポッター」シリーズや「ナイロビの蜂」などのレイフ・ファインズなど豪華な面々がつとめ、キャラクターを魅力的なものに。個人的には村人役の声にテレビ版「スター・トレック」シリーズのジョージ・タケイや数々の映画で脇役として活躍するケイリー=ヒロユキ・タガワ、「真夜中のカーボーイ」で印象的だった懐かしのブレンダ・ヴァッカロが配されているあたり、監督のこだわりにニンマリ。
ストーリー展開、アクションシーンも抜かりなし、さらに水木しげるの漫画にも登場し、ラスボス的な存在が素晴らしい妖怪“がしゃ髑髏”が登場したり、子どもだけではなく大人も十分楽しめるアニメとなっています。ということで、童心に戻って、いや、大人だからこそ新鮮な見方ができるアニメを紹介します。

◆『KUBO/クボ 二本の弦の秘密
監督/トラヴィス・ナイト
声の出演: アート・パーキンソン(矢島晶子)/シャーリーズ・セロン(田中敦子)/マシュー・マコノヒー(ピエール瀧)/ルーニー・マーラ(川栄李奈)/レイフ・ファインズ(羽佐間道夫)
2017年11月18日(土)公開
(C)2016 TWO STRINGS, LLC. All Rights Reserved.
『コララインとボタンの魔女』
コラライン
アニメーターとして「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」の長編アニメ映画監督デビューを果たしたトラヴィス・ナイトが担当したのが今作。とにかくヘンリー・セリック監督のこだわりが溢れかえったある意味、カルト作品。これまでティム・バートン色が強すぎた「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」、やっと自分のカラーを出し始めた「ジャイアント・ピーチ」、そして監督の自我が萌芽している「モンキー・ボーン」と、作品を発表するごとにいい意味での偏執的さが堪能できるのですが、コララインはニール・ゲイマンの児童文学を原作とし、子ども向けとは言いながらも正直、子どもが見たらトラウマ必至なこと間違いなし。故に大人が見ることによって実は監督の意図が完結するのではないかなと思います。

郊外に家族で引っ越してきたものの両親は忙しく、主人公コララインはほったらかし。家の中を探検すると封印された小さなドアを発見。やがてあるきっかけでそのドアが現実とうり二つの世界につながっていることを見つけ潜入してみると、現実の世界とは違い、優しい両親が甲斐甲斐しくコララインの世話をしてくれます。ただ、その両親が違うのは目がボタンということだけ。しかもこの世界にいたいのなら目をボタンにしなさいと母親にすすめられます。さて、彼女は受け入れるのでしょうか・・・。

オープニングからセリック監督の仕事に圧倒される。人形を一体作っていくプロセスを人形アニメでじっくりと見せてくれます。さらに美術の凄さ、滑らかなキャラクターの動き。表情の豊かさ。一コマ一コマ少しづつ人形の動きを変えて撮影するアナログ作業と、それをさらに昇華させる最新技術の見事な融合に見惚れます。でもって本領が発揮されるのは、小さな扉の向こうに広がるパラレルワールド。チェコの人形アニメ作家であるヤン・シュヴァンクマイエル監督の「不思議の国のアリス」にも通じるグロテスクでシュールな展開は大人でもちょっと躊躇するかも。
この作品を見てから「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」を見れば、トラヴィス・ナイト監督がちゃんとヘンリー・セリック監督のこだわりを継承しているのがわかるはず。
『ENCOUTERS』
ENCOUNTERS
監督、脚本はもちろん人形作りから美術、撮影、音楽、アテレコなどほとんど一人で行う、地元・茨城県牛久市在住の映像作家、飯塚貴士監督の作品が青山シアターでも見ることができるのは嬉しい。そしてこうやって彼の作品を紹介できるのもさらに嬉しい。
正直人形アニメとしてのクオリティはそれなり。登場するキャラクターの造形もセットも手作り感満載。とはいえ、こういうのが映画やねんなぁというモノを作る楽しさが映像を通して伝わります。

失恋の痛手を親友ジョンからの誘いで失恋の痛手を癒すために一緒に旅に出たマックス。たどり着いた田舎町で野良犬との交流などで少し心が晴れた彼の前に突然、怪物が現れる。しかもジョン、野良犬を襲いさらっていく怪物。マックスはそんな性格ではないけれど、親友のため、野良犬のために勇気を振り絞り怪物へ立ち向かうと意外な事実が隠されていた!という話。20分の短編ながら、盛りだくさんで全く飽きさせません。 しかもキャラクターたちのセリフの中にちょいちょい笑えるおかしな言動や毒が散りばめられているのも、監督の闇を感じさせられ、大人の琴線に触れてきます。

なにより、怪獣映画のセオリーをちゃんと踏襲し、さらに過去の怪獣映画のリスペクトに溢れていて特撮好き大人男子にはたまりません。
『メアリー&マックス』
メアリー&マックス
これこそ大人に見てもらいたい人形アニメの1本。公開当時に見たとき、涙を流しつついろんなことを考えて、さらに涙をこぼしてしまうという涙ループに陥ってしまった憶えが。

オーストラリア、メルボルンに住む8歳の女の子メアリー。貧困家庭に生まれ、アル中の母は育児放棄状態。学校では容姿のことなどでいじめられる毎日。そんなとき、何か救いを求めようとひょんなことからニューヨークに住むマックスという男性に手紙を書いてみることに。一方、マックスはアスペルガー症候群を患う孤独な中年男性。そんな彼の元に届いたメアリーの手紙。最初は戸惑うマックスだったけれど嬉しいことに変わりない。以後、住む国も、年齢も性別も違う二人だったけれど文通を通してかけがえのない親友に。が、メアリーが成長し、マックスの病気について書いた本を出したことから絶縁状態に・・・。さて二人の友情はどうなってしまうのか・・・。

その独特のキャラクターに一瞬見るのを躊躇するかもしれないけれど、そのストーリーのうまさと、細部にまでこだわった美術、そしてキャラクターを立たせてくれた名優たちの声の名演に引き込まれるはず。 ちなみに声の出演に、オーストラリア出身のメアリーには「マイ・ベスト・フレンド」「しあわせはどこにある」などのトニ・コレット、メアリーの夫となるダミアンに「ハルク」、「ローン・サバイバー」などのエリック・バナ、そしてマックスにはニューヨク出身で残念ながら46歳で急逝した「ザ・マスター」、「カポーティ」などのフィリップ・シーモア・ホフマンが。英語がちゃんとオージー訛りとニューヨーク訛りになってるのも距離感が出てその配役の妙も楽しんでほしいです。そしてラストに出てくるアメリカの劇作家で詩人のエセル・マンフォードの「親類は選べないが、友は選べる(神は我々に親族を与えたまう。ありがたいことに、友は我々自身で選べる)」という言葉が胸にしみるはず。
『スーサイド・ショップ』
スーサイドショップ
「仕立て屋の恋」、「髪結いの亭主」や「暮れ逢い」などコメディからシリアス、フェチ度高いドラマでフランスを代表する鬼才パトリス・ルコントがアニメを初監督。しかも小説家や俳優、コミック原作者など多彩な活躍するマルチ・アーティスト、ジャン・トゥーレ原作の「ようこそ、自殺用品専門店へ」をブラックユーモア溢れるミュージカル仕立てにしたフランス産大人のアニメ。
とはいえ、元々はイラストレーターとしても活躍していた監督だったので、ある意味、原点に戻ったのかもしれないです。

魚の腐ったような目をした人ばかりが暮らす大都市の一角で自殺用品専門店を営む父ミシマ、母ルクレス、長女マリリン、長男ヴァンサンからなるネガティブ思考でペシミストで陰気を絵に描いたようなトゥヴァシューファミリー。今日も今日とてひっきりなし一家の店には自殺志願の客が訪れ賑わっている。そんなある日、臨月だったルクレスは赤ちゃんを出産。アランと名付けられた男の子は笑顔あふれる“陽”を体現した子ども。そんなアランが徐々に一家を変えていくという話。

これ、フランスでは子ども向けに作られたんだろうかと思うほど、子どもが主人公なのに毒が溢れすぎていて面白い。自殺をコミカルに描きすぎてるきらいはあるけれど、リアルに描いてもドン引きするだけだからちょうどいい塩梅なのか。とはいえ、テーマ的には日本でもSNSで自殺したいというつぶやきがきっかけで起こった殺人事件もあっただけに、あり得ないことではない。それがアランのちょっとしたきっかけから家族を含め、周囲の人たちが変わっていくというのは、ふと自分たちに置き換えてみて、そういう考え方の人がいたならもしかしたら手助けできるかもと思わせてくれる。

作中歌われるミュージカルナンバーは高揚感はあまりないけれどフランスならではの皮肉の効いた歌詞で面白いです。それにしても、お父さん役の名前はミシマなんですが、まさに割腹自殺を図った作家、三島由紀夫から名付けられたのは確か。映画の中でも“ハラキリ”をレクチャーするシーンもあるし。
『イリュージョニスト』
イリュージョニスト
誘拐された孫を救うためにおばあちゃんらが奔走する傑作アニメ「ベルディブ・ランデブー」のシルヴァン・ショメが、敬愛する「ぼくの叔父さんの休暇」「プレイタイム」などの映画監督で俳優のジャック・タチの原作をアニメ化したのが今作。

1950年代後半のヨーロッパを舞台に、旅から旅へと渡り歩く時代遅れな手品を披露する老奇術師、タチシェフ。ある時、スコットランドの離島にある小さな村の小さな酒場でのショウは、田舎町であったためか大歓迎を受け、久しぶりに高揚した気持ちで島を離れるが、船の中には彼を追って酒場で働いていた少女が乗っており、成り行き上、共に旅を始めることに。そして彼女との共同生活をすることになるが・・・。
小津安二郎の名作「浮草」に出てくるような芸人の生き様にも通じる主人公の最後の花火のような煌めきと儚さ。そして貧乏な田舎町の少女が彼によって徐々にレディになっていく様の移ろい。ジャック・タチの映画同様、極力抑えたセリフ、彼が「ぼくの叔父さん」などで演じたユロおじさんまんまの動きで見せてくれます(作中、なんと映画の一場面が出てくる!)。
手描きの味わい、デフォルメしているのに実写のような人間の動き、街並み、全てが極上の大人のアニメ。ラストのビターなラストなのにどこか心が温かくなっている余韻は大人だからこそ味わえる贅沢だと思います。

今回紹介したものは、どれも大人の目線で味わえる作品ばかり。何より深く深く余韻を感じさせてくれるものばかり。11月18日(土)から公開される『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』とともに楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

Banner

関連するポスト

Copyright (C) GAGA Corporation. All Rights Reserved.
GAGA