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はみ出し者たちの〈ボーイ・ミーツ・ガール〉、必要なのは“音楽”だ!

2017.11.24(Fri) | 上原礼子

少年が少女と出会い、恋に落ちる。そんな普遍のラブストーリーは、時間を超えていくつもの名作を生み出してきました。今回はとりわけ、ジョン・キャメロン・ミッチェルが長年温めてきた『パーティで女の子に話しかけるには』のように、従来の価値観からはみ出した“パンク”な者たちの〈ボーイ・ミーツ・ガール〉映画に注目しました。

『パーティで女の子に話しかけるには』ボーイ・ミーツ・ガール×パンク
パーティで女の子に話しかけるには
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督待望の最新作は、『コララインとボタンの魔女』の原作者ニール・ゲイマンの自伝的短編を、独創的で幻想的な世界に押し広げた本作。

舞台は1977年、ロンドンの郊外。パンクに夢中だけれど内気な少年エン(アレックス・シャープ)は、ミステリアスなパーティで美しい少女ザン(エル・ファニング)と出会います。なんと彼女は、遠い惑星から来た女の子。48時間後に地球を離れるという彼女は、エンが語った「パンク」に反応し、「もっとパンクを見せて」と興味津々。2人は、エリザベス女王即位25年に沸く町に繰り出していくのですが…。

エル・ファニングは、ある運命を抱えた宇宙人の美少女がハマリ役。一風変わった方法で愛情表現するさまがキュートです。劇中ではザンの運命に関わるパンクロックを自ら熱唱します。また、ある喪失を抱えた少年エンを演じるのは、史上最年少でトニー賞主演男優賞に輝いたアレックス・シャープ。彼も不思議な魅力がある人で、ポール・マッカートニーに似てる!? と思う瞬間も。

さらに、ニコール・キッドマンがセックス・ピストルズをプロデュースしたマルコム・マクラーレンやヴィヴィアン・ウエストウッドさながら(?)若きパンクロッカーたちのボス的存在に。70年代のリアルなロンドンパンクを知る、アカデミー賞常連のサンディ・パウエルの衣装も刺激たっぷり。

ロンドン発のセックス・ピストルズやザ・クラッシュ、NY発のラモーンズなど当時を代表するパンクバンドに影響を受けた少年が宇宙人の女の子と恋に落ちる、ジャンルレスな〈ボーイ・ミーツ・ガール〉映画であり、文字どおり既成概念をぶち壊すパンクな1本。現実世界への風刺もあり、ほろりとさせられる成長物語でもあります。

◆『パーティで女の子に話しかけるには
12.1(金)公開
(C)COLONY FILMS LIMITED 2016
『ウォールフラワー』ボーイ・ミーツ・ガールדあのころ”ロック
ウォールフラワー
ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラーという実力ある若手俳優たちが競演。原作のスティーブン・チョボスキー自らメガホンをとりました。

小説家志望の少年チャーリー(ローガン・ラーマン)は、高校入学初日からひとりぼっち。卒業まで“壁際”でひっそりとやり過ごそうとします。そんな彼が出会ったのが、陽気なゲイのパトリック(エズラ・ミラー)と美しく奔放なサム(エマ・ワトソン)という兄妹とその仲間たち。彼らとのパーティで「はみ出し者たちの島にようこそ」とチャーリーに語るサム。デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「ComeOnEileen」でノリノリに踊り、デヴィッド・ボウイの「HEROS」を聴きながら思いっきり風を感じるサムに、チャーリーは恋心を抱きますが…。

“壁際の花”から抜け出したかに見えたチャーリーが抱えていた心の傷、喪失感は、自らが思うよりずっと深いものでした。一度壊れかけた彼らの関係を再びつなぐ、ラストの「HEROS」に感涙です。
『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』ボーイ・ミーツ・ガール×レトロ&ポップロック
ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール 通常版 DVD
スコットランドの人気ポップロックバンド「ベル&セバスチャン」のスチュアート・マードックが、自身のソロアルバムを基に監督・脚本・製作・音楽を務めた青春ミュージカル。

拒食症とうつのため、入院中のイヴ(エミリー・ブラウニング)は、ある日、病院を抜け出して向かったライブハウスで冴えない少年ジェームズ(オリー・アレクサンデル)と出会います。やがて彼の音楽仲間キャシー(ハンナ・マリー)も交え、一緒に音楽を作り始めることに。未来に希望を持てないイヴに、「CDを出せれば十分」と強がるジェームズは友達以上恋人未満の関係から、いま1歩進むことができず…。

エレクトロニカバンド「イヤーズ&イヤーズ」のボーカル、オリー・アレクサンデルはそんなジェームズを瑞々しく演じます。イヴ役のエミリー・ブラウニングはレトロファッションも相まって、とても儚げ。それこそ“宇宙人”のような現実離れした透明感を見せます。
『シング・ストリート 未来へのうた』ボーイ・ミーツ・ガール×手作りソング
シング・ストリート 未来へのうた
はじまりのうた『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニーが、不況にあえぐ80年代の故郷ダブリンを舞台に自身の体験を反映させた半自伝的な作品。

父親の失業のため、荒れた公立学校に転校させられたコナー。両親は離婚寸前。音楽狂の兄は挫折して引きこもり。ある日、街で見かけたラフィーナにひと目ぼれしたコナーは、「僕のバンドのPVに出ない?」と声をかけ、慌ててバンドを組むことに。ラフィーナに惹かれながら、PV作り、曲作りに精を出していきますが…。

ある世代には絶対的にハマる80年代ブリティッシュロックもさることながら、傷ついたラフィーナの心を優しく包み込み、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の1シーンのようにキュンとさせるのは、コナーたちのオリジナル曲の数々。コナー役のフェルディア・ウォルシュ=ピーロとサイモン役のマーク・マッケンナがゼロから曲を生み出していくシーンは素敵です。
『ハートビート』ボーイ・ミーツ・ガール×ダンス&音楽
ハートビート
元ブロードウェイ俳優の映画監督と元ダンサーの脚本家夫妻が創りあげた青春エンターテイメント。ロシアの名門バレエ団出身で、本作で女優デビューしたキーナン・カンパ、ミュージシャンでもある英国の新星ニコラス・ガリツィンが主演。さらに英国ロイヤル・バレエ学校出身でラ・ラ・ランドにも出演したソノヤ・ミズノが、本領発揮のダンスで魅せます。

NYの名門バレエ学校に入学したルビーが、ある日出会ったのは、地下鉄で演奏する英国人バイオリニストのジョニー。しかし、ジョニーは大切なバイオリンを盗まれた上、グリーンカード詐欺に。また、伸び悩むルビーは、ルームメイトのジャジーと共に奨学金資格はく奪のピンチ。崖っぷちの2人は、ヒップホップダンスチームと組んで“弦楽器&ダンスコンクール”で優勝を目指しますが…。

実力もあり、夢も野心もあるのにうまくいかない。そんな2人が、それぞれが愛するダンスと音楽の力を信じて成長していく姿が実に爽快。NYの地下鉄で唐突に始まるヒップホップバトルも必見です。

エル・ファニングとパンクといえば、マイク・ミルズ監督の『20センチュリー・ウーマン』(近日配信)も思い起こされます。改めてふり返ると、〈ボーイ・ミーツ・ガール〉映画は音楽と実に好相性。また、いずれも、今この「瞬間」を精一杯生きている若者たちの刹那と、それに相反した無限の可能性を感じさせるものばかり。彼らがはみ出し者であればあるほど、愛おしいのです。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録と、映画を通じて悲嘆を癒やす試み【映画でグリーフワーク】をFacebookにて随時更新中。

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