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こんな時代だからこそ!「戦争、ダメ、絶対」と思う映画5選

2017.12.06(Wed) | 足立美由紀

近年ナチスやヒトラーをテーマにした映画が相次ぎ公開されています。その理由については、戦後70年の節目を迎えたからだ~とか、新たな脅威に対して警鐘を鳴らしているのだ~とか諸説あるよう。映画に込められた平和への願い、しかと受けとめたいですね。こんな時代だからこそ、同じ悲劇を繰り返さないために。今回はさまざまな立場の目線で描かれた「戦争、ダメ、絶対」を痛感する映画を5本紹介します。

食卓を預かるおっとり主婦の目線で見た戦争とは?『この世界の片隅に』
この世界の片隅に
広島で暮らす主婦が戦争に巻き込まれていく姿を追った、落涙必至のアニメーション。こうの史代による繊細な原作マンガと、コトリンゴによるしみじみと抒情的な楽曲が絶妙にマッチした切ない人間ドラマです。クラウドファンディングで制作費を集めたことでも話題になった本作は、2016年度の映画賞を軒並み受賞。脅威のロングランヒットとなりました。

1944年、広島。18歳の少女すずは、軍港の街・呉にお嫁にやってきます。見知らぬ土地、出戻りの義姉による冷たい態度、そして激しくなっていく戦況……。配給物資が乏しくなる中でも、畑を耕し野草を積んで懸命に日々の暮らしを重ねていくすずたちに、容赦なく1945年の夏が訪れて。

イラストが得意で(かなり)おっとりしている、すず。そんな彼女に優しい夫は心癒されますが、悪意の塊のような爆撃によって、すずたちのささやかな幸せが木っ端みじんに吹き飛びます。すずの声を務めたのは、本作がアニメ映画初主演となる女優・のん。「ゆがんどるのはウチだけじゃ、左手で書いた絵みたいに」……純真だった少女が、痛みと苦しみを経験し、思わずこぼれた一言が胸に刺さります。ほのぼの系アニメからあふれ出る、悲痛な真実の凄みに背筋がシャンとなる珠玉の感動作です。
戦争の最前線に置き去りとなった兵士目線で語る『野火』
野火
世界に熱狂的なファンを持つ日本の鬼才・塚本晋也が、監督・製作・脚本・撮影・編集・主演の6役を務めた魂を揺さぶるドラマ。学生時代に読んで感銘を受けたという大岡昇平の自伝的小説を元に、20数年かけて製作したという渾身の戦争アンチテーゼ映画です。

第二次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。結核を患い、部隊から離脱した田村一等兵(塚本)は、足に怪我を負った安田(リリー・フランキー)やその世話をする永松(森優作)と合流するも、極限状況の中で精神的に追い詰められ……。

敵の一斉射撃を受けて、ちぎれる手足やあふれ出る鮮血。熱帯のジャングルで腐敗していく大量の死体という刺激的な映像の数々が、戦争を知らない世代に否応なくその悲惨さを追体験させます。戦争体験者が高齢となっていく現状を憂慮する塚本監督は、本作で「戦争体験者の声を引き継いでいく」とコメント。ファンタジーではない歴史的リアルな暴力が全編を支配する本作、心してご鑑賞ください。
正義と人命、究極の選択を迫られた兵士目線で語る戦争『ローン・サバイバー』
ローン・サバイバー
そして本作も戦場体験をした兵士の自伝を元にした作品です。アメリカ海軍の特殊部隊ネイビー・シールズ史上、最大の惨事といわれる「レッド・ウイング作戦」を描いたサバイバル・アクション。唯一の生還者マーカス・ラトレルをマーク・ウォールバーグが演じ、その迫力満点のサウンドは第86回アカデミー賞(音響編集賞、録音賞)にノミネートされました。

2005年6月。タリバンの幹部暗殺作戦のため、4人のネイビー・シールズがアフガニスタンの山岳地帯で偵察活動に従事します。ヤギをつれた地元住民に見つかった彼らは、激しい論争の末、ヤギ飼いたちを解放して作戦を中止。しかし駆け付けたタリバン兵に囲まれてしまい……。

苛烈を極めた攻防戦でたった一人生き残ったマーカスは、“敵から逃げる者を守れ”という掟に従ったアフガンの村人に助けられます。救出にきた兵士含め最終的に計19名が命を落としたと伝えられるこの作戦の映画化に際し、マーカス本人がプロモーションのため来日。「(ヤギ飼いを)解放したことは、後悔していない」と語っています。本作を観れば、戦争という異常空間の中で正義を貫くことの難しさが分かるはず。
法を破り仲間を助けた兵士一家の目線でつづる『ある戦争』
ある戦争
一方でこちらは『ローン・サバイバー』とは逆の選択をした作品。仲間を助けるために法を破った兵士の葛藤と家族の絆を描き、第88回アカデミー賞(外国語映画賞)にノミネートされたデンマーク映画です。『偽りなき者』の脚本で知られるトビアス・リンホルムがメガホンをとり、『ゴースト・イン・ザ・シェル』で“少佐”を補佐するバトー役を務めたデンマーク出身の俳優ピルウ・アスベックが苦悩する主人公クラウスに扮しています。

アフガニスタン。デンマーク治安部隊が、タリバンからの保護を求めた民家を訪れている最中、遠方から襲撃を受けます。部隊長クラウス(アスベック)は、瀕死の兵士を助けるため空爆を要請。無事帰還したのも束の間、民間人11人を犠牲にしたことで軍法会議にかけられて。

デンマークに強制帰国されたクラウスは、罪を認めようとするのですが。3人の子供の将来を心配する妻マリアの悲痛な叫びに胸が苦しくなります。遠く離れた異国の地で、極限状態に置かれた兵士たちのギリギリの判断を果たして誰が裁くことができるのか……。これまで社会派の脚本を手掛けてきたリンホルム監督による本作は、社会的正義と個人の正義がぶつかり合う、心揺さぶる戦争映画です。
武器商人の目線から語る戦争&紛争『ロード・オブ・ウォー』
ロード・オブ・ウォー
『ガタカ』のアンドリュー・ニコル監督が、武器ビジネスの裏表を徹底的にリサーチしてつむいだ戦争アクション。“ロード・オブ・ウォー(戦争の支配者)”と呼ばれた武器商人をニコラス・ケイジ、彼に人生を狂わされる弟をジャレット・レトが好演しています。

ウクライナからユダヤ人を装いアメリカに移民してきたオルロフ一家のユーリー(ケイジ)は、弟のヴィタリー(レト)を相棒に武器ビジネスを始めます。ソ連が崩壊し、裏ルートでさまざまな軍需品を手に入れた彼は、リベリアの大統領から重用され、莫大な富を築くのですが。

薬物中毒から更生するも、再び兄により裏稼業に引き込まれるヴィタリー。ニコラス・ケイジの軽妙な語り口とテンポの良さが小気味良い本作で、ピリッと刺激を与えてくれるのは演技派俳優ジャレット・レトの存在です。加えて、前半はトレードマークの下がり眉全開で人間味たっぷりだったニコラス扮するユーリーが、後半では感情を失ったマシーンのように無表情になる不気味さは必見。ニコル監督の皮肉が効いた、驚愕のストーリーをぜひ。

ご紹介した5作品はいかがだったでしょうか。12月は『エスケイプ・フロム・イラク』(公開中)、『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』(15日公開)、『ヒトラーに屈しなかった国王』(16日公開)など、戦争をテーマに据えた新作映画が公開予定。併せてこちらもどうぞ。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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