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見逃せない!2017年を代表するミニシアター映画の名作たち[後編]

2017.12.27(Wed) | 松村知恵美

2017年上半期にミニシアターランキングで上位に入った作品を紹介する特集の後編となる本作。前編では、その作品を手がけた監督をフィーチャーしてご紹介しましたが、後編となる本稿では、作品ごとにご紹介いたします。2017年度のミニシアターを盛り上げたこれらの作品、どれも年末年始にじっくり観るのにぴったりな、見応えのある作品ばかりです。

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一人の男の信念がナチスの大物戦犯を追い詰める『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』
アイヒマンを追え
第二次世界大戦時に600万人ものユダヤ人を強制収容所へ送りホロコーストの中心的役割を追った人物、アドルフ・アイヒマン。この映画『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』は、偽名を使ってアルゼンチンで逃亡生活を送っていたアイヒマンを追い詰めたフリッツ・バウアー検事長の姿を描いています。

ヒトラー暗殺、13分の誤算、『ブリッジ・オブ・スパイ』などで知られるブルクハルト・クラウスナーが演じるこのバウアー検事長、一見したところ、ちょっと情けない感じのダメおじさん。しかし、アイヒマン逮捕のためならば国家反逆罪も恐れず、モサド(イスラエルの諜報機関)への情報提供を行います。そのバウアーの正義と信念が、アイヒマンを追い詰めたのです。

しかし、バウアーの戦いはそう簡単なものではありません。ドイツ国内に巣食うナチス残党の妨害、モサドとの頭脳戦…。バウアーは自らの意志を貫き、迫り来る危機に立ち向かっていきます。ラース・クラウメ監督は、このバウアーの戦いをサスペンスフルに描き出し、ドイツ映画賞で作品賞、監督賞など6冠に輝きました。歴史を動かした男の信念を描くこの映画、仕事納めも済んだ年末にでも、ゆっくり噛みしめたい映画です。
何もない極限の地で謎の襲撃者から逃げまくる!『ノー・エスケープ 自由への国境』
ノー・エスケープ
アメリカ大統領ドナルド・トランプが「メキシコ国境に壁を建設し、不法移民、違法薬物・人身の売買、テロ行為を未然に防ぐ」と宣言したのが2017年1月。この映画『ノー・エスケープ 自由への国境』は、そんな2017年の年末に観るのにふさわしい一本と言えるかもしれません。

ガエル・ガルシア・ベルナル演じるこの映画の主人公・モイセスは、不法移民。ブローカーにお金を払い、メキシコからアメリカへトラックで不法入国しようとしていたところ、トラックが故障。歩いてアメリカへ入ることとなります。そんなモイセスたちを襲ってくるのが、ジェフリー・ディーン・モーガン演じる謎の男・サム。猟犬のトラッカーとともに、不法入国者たちをライフルで撃ち殺していきます。モイセスたちは、サムは誰なのか、なぜ狙われるのかもわからないままに、何もない砂漠を逃げることになるのです。

この映画の監督を務めたのはアルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』監督)の息子であるホナス・キュアロン。父譲りの映像センスと演出術で、何もない極限の状態でのサバイバルの模様を緊迫感たっぷりに描き出します。不法移民、密入国といった現実に起きている社会問題を描きつつも、しっかりとエンターテインメント性を持たせているあたりもさすがです。
異国の地での王様へのプレゼンは成功するか?『王様のためのホログラム』
王様のためのホログラム
不思議なタイトルのこの作品。ですが、劇中にほとんど王様は出てきません。
トム・ハンクス演じるこの映画の主人公、アラン・クレイは、大手自転車メーカーの重役を解任され、サウジアラビア国王の甥と友人であることを買われ、なんとかIT企業に就職した人物。甥の友人として、国王に3Dホログラムのテレビ会議システムを売り込むため、サウジアラビアへ出張に行くことになります。

とはいえ、“甥の友人”なんて肩書きが王に通じるわけもなく…。アランは何もかも勝手の違うサウジアラビアで悪戦苦闘することとなります。アポイントを取っても取っても会ってくれない重要人物。まったく現れない国王。オフィスはテントでエアコンも効かず、IT企業にとって何よりも重要なWi-Fi環境され用意されていない。しまいにはアランは、精神的にも肉体的にも限界を迎え、倒れてしまいます。

トム・ハンクスは、そんな過酷な状況のなかでミッションを遂行しようと奮闘するアランを、軽やかに肩の力を抜いて演じています。見知らぬ地で迷っても、いつの間にか周囲の人にも助けられ、事態が好転していく…。そんな中年男の人生再生物語、60歳を超えたトム・ハンクスが演じるからこそ、説得力がある一作と言えるでしょう。新しい環境にどっぷり身を浸してみれば、いつのまにかそこがオアシスに変わるのかもしれません。

年明け1本目に観る映画にもぴったりな、心が軽くなるような大人の人生賛歌です。
韓国の山間の村で起こる猟奇殺人事件。“謎の男”國村隼の正体は…?『哭声/コクソン』
哭声/コクソン
韓国の山間にある田舎の村、谷城(コクソン)で起こる猟奇殺人事件と、その事件を調べる警察官の姿を描いた韓国映画『哭声/コクソン』。日本人俳優の國村隼が出演し、韓国でもっとも権威のある映画賞「青龍映画賞」で男優助演賞を受賞したことでも話題になりました。

『チェイサー』哀しき獣などを手がけたナ・ホンジン監督によるこの作品、とにかく得体の知れない恐怖に圧倒されます。殺人事件のグロテスクさ、目が赤く、肌がただれ、ゾンビのように暴れる犯人たちの異様さ、國村隼演じる“謎の男”の存在、事件を見ていたという目撃者の女性の得体のしれなさ、悪霊祓いに雇われた祈祷師のうさんくささ…。すべてが異様で、何が真実で何が悪なのか、わからなくなっていくのです。

特に、日本人としては、滝にうたれる國村隼、鹿の生肉に食らいつく國村隼、怪しい祈祷をする國村隼、血まみれで赤い目、ふんどし姿の國村隼、とにかく國村隼に釘付けになってしまいます。彼はまさに映画のキーパーソンで、彼の存在をどう解釈するかで、映画のテーマが変わってくると言えるでしょう。なかなかにハードな映画なので、年明けから数日後、社会復帰前のショック療法として見るのにふさわしい映画だと思います。
自らの信じる道のために闘うカンフー・マスター『イップ・マン 継承』
イップ・マン継承
ブルース・リーの師匠であり“詠春拳”の達人として知られる実在のカンフー・マスター、イップ・マンを、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のドニー・イェンが演じる「イップ・マン」シリーズ第三弾となる『イップ・マン 継承』。近代化に揺れる1959年の香港を舞台に、“詠春拳”の正統を巡って戦う男たちを描いています。

この「イップ・マン」シリーズ、実在の人物を描いてはいますが、ストーリーはほぼオリジナル。また、シリーズ第三弾ではあるものの、これまでの作品を観ていなくても十分理解できる、親切な作りになっています。この映画の売りは、何と言ってもアクション。現代最高峰のカンフー・アクション・スターであるドニー・イェンがガチのアクションを見せてくれます。元ボクシング世界ヘビー級王者であるマイク・タイソンが登場し、ボクシングVSカンフーの対決を見せてくれるかと思えば、ラストバトルの詠春拳VS詠春拳という同流対決もすさまじい! アクション好き、カンフー好きにはたまらない戦いを見せてくれます。

また、自分の流儀を重んじ、信念に生きる男、イップ・マンの生き様も心に残るこの作品。2018年の仕事始めの前に観れば、やる気がみなぎってくること請け合いです。

偶然ながら、今回ピックアップした5作品は、自らの信念に従って生き困難に挑んで道を切り拓いていく男性が主人公(もしくは重要な登場人物)となっています。昨年の見逃せない!2016年を代表するミニシアター映画の名作たち[前編]でご紹介した映画と比べると、ずいぶん作品のタッチが違ってきているのを感じます。数年前までは、ミニシアターと言えば女性客の方が多いと言われており、女性が主人公の映画がランキング上位に入ることが多かったように思うのですが…、ミニシアターの客層や支持される作品なども変わってきたのかもしれません。ミニシアターで公開される映画も、社会問題を描くヘビーな作品も増えてきているように思います。ミニシアターランキングには、その時代時代の世相が如実に反映していると言えるかもしれませんね。

見逃せない!2017年を代表するミニシアター映画の名作たち[前編]

Writer | 松村知恵美

家と映画館(試写室)と取材先と酒場を往復する毎日を送る映画ライター、WEBディレクター。2001年から約8年、映画情報サイトの編集者をやってました。2009年に独立し、フリーランスに。ライターとしての仕事の他、Webディレクションなど、もろもろお仕事させていただいています。

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