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「嘘八百」やけど嘘はつきません、大阪舞台のリアルな映画5本

2018.01.03(Wed) | 仲谷暢之

1月5日(金)公開の新春お宝コメディ『嘘八百』公開を記念して、今回は青山シアターの中から、大阪が舞台の印象的な映画をご紹介。『嘘八百』とともに楽しんでほしいです。

嘘八百
嘘八百
1月5日(金曜日)公開の映画「嘘八百」は、大阪・堺を舞台に、古物商の則夫がひょんなことから陶芸家の佐輔と知り合い、二人の前に突然現れた幻の茶器と呼ばれる“利休の茶碗”を巡って、則夫と佐輔の家族、大御所の鑑定士、骨董店社長、文化庁の文化財担当、博物館の学芸員などなどを巻き込んで一攫千金を狙って騙し合いを企らむというストーリー。
戦国時代に実在した京都の花僧、池坊専永を描いたエンタテインメント時代劇花戦さでは、織田信長を演じた中井貴一が、東京から大阪に移り住んで暗躍する怪しい古物商に。そして前田利家を演じた佐々木蔵之介が闇を抱える陶芸家に扮し、W主演で再び共演。コテコテで泥臭いバディムービーとして抱腹絶倒の熱演を繰り広げています。
古今東西、性格の違う者同士が活躍するバディムービーはありますが、この「嘘八百」は正統派バディムービーとして必ず楽しめるはず。
舞台となった堺は、古くは“東洋のベニス”と呼ばれた貿易港として発展した場所。さらには仁徳天皇陵があり、千利休の生誕の地、そんな歴史ある町でロケされた今作は地元をあげての大協力体制だったそうで、実際、堺をよく知っている僕も見ていてワクワク、さらには地元の人ならさらに味わい深く楽しめることができるコアな店や風景が出てくるのが面白い。
そんな堺にあたかもずっといたような、近藤正臣、芦屋小雁、坂田利夫、木下ほうか、塚地武雅、桂雀々、友近、森川葵、前野朋哉、堀内敬子、寺田農と言ったクセが強い面々が中井貴一と佐々木蔵之介に絡む、絡む!
映画会社の宣伝マンに聞くと、特に博物館の学芸員役の塚地さんと実際の学芸員さんはほぼ面識がなかったにもかかわらず、堺愛溢れる熱弁も映画以上の熱量でびっくりしたとか。
16日間という短期間での撮影の中で、ピリピリするどころか、アドリブが飛び交う現場でもあったそうで、確かにそういう雰囲気が映画からも滲み出ていてあぁ大阪らしいなぁとニンマリ。関西人には嬉しく、関西以外の人には新鮮な今作をぜひ新年早々楽しんでほしい次第。ということで、「嘘八百」の公開を記念して、今回は青山シアターの中から、大阪が舞台の印象的な映画をご紹介。「嘘八百」とともに楽しんでほしいです。

『嘘八百』 2018年1月5日(金)公開
©2018「嘘八百」製作委員会
後妻業の女
後妻業の女
黒川博行の原作小説「後妻業」を愛の流刑地や数々のテレビドラマを監督してきたベテラン、鶴橋康夫が大竹しのぶと豊川悦司を迎えて、資産家の老人男性を狙って後妻の座に就き、多額の財産をせしめる後妻業の女を描いたブラックコメディ。
タイトルから察するように、故・伊丹十三監督の「マルサの女」など、◯◯の女シリーズを意識してるんだろうなぁという雰囲気が全編に漂っています。とはいえ、大阪を舞台にしていることで、そのどぎつさはまた全然違うクラス。
金に目の眩んだ大竹しのぶ扮する小夜子や、豊川悦司演じる裏で糸引く結婚相談所長、柏木の凄まじいまでの“業”のグルーヴ感がたまりません。さらにそのほとんどが“欲”を満たすために行動しているのでタチが悪い。もひとつタチが悪いのは、後妻業の女、大竹しのぶが主人公ということで悪いことをしているのに、こんなオバハンやったら殺されてもしょうがないなぁってちょっとでも思えてしまうしまうところ。
以前、廃村で男を殺して生きる母と娘を描いた新藤兼人監督の「ふくろう」という映画で演じた母親にも通じるしたたかさをしっかり演じ、さすがの存在感。そんな彼女に負けるものかと父を殺され、遺産まで取られる娘を演じた尾野真千子は、この映画の“正義”として存在。見ているものの一服の清涼剤であるかのよう。ゆえに焼肉屋での大竹との長回しの取っ組み合いの喧嘩では思わず応援したくなります。
ラストに向けての悪人たちの末路には、あらまぁという展開も無きにしも非ずですが、それも大竹しのぶやったらしゃあないかと思えるのは彼女の女優としての“業”のおかげかもしれません。 ちなみに今作でも「嘘八百」にも登場するホテル・アゴーラ・リージェンシー堺も登場するのでどこが使われているのかチェックするのもいいかも。
セトウツミ
セトウツミ
「別冊少年チャンピオン」にて2017年の12月まで連載していた此元和津也氏による漫画の映画化。放課後、男子高校生の内海が塾に行くまでの時間、一緒に時間を過ごす同級生の瀬戸との他愛のない会話で、なんてことない日常を浮かび上がらせた物語。6話のエピソードと他の視点からなる展開で、75分という上映時間が嬉しいです。
会話劇なだけに単調になるのかなと思いきや、映画としてちゃんと昇華させた監督の手腕にあっぱれですが、やはり瀬戸を演じた菅田将暉と内海を演じた池松壮亮の素晴らしさに尽きます。
大阪の高校生が話す会話のゆるさ、だるさ、下品さ、面白さ、素直さ、可愛さが二人に凝縮されてます。菅田将暉は大阪生まれであるので、そのまんまっちゃあ、そのまんまなのですが、のちに「火花」で漫才師役を演じることを思うと、瀬戸がのちに火花の徳永に繋がっていような感覚に陥ります。そして池松壮亮が、福岡出身にもかかわらず大阪弁のうまさに驚きました。これはかつて「ライオンキング」でヤングシンバで培ったリズム感の良さからくるのかなと勘ぐってしまうほど、違和感なし。とにかく関西人としては、関西弁を喋られてイントネーションが違うとどうしてもモゾモゾ、モヤモヤしてしまうので、今作は合格!
ちなみに瀬戸と内海の定位置である川沿いの階段は、堺にあるザビエル公園近くの土居川沿いで、泉陽高校も登場してます。
寝ずの番
寝ずの番
六代目笑福亭松鶴夫婦をモデルにした中島らも原作の短編小説を、俳優の津川雅彦がマキノ雅彦名義で監督した映画第一作目。
笑満亭橋鶴師匠が亡くなり、その弟子が亡くなり、さらに師匠のおかみさんがなくなって、それぞれの通夜の席で語られる様々なエピソード。最終的には通夜に現れたある人物との下ネタ三味線合戦が繰り広げられるというストーリー。
この映画、個人的に関西での宣伝をお手伝いしたんですが、ノベルティとして「寝ずの番」をさらに知ってもらうためのミニパンフレットを制作。が、内容があまりにも下ネタを散りばめすぎて、マキノ監督からストップがかかってしまい、結局配布されなかったという経験が。今もこの映画を見るとその時のことを思い出して、妙に緊張してしまいます。
とはいえ、原作も映画も下ネタだらけ、大人のための艶笑ファンタジーとしては絶品なので、実は密かにどこかにまだ残っているかもしれない刷り上がったミニパンフレットを配布できたらと思ってたりするのですが・・・。
「嘘八百」の飄々さにも通じる中井貴一が、今作では狂言回し的でもある主人公の落語家に扮し、上方落語家の世界を我々に覗かせてくれてます。公開当時としては大胆な木村佳乃の演技(今の彼女が持っているコメディエンヌ要素が発揮された最初の作品かも)や、師匠のおかみさん役の富司純子の惚れ惚れするあだっぽさ、そして後半登場する実はラスボス的存在で、三味線を駆使しかつてお座敷芸で繰り広げられたド下ネタ炸裂のチョンコ節合戦を、中井貴一相手に繰り広げる堺正章の存在感(関西弁は残念ながらもうふたつくらいのデキだけど)にマキノ監督の映画の贅沢な時代を知る息吹を感じます。
ロケ地としてはほぼ通夜の席なのでないのですが、上方落語界のなんとも言えないいなたさと猥雑さ、艶がたっぷりするぐらい堪能できる作品です。
GANTZ:O
GANTZO
“GANTZ”によって黒い球体が鎮座する謎の部屋に集められた死んだはずの人間たちと、謎の星人たちとの戦いを描いた奥浩哉の人気漫画が、シリーズの中でも人気のぬらりひょんが登場する“大阪編”をフルCGアニメーションとして映画化。
というわけで、二宮和也主演の実写化を見て、それなりの残念感を抱いてたのでどうなることやらと、それほど期待せずに見たら、これが面白い!面白すぎる!
ひょんなことから謎の部屋に集められた、高校生の加藤は、その部屋にいたレイカ、鈴木のおじさんらとともにぬらりひょんを倒せという指示で大阪に転送されることに。そこで見たものはまさに阿鼻叫喚の世界。水木しげるの漫画に出てくるような妖怪たちが道頓堀や心斎橋(映画では違う名前だけど)に百鬼夜行のごとく暴れまくります。そこに現れたのが妖怪たちを次々と仕留める大阪チームの面々。そんな彼らとなんだかんだとぬらりひょんと戦うというストーリー。
もうあの実写化はなかったことにしたいと思えるフルCGアニメの圧倒的なクオリティの高さに驚き。そして原作にもあった過激なシーンがちゃんと描かれているし、戦いの舞台となる道頓堀や心斎橋のディテールの細かさ。もちろん実際のお店などは諸事情で変更されているけれど、なんとなくグリコの看板であり、心斎橋筋商店街であったり、かに道楽であったりと、あの場所に行ったことのある人なら「うわぁ」と声を上げてしまいそうなリアルさ。そんな観光名所が、不気味な妖怪たちの気持ち悪さと凶悪さで破壊の限りを尽くされるのもなんとも言えない感情の高まりを感じてしまいます。
そして大阪チームのキャラの名前!岡八郎、島木譲二、室谷信雄、木村進、平参平、原哲男という往年の吉本新喜劇の役者たちの名前をそのまんま使っている大胆さに加えて、彼らを吹き替えているのがケンドーコバヤシとレイザーラモンHGとRGで、そのハマりっぷりには驚愕!見て損なしの作品です。

「嘘八百」を軸に5本の大阪が印象的な映画を紹介しましたが、そのほかにもプリンセス・トヨトミ」「血と骨」「ゴジラの逆襲」「ボックス!などたくさん青山シアターにあるので大阪の映画をもっと身近に見ていただいて大阪に足を運んでもらえってロケ地巡りすればさらに楽しめるのではないでしょうか。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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