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私は負けない…窮地から大逆転!力強い女性たちの映画5選

2018.01.10(Wed) | 上原礼子

本年度ゴールデン・グローブ賞は監督賞のノミネート発表時、『ワンダーウーマン』で女性監督作品史上最高の興収を記録したパティ・ジェンキンスや、高評価を得ている『デトロイト』のキャスリン・ビグロー、カンヌ監督賞の『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』ソフィア・コッポラらの名前がなかったことが指摘されました。また、2017年「世界で最も稼いだ女優」1位のエマ・ストーンと、同・俳優版1位のマーク・ウォールバーグとの収入差には実に2.5倍もの開きがあるといいます。そういった不均衡が先に立ち、超大物プロデューサーやオスカー俳優によるセクハラ・スキャンダルに揺れている映画界ですが、映画の中には、どんなときでも立ち上がり、前を向こうとする女性たちが力強く存在しています。今だからこそ余計に胸に迫る、そんな5作品をピックアップ。

『裸足の季節』野生馬のように輝くトルコ5人姉妹の反逆
裸足の季節
“かしましい”という漢字は、女が3つと書きます。女が3人も揃えば、賑やかでやかましいもの。ましてや5人姉妹となれば、なおさらです。本作は、トルコ最大の都市イスタンブールから1000kmも離れた小さな山あいの村に住む、ある5人姉妹の物語。彼女たちは10年前に両親を亡くし、古い慣習と封建的な思想が色濃く残る村で祖母と叔父と暮らしてきましたが、あることがきっかけで一切の外出を禁じられ、パソコン、電話、洋服に化粧品など“不埒”なものを取り上げられてしまいます。

13歳の末っ子ラーレは、家に籠もりっきりで料理や裁縫を仕込まれる自分たちの状況を“良妻育成工場”と揶揄しますが、青春の自由を奪われた少女たちは、時折、部屋の窓から抜け出して抵抗を見せることも。しかし、やがては長女から順に、結婚させられていきます。

前半の“かしましさ”が懐かしくなるほどに、輝いていた5人姉妹の生活は変容していき、やがて衝撃的な展開を迎えます。その中で、姉たちの悔しさや悲しみをつぶさに見ていたラーレは、ある計画を立てます。「このままでは、だめだ」と行動を起こすのです。原題の『Mustang』とは野生馬のことですが、その美しくも荒々しい、たてがみのような長い栗髪を持つラーレたちのまぶしさ、力強さに拍手を送りたくなるのです。
『ジェーン』ナタリー・ポートマン渾身の西部劇
ジェーン
ハリウッドにおける未映画化の優秀脚本、いわゆる“ブラックリスト”の脚本にほれ込んだナタリー・ポートマンが製作・主演。西部開拓の時代に翻弄されながらも、守るべき者のために人生を切り開いていく女性の物語で、監督の交代やキャストの降板など紆余曲折があったことも話題となりました。

ある日、何者かに撃たれながらも、命からがら逃げ帰ってきた夫。その相手は悪名高きビショップ。彼の恐ろしさを知るジェーンは、瀕死の夫と愛する娘を守るため、わらにもすがる思いで南北戦争の英雄でかつての恋人ダンに助けを求め、自らも銃を取って立ち上がります。迫る敵を前に、徐々に明らかになるそれぞれの過去、引き裂かれた思い、そして真実。

この時代、伴侶を失った行くあてのない女性の辿り着く先は、1つしかありません…。ドン底にいたときに助けてくれた夫や、窮地のときに力を貸してくれたかつて愛した人、そして娘のために、ジェーンは戦います。キャスティングが難航した悪役ビショップをユアン・マクレガーが怪演し、元恋人役のラビング 愛という名のふたりジョエル・エドガートンが脚本にも関わり、役柄同様に援護します。
『タイピスト!』女にも、絶対に負けられない闘いがある!
タイピスト!
最強のふたりなどと同様、フランス映画祭・観客賞を受賞しスマッシュヒットとなった本作は、1950年代のレトロポップな世界が魅力のフレンチ・エンターテイメント。描かれるのは、当時、女性の憧れの職業だった秘書になるため、唯一の特技“タイプライターの早打ち”を磨く田舎町出身のローズの奮闘記。

家を出て、めでたく保険会社に採用された彼女は、経営者のルイから「タイプライター早打ち大会」への出場を勧められます。彼女の才能を見抜いたルイの指導のもと、地方大会から全国大会へと勝ち進み、ついにはニューヨークでの世界大会へ! やがて、鬼コーチ・ルイとの間にも恋が芽生え…。

日本でも“職業婦人”の代表格として、NHK朝ドラ「とと姉ちゃん」に登場していたタイピスト。そのたった1つの才能を見事に開花させていくローズの姿や、意外にも(?)ハラハラドキドキで見守る早打ち大会は、まるでスポーツ観戦のように興奮必至。負けず嫌いなローズの性格を分かっているからこその、ロマン・デュリス演じるルイのツンデレ、自分を見失いかけた時に父親から届けられる“原点”にもしびれます。
『あなたを抱きしめる日まで』ジュディ・デンチが愛と悲しみを抱えた母を熱演
あなたを抱きしめる日まで
アイルランド人の主婦フィロミナが50年前に生き別れた息子を捜し続け、思いもよらない形で真実に辿りついた実話を、ジュディ・デンチ主演で描きます。冒頭、フィロミナが思いを馳せるのは、1952年のアイルランド。10代で未婚のまま妊娠した彼女は修道院に身を預けられます。やがて男の子を出産しますが、3年後、目の前で養子に出されてしまうのでした。

その息子については、元BBCのジャーナリスト・マーティンの協力もあり、やがて判明するのですが、そこから母と子がつながっていくまでの道程が実は重要なポイント。「毎日その幸せを願ってきた」そんな悲しみと罪の意識と、深い愛を抱えた信仰のあつい母の姿を、デンチが品のある佇まいで微細な表情の変化も含めて見事に演じます。

婚前交渉や婚外交渉、あるいはレイプなどで身ごもった女性たちを預かる修道院。劇中でも言及されますが、映画『マグダレンの祈り』も思い起こされます。重たく、胸が押しつぶされるような喪失感を中和してくれるのは、話し好きなフィロミナのシニカルなおばさんジョーク。それでも生き抜いてきた女性の明るさと、憎しみには支配されない心だったのです。
『恋愛だけじゃダメかしら?』豪華キャストで描く妊娠・出産の悲喜こもごも
恋愛だけじゃダメかしら
キャメロン・ディアス、ジェニファー・ロペスを筆頭に、豪華な顔ぶれのプレママ(ママになる前の、ママたち)とプレパパにより、妊婦のバイブルといわれる世界的ベストセラー書籍がオムニバス・コメディに。

例えば、ダイエット番組の人気トレーナー、ジュールズ(キャメロン・ディアス)はセレブダンス選手権で見事優勝、と同時におめでたが判明! 相手はダンスでコンビを組んだエヴァン(マシュー・モリソン)。ところが次第に、出産や育児方針をめぐって2人は対立するように。確かに妊娠・出産はライフスタイルの変化をもたらし、カップル間の価値観、意識の違いも浮き彫りにします。

また、エリザベス・バンクス演じる絵本とベビー用品専門店のオーナーが、お腹の張りや頻尿、にきび、むくみに、不安感やイライラといった妊婦特有のアレコレを体現しながら、人生最大の絶不調になっていく様子は共感度が高いかもしれません。そして注目は、クリス・ロックをはじめとする毎週土曜日に公園に集まるイクメンクラブ。抱っこ紐姿のパパたちの大らかトークも、実に興味深いものです。笑いの後にはホロリとさせられ、妊娠・出産は幸せのゴールではなく、いよいよ家族が始まるスタート地点であることを伝えてくれます。

現代トルコで今なお根強い因習に打ち勝つ少女たちから、西部劇、マタニティ・コメディまで、さまざまなジャンルが揃いました。ここには挙げませんでしたが、イザベル・ユペール姉様のフランス語で“女性”そのものをタイトルにしたエル ELLEもオススメ。自分らしく、自由に生きようとする精神、窮地のときでも忘れない慈しみやユーモア。その裏側にある、乗り越えてきた差別や偏見、不平等さを、改めて映画の中から見つめてみませんか。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録と、映画を通じて悲嘆を癒やす試み【映画でグリーフワーク】をFacebookにて随時更新中。

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