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往年の名女優から劇中音楽まで!“映画を愛する”ドキュメンタリー5選

2018.01.24(Wed) | 上原礼子

映画界最高峰の祭典・米アカデミー賞のノミネーションが発表されました。今年は何かと“負の話題”が多い映画界ですが、この時期は特に、人生にすばらしい贈り物を与えてくれる映画への思いがいっそう強まるときではないでしょうか? そこで今回は、映画音楽、往年の名女優、伝説の監督、アニメなどへの愛に満ちあふれたドキュメンタリーに注目してみました。

『すばらしき映画音楽たち』数々の名作を観返したくなる!
すばらしき映画音楽たち
恐怖を増長させるあの『サイコ』のあの音楽から、『ロッキー』『ジョーズ』『スター・ウォーズ』『E.T.』『バットマン』『ソーシャル・ネットワーク』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に『ミニオン』まで、作曲家、音楽プロデューサー、映画監督、映画史の専門家、映画音楽が心身に与える影響を研究する心理学者たちなどが無声映画時代からの“映画音楽史”を紐解きながら、映画音楽について語り尽くす珠玉の93分。

映画ファンの耳に、というより、脳にしっかりと沁みついているであろう名作の名曲がオンパレード。登場するのは、ジョン・ウィリアムズ、ハンス・ジマー、ダニー・エルフマン、トーマス・ニューマン、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー、アレクサンドル・デスプラら錚々たる面々。オーケストラが初めて起用された1933年の『キングコング』以降、シンセやパンクなどが台頭しても、映画音楽といえばオーケストラなしには語れません。その圧巻の収録の模様や、彼らがどのようなアイデアや手法で作曲しているのかも紹介されます。

もしかしたら、監督以上に作品へのイマジネーションが必要なのが、映画音楽家なのかも。本作を観たら、あれも、これも観なおしたくなる、まさしく映画への愛にあふれたドキュメンタリーです。エンドロールで、ジェームズ・キャメロン監督が語るエピソードにも胸がいっぱいになります。
『イングリッド・バーグマン~愛に生きた女優~』女優が憧れる女優、女性が憧れる女性
イングリッド・バーグマン
ラ・ラ・ランド』で女優を夢見るミア(エマ・ストーン)の部屋に飾られていた巨大なポスター、その憧れの女優こそがイングリッド・バーグマン。『カサブランカ』『ガス燈』『追想』、そしてケネス・ブラナー監督でリメイクされたばかりの『オリエント急行殺人事件』など、母国スウェーデンからハリウッド、イタリア、フランス、イギリスで活躍し、3度のオスカーを獲得した伝説的女優。

実は彼女は、イタリアのロベルト・ロッセリーニ監督との不倫から妊娠、再婚で大バッシングを受け、「聖女」から一転、「悪女」とまでいわれたことも。ほかにも、戦場写真家ロバート・キャパらとも恋愛関係にあったことが明かされますが、彼女が生きた“愛”は、必ずしも男女間の恋愛だけではなく、4人の子どもたちへの愛や友情など、喪失と深い悲しみを背負ってきた母としての、1人の人間としての愛だったのでしょう。

本作は2015年のイングリッド生誕100周年を記念し、娘で女優のイザべラ・ロッセリーニの依頼から実現したもの。「私はイングリッド」という一人称で彼女の日記や友人にあてた手紙を朗読するのは、同じくスウェーデン出身であり、『リリーのすべて』でオスカーを受賞したアリシア・ヴィキャンデル。彼女の落ち着いたハスキーボイスは、まるで本人かと思うほどマッチしています。
『フェデリコという不思議な存在』“映像の魔術師”友情と創造の源に迫る
フェデリコという不思議な存在
こちらは、イングリッドがロッセリーニ監督に“惚れる”きっかけとなった『無防備都市』に脚本家として参加していた、『道』『8 1/2』のフェデリコ・フェリーニに迫るドキュメンタリードラマ。長く親交関係にあった『あんなに愛しあったのに』『特別な一日』などのエットレ・スコーラ監督が、フェリーニ没後20年を機に制作。スコーラ監督も本作が遺作となり、2016年1月19日に亡くなっています。

ムッソリーニ支配下の1939年、風刺雑誌「マルカウレリオ」で風刺漫画やコラムを書きはじめたフェリーニは、8年後、同誌でスコーラと出会います。以来、1993年にフェリーニが亡くなるまで続いた友人関係、不眠症だったというフェリーニとの夜のドライブ、マルチェロ・マストロヤンニも含めた3人の友情など数々の知られざるエピソードが盛り込まれ、敬意と愛情とウイットもたっぷりに、オスカーを5度も獲得した“映像の魔術師”に迫ります。

チネチッタ・スタジオでの葬儀からラストに向けてのシークエンスは、まるで『8 1/2』の大団円のような驚きと愛に満ちています。
『ヴァーサス/ケン・ローチ映画と人生』50周年集大成のドキュメンタリー
ヴァーサス・ケンローチ
カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞の最新作『わたしは、ダニエル・ブレイク』が日本でも「キネマ旬報外国映画ベスト・テン」1位に選ばれるなど絶賛を受けている、イギリスを代表する監督ケン・ローチ。

1度は引退を表明していた彼が「これだけは伝えたい」と再びメガホンを手にした同作の制作風景を追いながら、本人のインタビュー、BBC時代からの過去作品の映像や当時の報道、長らくタッグを組んできたプロデューサーやキリアン・マーフィをはじめとする俳優たちのインタビューなど、50年の映画人生がぎゅっと凝縮。

「映画にはたくさんの伝統がある。その一つは、強大な権力を持ったものに立ち向かう人々に代わって声をあげることだ」と2度目のパルムドール受賞時に語っていたように、ケン・ローチの映画人生は常に労働者や子どもを奪われた母親など、権力に抑え込まれ、制度に阻まれた人々とともにありました。その影にあった彼自身の喪失と悲嘆、10年以上の不遇の時代など、社会派の巨匠の知られざる姿は必見です。
『ぼくと魔法の言葉たち』ディズニーのアニメが起こした奇跡
ぼくと魔法の言葉たち
昨年のアカデミー賞にノミネート、“アニメ界のアカデミー賞”アニー賞では特別業績賞を受賞したドキュメンタリー。3歳になるころ突然言葉を失い、自閉症スペクトラムと診断された少年オーウェンが、ディズニー・アニメーションから言葉や人間関係を学び、家族をはじめとした周囲の人々とのコミュニケーションを取り戻していった奇跡の軌跡を追います。

版権に関して厳重なあのディズニーが、『リトル・マーメイド』『ピーター・パン』『ライオン・キング』『アラジン』『ノートルダムの鐘』『美女と野獣』など、実際のアニメ映像をふんだんに提供。しかも、オーウェンが共感し、愛を注いできたこれらの物語の脇役たちと“共演”するオリジナルアニメも印象的に登場します。

すべての物語、すべてのキャラクターの台詞が頭に入っているオーウェンは、人生のピンチにぴったりのシーンを探し当て、自分と照らし合わせてきましたが、大学卒業(!)を控え、ある壁にぶち当たることに……。アメリカとの制度の差を痛感しながらも、果たして、彼のように自らを誇れる子どもが今どれだけいるだろうか。そんなことも考えさせられます。

このほか、“若き天才”に迫るグザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル、鬼才の妻が撮ったマイ・ライフ・ディレクテッド・バイ・ニコラス・ウィンディング・レフン、『ニュー・シネマ・パラダイス』の名匠が語られるトルナトーレ 我が映画人生、米インディペンデント映画の父ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男、M・スコセッシやD・フィンチャー、黒沢清が語るヒッチコック/トリュフォーなど、見応えあるドキュメンタリーは盛りだくさん。その映画愛にどっぷりと漬かってみませんか?

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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