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このオヤジに惚れた!人生の酸いも甘いも噛み分けた愛すべきオジサン映画

2018.02.07(Wed) | 上原礼子

かのチャールズ・チャップリンは「人生に必要なもの。それは勇気と想像力、そして少しのお金だ」との名言を残しましたが、世知辛い現代社会においては、時にユーモアが必要です。チャップリンとまではいかなくても、酸いも甘いも噛み分けたオジサンたちの勇気と想像力から生まれた少しのユーモアには、救われることもしばしば。そんな愛すべきオジサンたちが活躍する映画を集めてみました。

イタリア発・日本人も納得(!?)の“あるある”コメディ『Viva!公務員』
Viva!公務員
2015年、イタリアで歴代興行収入NO.1の記録を打ち立てた、皮肉の利いたコメディ。子どものころからの夢だった安定した職種の代表格・公務員となり、早15年の独身男性ケッコ。ある日、政府による財源カットによりリストラの危機に! それでも公務員の職にしがみつこうとするケッコと、自主退職させたいリストラ担当者とでバトルが勃発!? ケッコは僻地を転々とさせられ、ついには北極圏へ。そこで出会った女性ヴァレリアと恋に落ちるも、彼の公務員志向はいっこうに変わらず…。

どこへ飛ばされても、すぐに馴染んでしまう適応力を長所に持ちながら、この道が正しいと信じて疑わないケッコ。やがて自分の生き方のほうが「ヘンだったのか?」と疑問を持つようになるのは、自由奔放なヴァレリアと彼女の子どもたちの影響でしょうか。女性蔑視や人種差別についても盛り込まれつつ、日本人の働き方にも一石を投じる(?)笑える快作です。
イラン発・運転手は社会の矛盾を問う映画監督!『人生タクシー』
人生タクシー
テヘランの街並みを走り抜けるタクシー。そのダッシュボードに置かれたカメラに映るさまざまな乗客たちから、イラン社会のリアルを見つめるドキュメンタリー・タッチの映画です。そのタクシー運転手こそ、故アッバス・キアロスタミ監督の愛弟子にして、世界三大映画祭を制覇したイランの名匠ジャファル・パナヒ監督。政府への反体制的な活動を理由に“20年間の映画監督禁止令”を受けながらも、本作ではベルリン国際映画祭で金熊賞(最高賞)を受賞しました。

乗客には、死刑制度に反対する教師や“弱者からは盗まない”強盗、信心深い2人の老女や、学校の課題で短編を撮るという監督の姪っ子などがいます。当たり前のごとくに映画の海賊版レンタル業者もいて、監督に気づき「ウディ・アレンを届けたことがありますよ」なんてやりとりも…。不思議なことに、振り込め詐欺がいまだ横行したり、たちの悪い企業倒産が相次いだり、画一的な報道が続いたりする日本とも何だか近しいと思えてきます。
イギリス発・福祉の狭間に愛の手を!『わたしは、ダニエル・ブレイク』
わたしは、ダニエル・ブレイク
社会派の巨匠ケン・ローチ監督が一度は引退を表明したものの、国に物申すとばかりに再びメガホンをとり、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した傑作。舞台はイギリス北東部ニューカッスル、妻に先立たれ、心臓発作で医者から仕事を止められた熟練の大工ダニエル・ブレイク、59歳が主人公です。国からの援助を受けようとしますが、制度は複雑で、そもそもその入り口にもたどり着けません。

そんなダニエルが出会ったのは、ロンドンから越してきた2人の子どもを持つシングルマザーのケイティ。彼らを助けようとしながらも、ダニエル自身にも厳しい現実がのしかかってきます。頑固でぶっきらぼうだけれども親切で、愛に溢れたダニエルと、杓子定規で融通がきかないお役所(ルールは大事ですが…)は水と油。スウェーデン発『幸せのひとりぼっち』にも通じるメッセージは、日本でも“あるある”かもしれません。
アメリカ発・「年金返せ!」とオスカー俳優が集結『ジーサンズ はじめての強盗』
ジーサンズ はじめての強盗 ブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]
マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、アラン・アーキンという“レジェンド”級の3人のオスカー俳優が、銀行強盗を企てるという愉快で痛快なコメディ。40年間働いた工場が買収され、積み立てていた年金が負債整理に回されることになったジョー(ケイン)、ウィリー(フリーマン)、アル(アーキン)の3人。年金はストップ、我が家も差し押さえの危機、銀行からも冷たくあしらわれた彼らは、大胆不敵にも銀行強盗を計画します。

1979年の『お達者コメディ/シルバー・ギャング』を基に軽妙なクライム・コメディに仕上げたのは、『ドリーム』を手がけたセオドア・メルフィ。監督は『WISH I WAS HERE/僕らのいる場所』のザック・ブラフで、たっぷりと笑わせつつ、胸がいっぱいになる優しさのどんでん返しが用意されているのが素敵です。クールな信念を貫き、あくまでも慎ましいジーサンズは、誰よりも紳士的な銀行強盗なのです。
ドイツ発・彼を笑い飛ばせれば大丈夫!?『ありがとう、トニ・エルドマン』
ありがとう、トニ・エルドマン [DVD]
2016年、カンヌ国際映画祭を皮切りに話題沸騰となり、賞レースを席巻したドイツのコメディ・ドラマ。ルーマニアのブカレストでコンサルタント会社に勤め、大事な商談を前にナーバスになっているキャリアウーマンの娘のもとへ、昔から悪ふざけが好きな父がはるばるドイツからサプライズ訪問。「はじめまして、トニ・エルドマンです」と、変なカツラと入れ歯で全くの別人になりきって現れたから、さあ大変!

“入れ歯を常備”しているちょっと変わり者の父は、以来、娘の前にたびたび神出鬼没で現れます。想像するだけでイライラしてきそう(?)ですが、父はただ義務に追われる娘に、心の潤いを取り戻させたかっただけなのです。そんな不器用な父娘の愛に、泣いて笑って、幸せな余韻を噛み締めてみてください。最後にはきっとあなたも、「ありがとう、トニ・エルドマン」と言いたくなるはずです。

世界各地でオジサンたちが懸命に闘っているものは、ここ日本でも当たらずとも遠からじなことばかり。人生の酸いも甘いも噛み分けてきたオジサンたちだからこそ醸し出される、温かみや機知に癒されてみませんか。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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