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ちょっぴり異質で奇妙。でも目が離せないラブ・ファンタジー5選

2018.02.28(Wed) | 足立美由紀

ファンタジーはお好きですか? 現実では到底ありえないような、見たことのない世界を疑似体験できるのは映画の醍醐味の1つですよね。宇宙や冒険の物語も素敵ですが、たまにはケレン味あふれるラブ・ファンタジーはいかがでしょう? 今回は、ちょっぴり異質で奇妙だけれど、目が離せないラブ・ファンタジー5作品を紹介します。

孤独な女性と遠い海の住人による種族を超えた愛『シェイプ・オブ・ウォーター』
シェイプオブウォーターPOSTER
パンズ・ラビリンスで残忍かつ幻想的な少女の冒険寓話を描き出したギレルモ・デル・トロ監督によるファンタジー・ロマンス。本作は第74回ベネチア国際映画祭(金獅子賞)受賞、第75回ゴールデン・グローブ賞(監督賞・作曲賞)受賞ほか今年度の賞レースを席巻。第90回アカデミー賞でも最多13部門にノミネートという快挙を果たした、今年見逃せない映画のうちの1本です。

1962年のアメリカ。主人公は政府の極秘研究所に勤めるイライザ(サリー・ホーキンス)です。掃除係をする彼女は、ある日、密かに運び込まれた“研究生物”に出会い、心惹かれます。アマゾンの奥地で神として崇められていたという“彼”に、ゆで卵を差し入れしたり、音楽を聞かせたりするイライザ。2人は急速に距離を縮めますが、“彼”の生体解剖が決定され……。

言葉を話すことのできないイライザと、そもそもコミュニケーションの手段も定かでない彼は、ボディ・ランゲージで意思疎通をしています。「彼は不完全な私じゃなくて、ありのままの私を見てくれるの」……この言葉だけで、イライザがなぜ半魚人のような彼と恋に落ちたのかは十分理解できますよね(きっと彼も同じ気持ちのはず!)。それまで孤独だった彼女が、ベター・ハーフ(魂の片割れ)に出会うという種族を超えたピュアな恋にジーンとさせられますが、その反面、忘れてならないのは彼の容姿。心はともかく外見だけ見れば、彼はまごうかたなき “クリーチャー(怪物)”で……。グロいけど幻想的で美しい~ギレルモ監督の本領が発揮された、ファンタジックな恋物語をご堪能ください。

◆『シェイプ・オブ・ウォーター
3月1日(木)より全国公開
(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
『リザとキツネと恋する死者たち』
リザとキツネ
黒沢明、小津安二郎らの名作映画はもちろん、日本文学やJポップの知識も豊富な日本大好きウッイ・メーサーロシュ・カーロイ監督によるオリジナル・ストーリー。本作はカーロイ監督が日本の短編映画祭に出席するため那須を訪れた際に、“九尾の狐伝説”を知り着想を得たという、ハンガリー発の奇妙でポップなジャポネスク・ファンタジーです。

伝説では鳥羽上皇の寵姫に化けた9本のしっぽを持つ狐が悪行を繰り返しますが、本作で悪さをするのはヘンテコ日本歌謡を歌う幽霊のトミー谷(デヴィッド・サクライ)。実体を持たない彼が、日本のヘンテコ小説を愛読するひとりぼっちのリザ(モーニカ・バルシャイ)の恋路を邪魔します。

1970年代、ブタペスト。リザは30歳の誕生日を迎え、小説のような素敵な出会いを夢見ています。しかし恋する相手が次々と亡くなり、彼女は彼らの殺害容疑で逮捕されることに。全てはトミー谷のヤキモチが起こした不幸な事件なのですが、そんなことはつゆ知らず一生懸命なリザが健気で可愛い! 日本人にとってはキテレツ日本がてんこ盛りで苦笑してしまうのですが、そのヘンテコさがクセになる摩訶不思議ムービーです。
『ライフ・アフター・ベス』
ライフ・アフター・ベス
春公開作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』でスーパーモデル、カーラ・デルビーニュとの共演が話題となっている若手俳優デイン・デハーン主演のゾンビコメディ。繊細なマスクで“ディカプリオの再来”との呼び声高いデハーンが、刻々とゾンビ化していく彼女に翻弄される青年を演じています。彼の意外なコメディアンとしての素質も垣間見ることができる青春ムービーです。

彼女ベス(オーブリー・プラザ)が不慮の事故で死に、悲しみに暮れるザック(デハーン)。夏なのに彼女の遺品のマフラーを巻き、ベスの父親とチェスをして心慰めますが、ほどなくベスが墓から蘇ってきて……。

怒りっぽくて暴力的になっていく死臭漂うゾンビ・ベス。彼女を愛しながらも、ついついザックが顔をゆがませてしまうのも無理はありません。ベスを演じたプラザはアメリカの人気コメディエンヌですが、本作では血のりにまみれ、パンチラ上等の体を張った演技で笑いを誘います。ハイキングに出かけた2人のシュールな佇まいとやり取りが絶品。後からジワジワ効いてきます。
『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』
ムード・インディゴ うたかたの日々
エターナル・サンシャインのミシェル・ゴンドリー監督による、メランコリックなラブ・ストーリー。原作はフランス人作家のボリス・ヴィアンが1946年に発表した青春カルト小説「日々の泡(別題:うたかたの日々)」です。今でもフランスで若者層に支持されている“胸に花が咲く奇病に侵された恋人たちの物語”を、ゴンドリー監督がガジェット満載でレトロモダンにつむぎます。

裕福で愉快な暮らしをする青年コラン(ロマン・デュリス)は、大好きなデューク・エリントンの曲と同じ名前のキュートな女の子クロエ(オドレイ・トトゥ)に恋をします。2人はほどなく結婚しますが、幸せの絶頂の最中に、クロエの左胸に睡蓮のつぼみが宿ってしまうのです。

蛇口からウナギが出てきたり、音色によってカクテルの味が変わる“カクテルピアノ”が軽快なジャズを奏でたり。マジカルで優雅な生活を送っていたコランが、クロエの病院代を稼ぐために身を削って働き、疲弊する姿が切なく胸に迫ります。人生はすぐ消えてしまう、うたかたのよう~ボリス・ヴィアンの独特な無常観と美意識が、おもちゃ箱をひっくり返したような作品世界に大人の味わいを与えています。
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ
『マイティ・ソー』シリーズの悪神ロキ役で知られるトム・ヒドルストンと、個性派女優ティルダ・スウィントンが共演するヴァンパイア・ムービー。監督は日本でもファンの多い、『ブロークン・フラワーズ』のジム・ジャームッシュです。

アダム(ヒドルストン)とイブ(スウィントン)は何世紀も愛し合ってきたヴァンパイアの夫婦。アダムは古い電話機やブラウン管のテレビ、年代もののギターなどレトロなものを好むアングラのミュージシャン。対するイブはスマートフォンを利用するなど、時代への適応力が高い知的な女性です。しかし2人の元にトラブルメーカーであるイブの妹・エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が訪ねてきて、彼らの奇抜だけれど穏やかな生活をブチ壊すのです。

低俗なゾンビ(=人間)が闊歩する世界で、マイノリティとして生きる彼らの孤独と飢餓感は増すばかり。アダムとイブは管理された現代社会に閉塞感を感じてもいるのですが、そんな中でも気高く生きる彼らに共感する人もいるのでは? ジャームッシュは毒気が効いたクールな眼差しで、 “異能ゆえにマイノリティとなった者の生きづらさ”をスタイリッシュに切り取ります。

ファンタジー映画の幻想的なビジュアルを支える特殊メイク。今回紹介した作品でも効果的に使用されています。『シェイプ・オブ・ウォーター』のデル・トロ監督は、かつてその道の第一人者だったディック・スミスに師事していたことがあるそう。同じくスミスを師とあおいでいたのが『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』で、今年のアカデミー賞(メイクアップ&ヘアスタイリング)にノミネートされた現代美術家の辻一弘さん(こちらは実在する人物の再現)。すでに鬼籍に入ったスミスさんも、今年のアカデミー賞を天から見守っていることでしょう。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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