ホーム > アカデミー賞外国語映画賞 受賞&ノミネート作品を一挙チェック!

アカデミー賞外国語映画賞 受賞&ノミネート作品を一挙チェック!

2018.03.14(Wed) | 足立美由紀

今年のアカデミー賞(外国語映画賞)に輝いたのは、トランス・ジェンダーの女性が逆境に負けず人生を切り開く『ナチュラルウーマン』。自身もトランス・ジェンダーである歌手ダニエラ・ヴェガが主人公マリーナ役を演じたことでも話題になりました。世界各国からたった5作品だけという狭き門に名を連ねるのは、それだけで優れた作品の証。見れば納得の力作ばかりなので、この機会に一挙にチェックしちゃいましょう!

隠したい妻と暴きたい夫のすれ違いをスリリングに描く『セールスマン』
セールスマン
第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で男優賞・脚本賞の二冠に輝いたサスペンスドラマ。折しもアカデミー賞授賞式の前月に、トランプ大統領は「イスラム圏の7カ国からの入国を一時的に禁止」とする大統領令にサイン。これに抗議の意を示したイランの名匠アスガー・ファルハディ監督と主演女優タラネ・アリドゥスティは、外国語映画賞にノミネートされながらも授賞式を欠席しています。

小さな劇団に所属する教師エマッド(シャハブ・ホセイニ)と妻ラナ(アリドゥスティ)は、舞台「セールスマンの死」の稽古に励んでいます。しかし引っ越したばかりのアパートでシャワーを浴びようとしていたラナは暴漢に襲われ、精神的に追い詰められたことからPTSDを発症してしまうのです。

エマッドは警察に行くことを提案しますが、「未遂だったから」とラナは拒絶します。実はイスラム教では、地域によってはレイプ被害にあった被害者が“姦通罪”を問われることもあるという背景が。ラナは好奇の目や、疑惑を持たれることを恐れたのです。また、そもそもの引っ越しの理由は、彼らの住んでいた建物が倒壊の危機に瀕したためで、本作には貧しい経済状況やイスラムの戒律など、厳しいイランの実情が描かれています。

こうした状況の中でエマッドに募っていく、「本当に未遂だったのか?」という疑心暗鬼と、妻を守れなかった自分への苛立ち……。予想外の結末へと爆走していく、手に汗握るスリリングな展開が絶品です。
“死出の旅路”に寄り添う納棺師の静謐な物語『おくりびと』
おくりびと
今年のアカデミー賞では、現代美術家兼メイクアップ・アーティストの辻一弘さんが日本人として9年ぶりにオスカーを手にしましたが、その9年前のレコードとなっていたのが本作。日本映画史上初のアカデミー賞(外国語映画賞)に輝いたほか、日本アカデミー賞でも(作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞)の6部門で最優秀賞を制した、日米ともに高く評価された作品です。

突然の楽団解散で職を失った元チェリストの小林大悟(本木雅弘)は、故郷の山形に妻・美香(広末涼子)と帰ります。そこで「短時間勤務、高給」という好待遇に釣られて、遺体を棺に納める“納棺師”という職に就くのですが。

遺体を扱う職業ということで、最初は妻にも隠していた大悟。しかし様々な人間模様に触れるうちに、“死出の旅路”に寄り添う “納棺師”という仕事に誇りを見出していくのです。公開当時話題となった、大悟を演じたもっくんの美しい所作にも注目あれ!
最期の時を豊かに過ごした親子の絆を描く感動コメディ『みなさん、さようなら』
みなさん、さようなら
こちらも『おくりびと』と同様、“看取り”について考えさせられる作品。アカデミー賞(外国語映画賞)のほかにも、カンヌ国際映画祭(最優秀脚本賞・最優秀主演女優賞)、セザール賞(最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀脚本賞)を受賞。カナダの巨匠ドゥニ・アルカンが監督・脚本を務めたコメディタッチの人間ドラマです。

ロンドンの証券会社で働くエリート・サラリーマンのセバスチャン(ステファン・ルソー)は、父親レミ(レミー・ジラール)の死期が近づいているという母親の知らせを受け、これまたバリキャリの婚約者・ガエルを伴いカナダの父親の病室を訪れます。

どうやら若い頃はヤンチャだったレミ。大学で教鞭をとる教師ながらも、浮気が元で15年前から家族はバラバラになっています。「息子は野心的な資本主義者、僕は好色な社会主義者だ」と、悪びれもなく言うようなレミをセバスは快く思っていないのですが、“父親の最期を楽しいものに”~という母親の願いを聞き、病室にレミの友人たちを招くのです。

母親からレミがどれだけ自分を可愛がっていたか教えられ、レミの本心を知り変わっていくセバスチャン。豊かな余命の過ごし方や、友人たちとの交流、そして親子の絆が胸に迫る感動作です。
頑固な彼が最愛の妻に誓った約束とは? 切なくも温かい『幸せなひとりぼっち』
幸せなひとりぼっち
スウェーデンの人気作家フレドリック・バックマンのデビュー作にして世界的ベストセラーを映画化。アカデミー賞(外国語映画賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞)にノミネートされました。最愛の妻を亡くし、リストラされた孤独な中年男が、隣人一家とのふれあいを通じて再生していく、ユーモラスで生き生きとしたヒューマンドラマです。

かつて自治会長を務めたこともあるという規律正しい中年男オーヴェ(ロルフ・ラスゴード)。しかし愛する妻を亡くし、気難しくなった彼は厄介者のような存在になっています。そんな折、43年間務めた鉄道局をクビに。孤独な彼は天井にロープを吊るし首つり自殺を図りますが、ちょうど隣の家に引っ越してきたパルヴァネ一家がその邪魔をするのです。

なにかと手間のかかる一家の面倒を見るうちに、人との交流の温もりを思い出すオーヴェ。次第に明らかになっていく彼と妻の強い絆に、切なくも温かい涙がこぼれます。
人生には決して押してはならないスイッチがある、という!?『人生スイッチ』
人生スイッチ
『オール・アバウト・マイ・マザー』でアカデミー賞(外国語映画賞)に輝いたスペインの名匠ペドロ・アルモドバルがプロデュース、アルゼンチンの注目監督ダミアン・ジフロンのオリジナルストーリーによる予測不能の痛快アトラクション・ムービー。本作はアカデミー賞(外国語映画賞)ノミネート、アルゼンチンアカデミー賞では最多10部門を受賞しています。

ファッションモデルが乗った飛行機で、乗客たちが全てある男の知り合いで……。ウエイトレスとして働くレストランに、恨みを持つ男が食事に来て……。ポンコツのノロノロ車に罵声を浴びせて追い越した男の車がエンストして……。など、日常の中にありがちな状況でうっかり誤った選択をしてしまった6人の男女の末路が毒気たっぷりに描かれます。

最終話では人生の最高潮のイベントであるはずの結婚式に、花婿の浮気相手が招待されていることに気が付いた花嫁のとんでもない暴れっぷりにヒリヒリ&ニヤニヤ。このアルモドバルお墨付きのジフロン監督による皮肉の効いた目線、クセになりそうです!

アカデミー賞(外国語映画賞)に該当する作品の条件は、①アメリカ以外の国で製作されたこと、②英語以外の言語であること。アカデミー賞の選出条件は「アメリカ国内の特定地区で一週間連続ロードショーした作品」のため、この条件を満たした『みなさん、さようなら』は、外国語映画賞を受賞した同じ年にアカデミー賞(脚本賞)にもノミネートされるという快挙も(受賞はソフィア・コッポラ『ロスト・イン・トランスレーション』)!

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

Banner

関連するポスト

Copyright (C) GAGA Corporation. All Rights Reserved.
GAGA