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生まれ変わる春、新たな“旅立ち”と“巣立ち”に沁みる映画5選

2018.03.21(Wed) | 上原礼子

春は卒業、進学、就職、転職、引っ越しなど、旅立ち、そして巣立ちの季節です。新天地に向かう人もいれば、何かを新しく始めるという人も多いのでは? そんな人生の節目ともいえる時期は、家族や故郷から離れた自分自身を改めて見つめ直したり、逆に離れがたい絆を確かめ合ったりできる機会でもあります。新たな1歩に、何かしらのヒントを与えてくれそうな映画に注目してみました。

『20センチュリー・ウーマン』親離れ、子離れ
20センチュリーウーマン
人生はビギナーズ』のマイク・ミルズ監督がアネット・ベニングを主演に迎え、自身の母親をモデルに描いた本作は、消費主義突入&インターネット登場以前の“1979年”という時代を背景に、思春期の少年とその母親の“ラブストーリー”を描きます。

1979年、カリフォルニア・サンタバーバラ。シングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、思春期を迎える息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)のことが日に日に理解できなくなっています。そこで、ルームシェアで暮らすパンクな写真家アビー(グレタ・ガーウィグ)と、ジェイミーとは友達以上恋人未満の幼なじみジュリー(エル・ファニング)に「彼を助けてやって」と頼むのですが…。

だれしもが自身の母親を思い出し、人によっては、去った故郷のことも思い出すかもしれません。ものすごくパーソナルな物語であるのに、なぜ、これほどまでに心に響く普遍の物語となるのでしょうか。

実のところ、親が子に望むこと、子が親に望むことはたった1つ、“幸せであってほしい”ということだけ。しかし、親もまたあまりにも不器用で不完全なので、うまく伝えられないのです。
『グッバイ、サマー』その夏休みは、永遠!
グッバイサマー
マイク・ミルズと同様、ミュージックビデオ監督から映画の世界にやってきたミシェル・ゴンドリーが、「100%僕の思い出からできている」と語るひと夏のロードムービー。欧米では秋から新学年に切り変わるので、夏休みは成長物語の格好の舞台となります。

女の子のような容姿をからかわれながら、恋や性の悩みを抱えている画家志望のダニエル、あだ名は“ミクロ”。家庭に悩みを抱える、目立ちたがり屋でメカオタクの転校生テオ、あだ名は“ガソリン”。そんな14歳の少年2人が、自分たちで作った夢の車“動くログハウス”で旅に出ます。

大人の階段をのぼる一歩手前の少年たちの成長物語は、胸がいっぱいになりそうなほど、楽しくて、ほろ苦くて……。『アメリ』のオドレイ・トトゥが、彼らを見守る母親役で登場するのも感慨深いものがあります。
『はじまりへの旅』変わらないものもあっていい
はじまりへの旅 [DVD]
ロードムービーは、登場人物の心情の変化や成長を最も分かりやすく示してくれる物語。本作では、厳格な父ベン・キャッシュ(ヴィコ・モーテンセン)の独特な教育方針のもと、消費社会と切り離された森の中で育った子どもたちが“現実”を目の当たりにします。

父仕込みの訓練と教育で6人の子どもたちは皆、アスリート並の体力を持ち、6か国語に堪能。クリスマスは祝わなくても、20世紀を代表する哲学者・言語学者であるチョムスキーの誕生日は祝う“普通じゃない”家族。彼らは自ら命を絶った母親の最後のある“願い”を叶えるため、旅に出るのですが……。

18歳となった長男は父に内緒で有名大学に軒並み合格しており、巣立ちの時を迎えています。自らの限界に気づく父と子どもたちの葛藤は、まさにこの季節にぴったりの“はじまり”への旅といえそうです。
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』“今”を生きる若者たちへ
エブリバディ・ウォンツ・サム
70年代の高校卒業式前夜を描いた『バッド・チューニング』、6才の少年が大学に入るまでの12年間を描いた『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督が、まるでその物語の続きのような大学入学直前の3日間を描きます。

1980年夏、野球推薦で大学に入学する主人公ジェイク(ブレイク・ジェナー)は、騒々しく、下劣なジョークが大好きな先輩たちから次々に洗礼を受けていきます。その3日間は、昼はゲームや卓球に興じ、夜はパーティ三昧。どうしようもないほど脳天気(に見える)仲間たちとの関わりの中で、前途洋々とした大学生活とともに、野球を続けてプロになるのか否かといった会話も交わされ、すでに卒業後の姿も暗示されています。

何か大きな事件が起きるわけではなくても、一瞬一瞬が本気な彼らには学ぶことも多いはず。「後悔するのは、やったことじゃない。やり残したことさ」をはじめ、意外にも(?)随所に名言が飛び出します。
『王様のためのホログラム』人生、いつでもやり直せる
王様のためのホログラム
ピューリッツァー賞候補になった作家デイヴ・エガーズのベストセラー原作を、トム・ハンクスが自ら熱望し、『クラウド アトラス』の鬼才トム・ティクヴァ監督のもと映画化した再生の物語。エガーズはハンクスも出演したエマ・ワトソン主演『ザ・サークル』の原作者としても知られます。

大手自転車メーカーを解任され、離婚し、IT企業のセールスマンとなったアランは、はるばるサウジアラビアの国王に最先端の<3Dホログラム>を売り込みに行くのですが、用意されたオフィスはボロテントでWi-Fiもなし。担当者はいつも不在で、国王もいつ現れるのか分からない状態。次第に、心身ともに追い詰められたアランは……。

“中年の危機”や文化の相違にシニカルな視点で切りこみつつも、悲哀あふれる主人公をハンクスが演じることで醸し出されるユーモアが救いに。ティクヴァ監督と何度も組んでいるベン・ウィショーの友情出演も見逃せません。

今回は“旅立ち”や“巣立ち”にオススメの映画を紹介しました。背中をそっと押してくれたり、ハッとさせられるセリフに出会ったり、人生の節目や転機にも、映画は素敵な力を与えてくれますね。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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