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歌って踊って恋をしてだけじゃない!インド映画礼賛

2018.03.28(Wed) | 仲谷暢之

大学の同級生3人の人間模様を描いた傑作コメディ『きっと、うまくいく』や地球に調査に来た宇宙人の活躍を描いた『PK』でおなじみのボリウッドのトップスター、アーミル・カーンの新作『ダンガル きっと、つよくなる』が公開されます。
本作の公開を記念して、青山シアターで見ることができる、笑えて、興奮して、そして泣けるインド映画を礼賛!

『ダンガル きっと、つよくなる』
ダンガル
おとんの夢はレスリングで金メダルを取ること。が、若い頃、家庭の事情で断念。そんな自分の果たせなかった夢を、なんとか自分の子どもに託したいと子作りに励むも4人連続女の子・・・。ワシは息子が欲しかったのに神さん、なんで願いを聞いてくれまへんのや~と意気消沈してた時に、長女と次女が近所の男の子をボコった姿を見て、相手の親に謝るどころか、これはもしかしていけるんやないか?ワシの夢が叶うんやないか!?と、娘二人に希望の光を見出した!
早速娘たちにレスリングのオリジナルな鬼特訓で施し、長女と次女は嫌々ながらもそれに応え、実際にメキメキと才能を開花、インドでも有数の選手となっていくが・・・という「巨人の星」的昭和臭漂うスポ根もの。これがしかも実話を基にした作品というからすごい!
でも単なるスポ根ものにとどまらず、インドにまだまだ残る男尊女卑な風潮、貧富の差など問題定義も垣間見ることができ、日本でも最近取り沙汰されている事例にも通じているのがなかなかタイムリー。
今作でのアーミル・カーンは体重を20キロも増やしたり、痩せたりして驚異の俳優魂を見せつけ、不器用だけどレスリングバカなおとんを大熱演。さらに娘二人の幼少期と青年期を演じた女優たちの体を張った(実際にレスリングをやっている!)演技にも拍手を送りたい。今作を見れば、インド映画の進化が体感できるはず。

◆『ダンガル きっと、つよくなる
4月6日(金)公開
配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン/ギャガ
(C)Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016
『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』
バーフバリ1
見た人誰もが衝撃と興奮を覚えたと聞き、実際自分もただただ圧倒され、ドーパミン噴出しまくったのが「バーフバリ」2作。
擬音で表現するならババーン!ただただババーン!もひとつババババーン!という作品。
個人的には高野山のおみやげ屋さんで売ってたお釈迦さんの絵本を眺めているような、大映の超大作映画「釈迦」を見たような、さらには「ベン・ハー」から「十戒」「スパルタカス」「空海」「ゲンと不動明王」などを詰め込んだような絢爛豪華なタペストリーに触れた感じ。
「ラーマーナヤ」と並ぶ民族の英雄や神話、歴史を記した古代インド神話を構成した二大叙事詩「マハーバーラタ」からインスピレーションを受け、選ばれし子ども、バーフバリがその運命に導かれて活躍し覚醒。大きなる悪に立ち向かい、そして倒すという、ストーリーとしてはシンプルでわかりやすい。それをインドという地に足ついた独自の映画文化を発信し続けていた土地だからこそできた強引すぎるけれどあっぱれな展開、金襴緞子のようなゴッテゴテの美術、時には語り部となる音楽とダンス。そして人海戦術(エキストラ3万人だったそうな!)を駆使して見せてくれ、いやはや娯楽の真髄というのをわかってはるわぁと感心せざる得ない。
バーフバリ2
一本では描ききれなかったからこその続編「王の凱旋」も、火の儀式から始まり象が登場するハラハラのオープニングからしてまたしてもババーン!という擬音が頭に浮かび、思わず大向こうをかけたくなるような素晴らしい幕開け。熱量が全く落ちない展開と、そうそうこういうのが大団円という言葉やったなというクライマックスに納得するはず。
とにかく2本続けて見ていただきたい。ということで、バーフバリデーをぜひ設けてワイワイ言いながら楽しんでほしい作品。もちろんお供はカレー系とラッシーで。
『ダバング 大胆不敵』
ダバング
これぞインド娯楽映画の真髄と再認識させてくれるのがサルマーン・カーン主演の「ダバング 大胆不敵」。
「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」や、「ディル・セ 心から」などのキング・カーンことシャー・ルク・カーン、「ダンガル」のアーミル・カーンと並ぶインド三大カーンの一人で、オヤジなのに均整のとれたマッチョぶりで、インドの筋肉女子からはたまらんわーと熱狂的な支持を得てる大スター。

今作では家庭環境の複雑さで闇を抱え屈折気味のパンデー警部を演じているんですが、強盗から金を奪ってポケットないないしてしまうダーティーコップという裏の顔が。とはいえ、強気をくじき弱きを助けることから、ロビンフッド・パンデーの異名をとるように。そんな彼がイケイケドンドンの権力を手に入れるためなら手段を選ばない野心溢れる政治家(これまたマッチョ!)と、ぐうたらの義弟を相手に正義のために戦うという話。消化ホースを使ったアクションやガンアクションなどなどがてんこ盛り、さらに一目惚れした美女との恋愛話に歌に踊りがガンガン挟み込まれ盆と正月いっぺんに来た感じ。
ちなみにダバング、ダバングとリピートされる歌は耳残り曲として必至です!
『ロボット』
ロボット
オープニング、ガシャーンガシャーンと可動しながら浮かび上がるメカ文字。そこにはスーパースター、ラジニカーントという名前が!インドを代表する国民的俳優で、日本でも「ムトゥ 踊るマハラジャ」で広く知られ、インドの梅宮辰夫とも言われたお方。この「ムトゥ」は、それまで日本ではどちらかと言うとサタジット・レイ監督の「大地のうた」のような芸術作品の印象が強かったインド映画において今作が公開されたことによって、こういうのが普段、インドの庶民たちが楽しんでいる映画なんや!と広く知らしめてくれた作品。2時間超えの長尺で、男女の恋が繰り広げられ、歌や踊りが組み込まれたマサラムービーの面白さは、ラジニカーントという日本のスーパースターとはまた違った価値観のオヤジ俳優のキャラと相まって、以降、日本でも様々なインド発の娯楽映画が公開されることになった記念すべき一本。

そんな彼が還暦になるかならないかの時に主演したのがこの「ロボット」。スーパースターだからこそなり得た映画だと言えます。工学博士のバシーが自分に似せた高性能の人間型ロボットを開発。そのロボットが彼の婚約者に恋をしてしまったことから暴走。人間対ロボットの決戦が繰り広げられるというもの。
CG映像の凄さにはびっくりするんですが、でもやはり、CGをも凌駕する端から端までラジニカーントの俺、座長映画の方が凄いです。大昔、それこそ長谷川一夫や片岡歌右衛門と言った東映時代劇俳優の俺、座長映画はたくさんありましたがインドでここまでのラジニカーントエキスが圧縮された映画はないかも。それにわかりやすい顔やからこれまたCG映えしますねん。そのいい例がクライマックスの悪のロボットのラジニカーント大群攻撃。きっと小さい子が見たらトラウマになるやもしれませぬ。それくらいインパクト大。でもこれもインド映画やからと思えば、娯楽の奥深さを楽しめます。
『バルフィ! 人生に唄えば』
バルフィ!人生に唄えば
インドの平井堅こと、ランビール・カプール主演のヒューマニズム溢れるコメディ。耳の不自由な唖者のバルフィが恋した良家の娘シュルティと、あるきっかけで誘拐することになった障害のある金持ち娘ジルミルとの奇妙な三角関係を描いた物語で、かつてサイレント映画にあったチャップリンやキートン、ロイドのドタバタ喜劇へのオマージュや、さらに彼らに影響受けたジャッキー・チェンへのリスペクト、「雨に唄えば」などのクラシックミュージカルへのノスタルジー、アダム・サンドラー的アプローチ、ルパン三世と銭形警部やトムとジェリーを彷彿とさせるある人物とバルフィの関係と、映画愛に溢れまくりの回想のスタイルで描かれている。
ランビール・カプールの無言の演技の素晴らしさ、ドタバタの完成度の高さ、ヒロイン役のイリヤーナ・デクルーズの美しさ!プリヤンカー・チョープラのコケティッシュさ!そしてバルフィの好敵手となる警部の人情味溢れる存在に惚れ惚れするはず。笑って泣ける、曲もいい!本作でノスタルジーに浸って欲しいです。
『自転車』
自転車
これまで紹介してきたインド映画とは毛色の違ったショートムービー。おなじみの歌や踊りもないけれど、見終われば純然たるメイド・イン・インディアと思うはず。
ムンバイの路上で靴磨きをしている2人の少年がある時、お互い将来の夢を語り合います。サリムは大金持ちになりたいねん。ヴィクラムは世界中、いや、国内を旅していろんなものを見たいなぁと言う。それを聞いたサリムはふと思うところあって、それから靴磨きの仕事を早仕舞いしてどこかに行くように。実は彼、なぜか自転車に乗る練習をし始めてたんですね。でもそれが思わぬ方向へ・・・という話。
モノクロの乾いたムンバイの情景の中での少年たちのやりとり、そしてサリムの奮闘が胸に迫ります。そしてラストのアッと思わず声を上げてしまいそうな感動はぜひショートフィルムだからと思わずに味わってほしいです。ちなみに作品の中にアーミル・カーン主演の「チェイス!」のヒロイン、カトリーナ・カイフの名前が頻繁に出てくるのがインドの男の子の美の価値観を知ることできて微笑ましいです。

他にも以前、映画を通してお弁当を知るでも取り上げたお弁当を持ってこれない少年をめぐる話スタンリーのお弁当箱や主婦と彼女が作ったお弁当を間違って受け取った男との交流を描いためぐり合わせのお弁当食を通じたインド映画や、障害を持った女性の自立を描くマルガリータで乾杯を!も併せて見ていただければ、インド映画をもっと礼賛したくなるはずです。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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