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満開も桜吹雪も絵になる!さくらが印象的な日本映画5選

2018.03.28(Wed) | 上原礼子

どうやら今年は、平年よりも開花、満開が早く訪れている様子の桜前線。空一面に広がる満開の桜や風情ある桜吹雪、その可憐な花びらには、新しい門出はもちろんのこと、実らなかった思いなどが重ね合わせられ、数多くの映画で印象深いシーンを彩ってきました。そこで今回はお花見気分を味わいつつ、思わず胸がキュンとして、背筋がシャンとする、桜が印象的な作品を集めてみました。

『君の膵臓をたべたい』通学路の橋に咲く桜
君の膵臓をたべたい
表紙に描かれた桜のイラストの美しさも話題を呼んだ、「キミスイ」と呼ばれる人気小説を映画化。一見ドキリとするタイトルですが、実にみずみずしく、それでいて深遠な青春ストーリーです。

春、満開の桜の下、新学期を迎えたとある高校から物語が始まります。主人公は、高校時代のクラスメイト・山内桜良の言葉をきっかけに母校の教師となった【僕】(小栗旬)。図書館の蔵書を整理しながら、【僕】は桜良と過ごした数か月を生徒に語って聞かせるのですが、彼女は深刻な病いを抱えていました。しかも、ある日、意外ともいえる形でお別れの日を迎えてしまうのです。

難病ものか、と敬遠するなかれ。新星女優・浜辺美波が弾けるように演じた、その名も桜良(さくら)の明るさの陰に隠された“生きること”への真摯な問い、人との向き合い方には心が揺り動かされること必至。また、同じく次世代俳優の北村匠海も繊細で抑えた演技を見せています。

このフレッシュな2人の演技によって、過去の高校時代がさらに刹那に輝き、小説では描かれなかった現在パートで、12年後の【僕】がまさに桜のように鮮烈な青春の思い出(というにはあまりにも苦い形の)を抱えて生きている姿がいっそう胸に迫ります。
『海街diary』花霞の桜のトンネルを疾走
海街diary
みずみずしいといえば、今や若手トップ女優の1人となった広瀬すずのスクリーンデビュー作のこちら。吉田秋生によるベストセラーコミックを、三度目の殺人の是枝裕和が監督らしい叙情性を交えて映画化。

しっかり者の長女・幸(綾瀬はるか)と、自由奔放な次女・佳乃(長澤まさみ)、マイぺースな三女の千佳(夏帆)は、長らく鎌倉で姉妹3人暮らし。ある夏の日、父の葬儀で異母妹のすずと出会います。15年前、父はある女性と家を出ていったきり、その女性もすずを残して亡くなっていました。頼るべき存在を亡くしたすずに、幸たちは「一緒に暮らさない?」と同居を誘います。

鎌倉の四季の移り変わりとともに、1歩ずつ家族になっていく三姉妹とすず。しかし、次の春、姉たちには言えないモヤモヤを1人抱えていたすずは、同級生に初めてほんの少しだけ打ち明けた後、桜のトンネルへと向かいます。一面の桜並木を自転車で疾走する、すずの表情からは、どこよりも“ここにいたい”という思いが見えてくるかのよう。このシーンは、まるでCGかと見紛うほどに美しく、広瀬さんの髪に桜の花びらがはらりとつくところも含め、近年屈指の名シーンだと思います。
『四月物語』桜吹雪から始まる新生活
四月物語_新
新進女優と独特の世界観を持つ監督の組み合わせの桜の映画といえば、松たか子と岩井俊二監督による1998年の本作も見逃せません。

4月、新生活の始まり。吹雪という言葉がぴったり、桜が絶え間なく舞い散る日に東京・武蔵野にある大学に入学するため、北海道から上京してきた楡野卯月(松たか子)。おとなしい性格の彼女は、新しい友達や刺激的な環境に戸惑いながらも、新生活を自分なりに始めていきます。友人に誘われるがままサークルに入り、自転車をこいで本屋・武蔵野堂に向かう日々。なぜ、彼女にとって本屋はそこでなければならないのかが、やがて明かされます。

当時、松さんはすでに「ロング・バケーション」「ラブ・ジェネレーション」といった人気TVドラマに出演していましたが、本作が映画初主演。初々しい学生を演じる松さん、そして彼女が恋い焦がれる先輩・田辺誠一がまた爽やかで、これから始まる新しい物語を予感させています。なお、冒頭で卯月を見送る“家族”にも要注目です。
『彼らが本気で編むときは、』花より“お弁当”
彼らが本気で編むときは、 [DVD]
ベルリン国際映画祭で優れたLGBT映画に贈られる「テディ審査員特別賞」を受賞した本作は、まるで奇跡のような1作。生田斗真という日本映画界を背負って立つ人気俳優がトランスジェンダーの女性役に挑み、心と性、偏見や差別、多様な家族の形についての問いかけを、子ども目線から行っているからです。

かもめ食堂』『めがねの荻上直子監督が、自身のアメリカでの体験と日本の実情とのギャップ、さらに実在のトランスジェンダーの母娘を取り上げた新聞記事に着想を得てオリジナル脚本を執筆。母親が家を出た11歳のトモ(柿原りんか)は叔父・マキオ(桐谷健太)のもとに転がり込みますが、そこにはマキオの恋人リンコ(生田斗真)が。やがて、トモは新しい“家族”に自分の居場所を見つけ出すのですが……。

トモがリンコの中に母を見出し(しかも実母からはもらえなかった形で)、次第に打ち解けていく中で登場する花見のシーン。桜並木の土手を競争する2台の自転車が微笑ましく、トモの好きな物を詰め込んだお花見弁当を広げる“家族”3人が実に幸せそうなのです。
『あん』桜が結んだ運命の出会い
あん
河瀬直美監督が樹木希林、永瀬正敏と組んだ本作は、ドリアン助川による同名小説を映画化。カンヌ国際映画祭での上映ほか世界45か国に配給され、国内外で絶賛を集めました。

舞台は、見事な桜並木の一角に建つ小さなどら焼き屋「どら春」。縁あって雇われ店長を務める千太郎(永瀬正敏)の前に現れたのは、求人募集の貼り紙を見たという1人の老女、徳江(樹木希林)。徳江が手間暇かけて小豆から作るつぶあんはあまりに美味しく、みるみるうちに店は繁盛。しかし、徳江がハンセン病患者であることで心ない噂が立ちはじめ、やがて徳江は店をやめることに……。

千太郎と、店の常連であり母親にネグレクトされている中学生のワカナ(樹木さんの実孫・内田伽羅)は、徳江が半世紀あまりも暮らしてきた療養所へと向かい、彼女の“思い”に触れます。ソメイヨシノに見守られながら静かに流れる千太郎の涙は、懺悔の涙かもしれません。しかし、それでも彼は顔を上げます。そんなラストシーンはスッと腑に落ち、軽やかな気持ちにまでさせてくれるほどです。

春の風物詩とはいえ、愛でることができるのはほんのわずかな期間。短い間でも懸命に咲き、毎年変わらずに新しい花をつける桜に、人間の生きざまを重ねてしまうのはいつの世も同じ。しかも、新たな出発を後押しするような“始まり”で締めくくられている映画も多いもの。忙しくてお花見していない…、見ごろを逃してしまった…という人も、映画の中から素敵な桜の景色が広がるシーンを見つけてみませんか?

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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