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いざ欲望の世界へ。深淵なる愛と渇望のドラマ5選

2018.04.06(Fri) | 足立美由紀

俳優ジョセフ・ゴードン=レビットが初監督にして主演を務めた『ドン・ジョン』では、“理想的なセックス “を追い求める主人公ジョンの姿が描かれます。たかがセックス、されどセックス。ひと時の快楽だけでなく心の底から満たされたいという思いは、人間の根源的欲求なのかもしれません。今回紹介するのは、そんなセックスをテーマとする「深淵なる愛と渇望のドラマ」5作品。参りましょう、いざ欲望の世界へ!

刺激的でセンセーショナルなR18恋愛ドラマ『娼年』
娼年
2001年に直木賞候補となった石田衣良の恋愛小説を、大胆な演出が話題となった舞台版に引き続き監督・三浦大輔×主演・松坂桃李コンビで映画化。刺激的でセンセーショナルな、大人のためのラブストーリーです。

都内の名門大学に通う森中領(松坂)は、バイト先のバーに現れた妖艶な女性・御堂静香(真飛聖)から、彼女が経営する会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」にスカウトされます。戸惑いながらも娼夫となった彼は、女性たちのさまざまな欲望と心の傷を知り……。

小学生の時に経験したある出来事がトラウマとなり、無気力に過ごしてきた領。「セックスなんて、手順が決まった面倒な運動です」と醒めていた彼は、娼夫・リョウとして女性たちのあらゆる性癖を全肯定し、肉体のコミュニケーションで心身ともに癒していきます。そして自らも閉じていた心を解放させることで、人間的に大きく成長していくのです。

本作で賞賛を贈りたいのは、なんといってもリョウを演じ切った松坂桃李。美しかったり時には倒錯気味だったりもする数々の濡れ場に、真正面から挑んだその俳優魂には本当にビックリ&感動させられます。それと同時にバラエティに富んだ欲望を具現化した、若手女優ほか西岡徳馬や江波杏子らベテラン勢が、余裕たっぷりの演技で物語にコクを与えているのも見逃せません。

愛の渦でアングラ風俗に集う男女8人の姿を描いた三浦監督は、本作でも“性の極限”を余すことなくスクリーンに刻みつけ、人間の本質を暴き出しています。

◆『娼年』R18+
4月6日(金)よりTOHOシネマズ 新宿 他 全国公開
(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会
辛辣なドキュメンタリードラマにして渇望の物語『身体を売ったらサヨウナラ』
身体を売ったらサヨウナラ
東大大学院卒で大手新聞社に勤めていたものの、AV女優だった過去を暴露されてしまった鈴木涼美の自伝的著作を映画化。主人公・鈴木リョウコを演じるのは、後述の恋の渦にも出演している柴田千紘です。

高学歴でエリートのリョウコ(柴田)は、仲間たちとホストクラブでバカ騒ぎに興じる一方で、売れないミュージシャンに純愛していたりします。スペック的には恵まれていても、それでも心は満たされない。そんなリョウコが「自分を知る」ため過酷な臨床実験で自分を追い込んだり、元彼の“彼女”を寝取ってみたり……。本作では狂騒的な生活を送るリョウコの、“人生の右往左往”が自虐気味に語られます。

ずる賢い大人たちと交わっていく中で、性に翻弄されるリョウコが募らせる焦燥感や諦観が観る者の心に静かな波紋を広げます。安易な共感を跳ね除ける辛辣なドキュメンタリードラマですが、本作は激しい渇望の物語でもあるのです。
闘うことで得られる極上のエクスタシー『ラブバトル』
ラブバトル
後期印象派の巨匠ポール・セザンヌの名画「La lutte d'amour(愛の闘い)」から着想を得た異色のラブストーリー。娯楽大作とは一線を画すアーティスティックな眼差しで、喪失感や男女の愛憎劇を描いてきたジャック・ドワイヨン監督作品です。

彼女(サラ・フォレスティエ)は、父親の葬儀に参加するため久しぶりに故郷に帰ってきます。隣家の男(ジェームス・ティエレ)を訪ねた彼女は、遺産相続のトラブルのストレスや幼い頃のトラウマを、“暴力”という形で男にぶちまけ発散するのですが……。

実は彼女と男には、一つ屋根の下で一夜を過ごしながらも一線を越えられなかったという苦い過去があります。なぜ男が行為に及ばなかったのか、そしてなぜ自分は家族からないがしろにされるのか~混沌とした疑問符を抱える彼女は男を挑発。2人は体を重ね合わせる代わりに、肉体をぶつけて傷付けあうことでエクスタシーを感じていくのです。

美しい田園風景や森の中に建つ屋敷など、名画に描かれたような野趣あふれる世界で繰り広げられる2人の “愛の闘い”。次第にエスカレートしていく暴力の行き着く先をどうぞ見届けてあげてください。
ブルーの色調に彩られたエロティック・スリラー『六月の蛇』
六月の蛇
弱みを握られたストーカーから、恥辱にまみれた行為を強要される人妻の姿を描いたエロティック・スリラー。オールラウンドプレーヤーの塚本晋也監督が、本作でもプロデューサー・監督・撮影監督・照明監督・美術監督・脚本・編集・出演の8役を務めています。

「こころの健康センター」で電話相談の仕事をする辰巳りん子(黒沢あすか)は、潔癖症の夫とセックスレスの生活を送っています。空虚な想いを抱えるりん子の元に、彼女の自慰行為を盗撮した写真と携帯電話が送られてきて。

かつて電話相談で、自殺を思い留まらせた男性・飴口道郎(塚本)から脅迫されるりん子。公衆の面前で恥ずかしい姿をさらすよう指示され、泣く泣く従います。しかし悲劇的に見えた彼女の苦しみは、次第に倒錯した悦びに……。

飴口は怖ろしいはずのストーカーですが、彼女に心の解放を何度も促したり、病院を受診するよう指示したり~と、なんだか彼に優しさや愛を感じてしまいます。生や性を諦めかけた夫婦に、大量に降り注ぐ六月の雨。命の源であり全てを洗い流す水=青色に彩られた、エネルギッシュで、エロティックで、少し感傷的な“再生の物語”をどうぞお楽しみください。
ゲスで、エロくて、ドキュンな恋愛群像劇『恋の渦』
恋の渦
『娼年』の三浦大輔による原作・脚本を、モテキの大根仁監督で映画化。部屋合コンで知り合ったゲスで、エロくて、ドキュンな男女9人の人間模様を描いた恋愛群像劇です。上映時間138分を、わずか4日間で撮影したという本作。大根監督の疾走感あふれる演出の下、三浦ワールドともいうべき緻密な人間描写が冴えわたっています。

モラハラ気味の彼氏ユウジと同棲するマグロ女トモコ、カオリを軸に微妙な関係に陥るデリヘル好きのユウタとちょっとウザいタカシ、ユウジの浮気性の弟ナオキと同棲中のサトミ、ブサメン・オサムとブサイク女・ユウコ。軽い人物紹介だけでも濃ゆ~い面々が、オサムとユウコをくっつけるための部屋コンに集まったことで物語が動き出します。

「可愛い子だよ」と予告されていたユウコがイマイチだった時の男性の反応や、見知らぬ人ばかりの集まりに付き合わされた弟彼女サトミのいたたまれなさ。合コン&飲み会あるあるに切なくさせられる一方で、次第に明らかになっていく嘘の裏に隠れた真実が皮肉な笑いを誘います。

深淵なる愛と渇望の5作品いかがだったでしょうか。どの作品にも漂う濃密なエロスの香りが、大人の味わいを与えています。映画だからこそ覗くことができるディープな秘め事の世界、どうぞご堪能ください。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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