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不思議な魅力、一度は観ておきたいスウェーデン映画5選

2018.04.18(Wed) | 春錵かつら

みなさん、「スウェーデン」と聞いて何を思い浮かべますか?ムーミン?それはフィンランド!スウェーデンとはあまり仲の良くないフィンランドの人たちに怒られます。IKEA?そうそう!! オシャレなインテリアやファブリック、憧れの国・スウェーデン。IKEAが日本に登場してから今日まで、日本では北欧ブームが健在。北欧にはノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランドが含まれていますが(バルト三国などを含む場合も)、それらの国をまとめて「北欧」と呼んでいます。
そんな「北欧」に含まれる、自然溢れる福祉国家・スウェーデンは“ヨーロッパの日本”と呼ばれるほど、建前と本音をしっかり区別する国民と言われます。几帳面で真面目、そして個人主義。そんな「自立した強い個人」が尊ばれるスウェーデンには、個性的な映画がいっぱい。今日はそんなスウェーデン映画から一度は見ておきたい5作品をご紹介します。

平等とは?アートとは?理想と現実を知った先にあるもの『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
ザ・スクエア
4月28日に公開される本作は、2017年カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞。「フレンチアルプスで起きたこと」で注目されたスウェーデンのリューベン・オストルンド監督が描く、一風変わったヒューマン・ドラマです。
2人の娘の良き父でありバツイチの、現代アート美術館のキュレーター、クリスティアン。電気自動車に乗り、慈善活動を支援している「成功した側」の人間です。彼の次の展示物「ザ・スクエア」は、通りかかる人たちを利他主義へと導くインスタレーションで、他人を思いやる人間としての役割を訴えかけるもの。ある日、携帯電話と財布を盗まれた彼は、普段とは思いもよらぬ行動を取り、それがやがて予想外の波乱を引き寄せてしまいます。
「平等な社会」の理想と現実が、そこには描かれています。ただの四角く囲んだ空間の中でのみ「平等」が尊重される「スクエア」や、“モンキーマン”オレグと呼ばれるパフォーマンス・アーティストがチンパンジーになりきり、パーティ会場で鳴きながら半裸でうろついたり、どこまでがアートでどこからがそうではないのか。見て見ぬ振りをする集団心理のひとつである「傍観者効果」をテーマとしたエピソードの数々。常に観客自身も問われる、苦笑いの151分です。

◆『ザ・スクエア 思いやりの聖域
4月28日(土)公開
(C)2017 Plattform Prodtion AB / Societe Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS
過酷過ぎる試練・過激なルックスのヒロインは、語らず一人で立ち向かう『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』
ミレニアム ドラゴンタトゥーの女
本国スウェーデンでは、第1部が出版された直後から瞬く間にベストセラーとなった同名小説を映画化した本作。
有名実業家の不正を報道した、雑誌『ミレニアム』の発行責任者のミカエル。名誉毀損の有罪判決が下され職を離れた彼の元へ、ある仕事の依頼が舞い込みます。それはある40年前の少女失踪事件の調査。助手として紹介された過激なルックスの女性リスベットとの出会いをきっかけに二人が事件を解決していくシリーズ三部作です。原作者のスティーグ・ラーソンは、4部の途中まで書き進めていたものの、1作目の発売とシリーズの成功を目にすることなく心筋梗塞で急逝しました。ハリウッドでもリメイクされ、デヴィッド・フィンチャーが監督、ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラらが共演しています。
スウェーデン版ではダニエル・アルフレッドソンが監督を務め、昨年6月に他界したミカエル・ニクヴィストが主人公ミカエルを演じました。特にスウェーデンらしく個性的なのはノオミ・ラパス演じるヒロイン、リスベット。鼻ピアスとパンクファッションに身を包んだたくましいヒロインですが、辛い生い立ちだけでなく、現在進行形でパワハラにセクハラといった過酷な状況に度々身を置かれます。北欧の空気感が存分に本作のムード作りに活きている上質な北欧ミステリーです。
街は楽器で溢れている!彼らが起こした奇抜なテロとは『サウンド・オブ・ノイズ』
サウンドオブノイズ
カンヌ国際映画祭などで話題になったショートフィルム『アパートの一室、6人のドラマー』を長編化したフランスとの合作映画。
音楽一家に生まれながら音痴のために音楽嫌いになったアマデウス刑事は、ある事件現場に残されたメトロノームをヒントに事件を追い始めます。
音楽テロ集団と音痴の刑事の攻防、という一風変わった本作。ドラマーたち6人が結成したテロリスト集団は、4楽章からなる「町と6人のドラマーのための音楽」を奏でるために、時には病院の手術室で患者と医療器具を使って、時には銀行でスタンプと札束を使って、日常のありとあらゆるものを使って音楽を奏でます。その様子が実にコミカルで思わず笑ってしまいます。
本編中、テロリストの一人が、生活のためにティンパニを担当しているオーケストラで、「交響曲第49番」を演奏中に「ハイドンめ!」という台詞があります。ところがハイドンは実はティンパニ・マニアで、ティンパニを優遇した作曲家。ドラマーの彼がその台詞を発するというのは、なんとも皮肉が効いています。
街の奏でる音楽をぜひ楽しんでほしい映画です。
輝く思い出が、その死に下手な彼を今日も生かし続ける『幸せなひとりぼっち』
幸せなひとりぼっち
フレドリック・バックマンの世界的ベストセラーとなった同名小説を映画化したヒューマン・ドラマ。愛する妻に先立たれ、悲しみに暮れる孤独な毎日を送っていた孤独な老人オーベ。ある日、隣の家に引っ越してきた一家が、車のバック駐車や病院への送迎、娘たちの子守など、何かと問題を持ち込んできます。最初はうんざりしていた彼も、次第に彼らに心を開くようになってゆくのです。
主人公のオーベは冒頭でも書いたスウェーデン人の気質そのもの。あらすじだけを見ると、数々の映画で何度も描かれた物語のようですが、そこはスウェーデン。一日も早く亡き最愛の妻の元に旅立ちたい頑固な老人が、その度に邪魔が入って旅立つことができない様子を、ユーモアと温かい思い出の数々で観客に紹介し、いつのまにか観客は彼のことが好きになります。特に初デートの時の思い出がとても素敵。オーベの人となりがよく分かります。
主人公オーベを演じたのは「アフター・ウェディング」のロルフ・ラスゴード。スウェーデンのアカデミー賞と言われるゴールデンビートル賞で主演男優賞と観客賞をダブル受賞しました。幸せなひとりぼっちは、実はひとりではない。観た後には心がじんわりと温かくなるはずです。
無垢で濃密な愛慕、怖がらせるだけがヴァンパイア映画じゃない『ぼくのエリ 200歳の少女』
ぼくのエリ 200歳の少女 スペシャルプライス版 [DVD]
本作は2004年の小説「MORSE -モールス-」を原作者であるヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト自らが脚色したヴァンパイア映画。クロエ・グレース・モレッツ主演の「モールス」としてリメイクもされています。断然オススメしたいのがこっちのスウェーデン版。こちらとあちらでは観賞後の解釈が随分違うのですが、日本版では核心部分でぼかし修正がかけられてしまい、分かりづらくなってしまったのは残念でなりません。
物語はストックホルム郊外が舞台。母子家庭の家に育ち、学校ではイジメを受けている12歳のオスカー。どこにも居場所がない彼は、雪の積もったマンションの中庭で時間を潰している時に、となりの部屋に越してきたミステリアスな少女・エリに出会います。
孤独な二人の接近で生まれる感情が、雪に埋もれてしまいそうにたどたどしく見えるのに、まるで濃いミルクに混ざり合うように重厚さを増していく。邦画やアメリカ映画が進みがちなストーリーとはひと味もふた味も違った道筋をたどる名作です。
邦題ではサブタイトルにも語弊があると物議を醸した本作。原題は Låt den rätte komma in。「正しき者を招き入れよ」という意味ですが、ぜひ、こちらの原題を思いながら観て欲しい一作です。

まだまだスウェーデンの映画には、ちょっと変わった映画や、観たことがない題材など一筋縄ではいかない作品がたくさんあります。
フェミニストの活動が盛んなスウェーデンは、男女平等の先進国。男性がキッチンに当たり前のように立っていたり、子供をあやしていたりする姿が『ザ・スクエア 思いやりの聖域』でも見られます。
他にも世界有数のコーヒー消費大国スウェーデンにはコーヒーを飲み、シナモンロールなどを食べながらゆっくり談笑するフィーカ(Fika)という文化があったり、パーソナルスペースがとても大きかったり。
映画から垣間見ることが出来る、その国の背景も映画の楽しみ方のひとつです。映画は身近な海外体験。ぜひたくさんの外国に訪れてみてください。それではVi ses!(またね!)

Writer | 春錵かつら

映画を主軸にムックや月刊誌、WEBで活動中のフリーライター。 CMのデータ会社にて年間15,000本を超えるCMの編集業務に携わる傍ら、映画のTVCMのコラムを某有名メールマガジンにて連載。 フリーに転身後、大手コンピュータ会社の映画コンテンツのディレクターを務める。料理本、漫画/映画解説本、ペット関連、ビジネス本など、 幅広いジャンルで執筆中。著書に「絶対に見逃すな! 犬の症状これだけは!」など。

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