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こんなお母さんイヤ!毒母映画で知る、母と子供の深い闇

2018.05.09(Wed) | 斎藤香

もうすぐ母の日。母と子供の感動話はたくさんあるけど、最近は毒母映画も多いのです。というわけで、毒母映画特集。信じられない母子の関係に驚き。世の中にはこういう母親もいるというのを知っておきましょう!

言葉と暴力で娘を支配したおそるべき母『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
アイトーニャ
ライバル選手の足に怪我をさせた“ナンシー・ケリガン襲撃事件”というフィギュアスケート界最大のスキャンダルを生んだ中心人物トーニャ・ハーディングの半生を描いた作品です。

トーニャ(マーゴット・ロビー)は4歳でスケートを始めるとメキメキ頭角を現しますが、母のラヴォナ(アリソン・ジャーニー)は「娘は金になる。貧しさから抜けられる」と、スケート選手にしようと躍起になります。そして、トーニャが試合に負けたり、口答えしたりすると娘を罵り、殴り、蹴るというような暴力で支配するのです。

スケートでの成功=金としか思っていないラヴォナが娘に教えたのは暴力だけ。褒めて育てるのではなく罵倒し続けていたのです。母性皆無、まさに毒母! だからトーニャも気に食わないと暴力を振るう女になってしまうのです。

トリプルアクセルを飛べるテクニックを持ったスケーターなのに「この親じゃなかったら」と思わずにいられません。毒母を演じるアリソン・ジャーニーはモンスター級の怪演でアカデミー賞助演女優賞を受賞。主演のマーゴット・ロビーも主演女優賞候補になりました。

◆『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
2018年5月4日より、TOHOシネマズ他、全国ロードショー
(C)2017 AI Film Entertainment LLC
芸術と愛情の狭間で娘を見せものにしていた狂気の母『ヴィオレッタ』
ヴィオレッタ
母の被写体として、過激な写真を撮影されていた12歳のヴィオレッタ。彼女と母の確執を描いた実話であり、70年代にロリータ写真集で話題になったエヴァ・イオネスコ監督が自身の過去を映画化した作品です。

娘の世話を家族に押し付け、自堕落に生きていたアンナ(イザベル・ユペール)は、カメラをもらったことをきっかけに美しい娘ヴィオレッタ(アナマリア・ヴァルトロメイ)を被写体に写真を撮るようになります。その写真が売れたことで気を良くしたアンナは「芸術だ」といいながら娘に過激でセクシーなポーズを強要していくのですが……。

娘の写真が売れたことで「私の写真は芸術よ」と、いきなりアーティスト気取りになるアンナ、実にイタイ母です。エヴァ・イオネスコ監督が描く自身の娘時代は、ケバケバした服で学校に行かされたり、いじめられたり、普通の生活が送れず可哀想。しかし、普通なら思い出したくもない自分の過去を、美少女を使って映画化する監督自身、とてもアンナ的でソックリな母娘とも言えるでしょう。
娘に「醜い子」と言い放った美しくてキツイ母『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』
ダイアナヴリーランド
1930~60年代、ファンション業界で大きな影響力を持っていたのがダイアナ・ヴリーランド。彼女は母親のキツイ言葉をバネに、ファッション界の大物になりました。その姿を映し出したドキュメンタリーが本作です。

映画はダイアナと彼女をよく知る人物のインタビューで構成されています。ダイアナはハーパーズ・バザーのコラムニストから編集者になり、やがてヴォーグの編集長になった人。映画でダイアナは数々のエピソードを語りますが、家族の話も多く、特に母のエピソードは強烈。彼女の母はダイアナのことを「妹は美人なのに、あなたはブスね」と言っていたのです。

ダイアナは容姿にコンプレックスがあり「母親が美しくてうらやましかった」と語っていますが実の母に「ブス」と言われても凹んだりせず「成功するためには、何かに突出すべき」と考え、感性に磨きをかけていくのです。その心意気がかっこいい!母親に傷つけられても「お母さん、ひどい!」ではなく、美人じゃない自分にできることを考え、オリジナリティな物の見方と考え方で成功者となった、ダイアナの逆境を超える強さは見習いたいです。
子供を置き去りにしたまま帰ってこなかった無責任な母『誰も知らない』
誰も知らない
是枝裕和監督作品『誰も知らない』は、実際に会った事件を映画化。子供4名を置いて出て行ってしまった母親を待ちながら、必死に生きる子供たちを描いた物語です。

けい子(YOU)と息子の明(柳楽優弥)がアパートにお引越し。実はあと3人子供がいたけど、追い出されないように2人暮らしと大家に嘘をついていました。貧しいながらも笑顔に溢れた毎日でしたが、ある日、けい子は現金を少し置いて、新しい男のもとへと出て行ってしまうのです。

育児放棄した母親けい子は毒母そのもの。出生届も出していないし、学校にも通わせていないのですから。でも子供たちは母を恨んでいないんですよね。異常な生活とはいえ、一緒に暮らしていたとき、けい子は子供たちに愛情を注いでいたのです。事件だけを切り取ると「最低な母」としか思えないけど、事件の背景にあったかもしれないことを描き、当事者たちの心を救い上げた是枝監督。一番リアリティのある毒母映画です。
男をだまして犯罪を重ねてきた強欲な母『後妻業の女』
後妻業の女
直木賞作家・黒川博行の小説「後妻業」の映画化作品。結婚したあとに謎の死を遂げる男たち。その妻が実は「後妻業」。遺産相続のために結婚して死に至らしめる恐ろしい女だったのです。

小夜子(大竹しのぶ)は、結婚相談所を経営する柏木(豊川悦司)と組んで、裕福な老人の内縁の妻になり、死んだら財産をいただく「後妻業」で金儲けをしていました。ある日、短大教授の中瀬(津川雅彦)の内縁の妻になり、弱っている彼に死に至らしめようとしますが、中瀬は一命を取り留めて入院。小夜子は、病院にかけつけた中瀬の娘に「遺産目当てだ」と疑われ始めるのです。

人の好意を踏みにじるだけでなく、お金のために殺しも厭わない小夜子。そんな彼女にも2番目の夫との間にできた息子・博司(風間俊介)がいました。彼はチンピラで、ときどき母にお金を無心するという情けない男。でも小夜子は息子と一緒のときだけ、ダメ息子にイラっとしながらも、少しだけ母親の顔を見せるのです。大竹しのぶが、何気ない態度や言葉遣いでチラリと見せる母の顔がリアルで凄い。さすがの名演です。

海外と日本の毒親映画特集、いかがでしたでしょうか? 母の日はお母さんに感謝する日。そんな日だからこそ毒親映画を鑑賞し、自分の母親の素晴らしさを噛みしめてくださいね。

Writer | 斎藤香

映画ライター 映画誌の編集者を経てフリーに。映画レビュー、監督&俳優へのインタビュー、書籍ライティングなどで活動中。映画のほかには教育関連の取材執筆もいたします。好きな監督はウディ・アレン、トーマス・アルフレッドソン、アルフレッド・ヒッチコックなど多数。

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