ホーム > 世界最高峰の映画祭が独自性を太鼓判!カンヌ国際映画祭「ある視点」部門5選

世界最高峰の映画祭が独自性を太鼓判!カンヌ国際映画祭「ある視点」部門5選

2018.05.11(Fri) | 足立美由紀

毎年5月に行われる世界三大映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭。第71回となる今年は8日~19日に開催されます。パルム・ドールを競う「コンペティション」部門への注目はもちろんですが、独自性や独創性豊かな作品が集められた「ある視点」部門は、映画好きならチェックしなきゃ損! そこで今回は「ある視点」部門、唯一無二の作家性が光る受賞&出品作を5本ご紹介します。

虐げられた犬たちによる反撃のマーチ!『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』
ホワイト・ゴッド
ハンガリー発、悪法によって引き裂かれた少女と愛犬が織り成す異色の人間ドラマ。第67回「ある視点」部門で最高賞のグランプリを受賞した作品です。また本作で堂々たる役者ぶりを見せつけた250匹の犬たちには、見事な演技をした犬に贈られる“パルム・ドック賞”が贈られました。

雑種犬だけに重税がかかるという悪法が施行されている、とある街。離れて暮らす父親と、3ケ月間だけ一緒に暮らすことになった13歳の少女リリと愛犬ハーゲン。しかしリリの父親は、この悪法の税金を払うことを嫌がり、ハーゲンを見知らぬ場所に置き去りにしてしまいます。リリの必死の捜索もむなしく、野犬狩りにあったハーゲンは強制収容所送りに。そしてハーゲンは薬殺の運命にある多数の犬たちを引き連れ、人間への報復を開始するのです。

捨てられたハーゲンは、心無い人間たちから酷い扱いを受け荒んでいきます。穏やかな飼い犬から、歯をむいて人間に敵意をむき出しにした野良犬へと変わる過程には心が痛むばかり。そんなハーゲンら犬たちが街中で人を襲う凄惨な映像から、神聖さすら感じさせる静かなるシーンへの見事な転調には監督の非凡の才がうかがえます。

監督を務めたコーネル・ムンドルンツォは、社会派のテーマを圧倒的な映像表現で寓話として描き出す名手。カンヌが熱狂した次作『ジュピターズ・ムーン』へとつながる、視覚と感性に訴える演出が観る者を魅了します。
悲しみにくれる父が抱えた秘密とは?『父の秘密』
父の秘密
家族を亡くした父娘の心のすれ違いが、大きな秘密を産みだしていく衝撃の心理ドラマです。第65回「ある視点」部門のグランプリ受賞作。本作の次に手掛けた或る終焉もカンヌで脚本賞受賞という快挙を果たした、メキシコの新星ミシェル・フランコ監督の長編2作目となる作品です。

最愛の妻・ルシアを事故で亡くしたロベルト(ヘルナン・メンドーサ)は、娘のアレハンドラ(テッサ・イア)と共にメキシコシティに移り住みます。心の傷が癒えないロベルトは仕事もなかなか手につきませんが、一方のアレハンドラは転校先の学校で新たな友達もできて……。

母親不在の悲しみもなんとか乗り越えられたかに見えたアレハンドラでしたが、お金持ちのクラスメイトに招待された別荘で、酔った勢いでしたセックス動画が拡散されてしまいます。とたんに始まる同級生たちのイジメや嫌がらせ……。意気消沈している父親に相談もできず、次第に追い詰められていく彼女の姿がナマナマしく描かれます。

ネットでのポルノ拡散、イジメ、その果ての卑劣な虐待など。大人たちの目の届かない場所で繰り広げられる、学生たちの犯罪まがいの陰湿な行為には激しい怒りがこみ上げます。カンヌも衝撃を受けた本作、この父娘の絆をあなたはどうご覧になるでしょうか。
元ハンセン病患者が問いかける、人間の生きる意味『あん』
あん
カンヌに愛される河瀬直美監督が、ドリアン助川の小説を原作につむいだ切ない人間ドラマ。第68回のカンヌでは「ある視点」部門のオープニングを飾りました。元ハンセン病患者の老婆を軸に、人間の生きる意味を問う感動作です。

桜が美しく咲き乱れる春。雇われ店長・千太郎(永瀬正敏)が営むどら焼き屋「どら春」に、老婆・徳江(樹木希林)が働きたいとやってきます。徳江が作る絶品の“あん”を使ったどら焼きは、すぐに大評判に。しかし大繁盛を喜んだのも束の間、徳江が元ハンセン病患者なのを嫌ったオーナーの意向で、彼女は店を辞めさせられてしまうのです。

元ハンセン病患者の徳江、前科のある千太郎、「どら春」の常連客で育児放棄気味の母親を持つ女子中学生・ワカナ。河瀬監督は、順風満帆の人生とはいかない3人が懸命に生きる姿を映し出すことで、人間の尊厳をしみじみと訴えかけます。ワカナを演じたのは、本木雅弘の娘にして樹木希林の孫でもある・内田伽羅。「孫との初共演は全く意識しなかった」そうですが、名女優・樹木希林の凄さが分かる鳥肌が立つような名演を、感動のストーリーと共にご堪能ください。
羊と共に生きる兄弟の“絆”と仰天の“羊愛”『ひつじ村の兄弟』
ひつじ村の兄弟
羊農家を営む不仲な兄弟の“絆”と仰天の“羊愛”を追った人間ドラマ。第68回「ある視点」部門で、『あん』や『岸辺の旅』を抑えグランプリに輝いた作品です。

北欧アイスランド。不仲な兄弟グミー&キディーは国内随一の優良種を飼育する羊農家です。実は彼らは40年間口もきかない絶縁状態なのですが、そんな折、キディーの羊が疫病に。保健所が下した羊全頭殺処分の決定は、村全体を巻き込んだ大騒動に発展してしまいます。

会話をしないグミーとキディーが、飼い犬に手紙を運ばせて意思疎通したり、逆恨みしたキディーがグミーの家を銃撃したり~と、本作には笑いを誘うシニカルなシーンが随所にちりばめられています。その一方で、疫病対策で大切に育ててきた家畜を根こそぎ奪われ、廃業を余儀なくされる酪農一家の姿が描かれるなど、牧歌的なだけではない農家のシビアな現状も映し出されます。

さて、先祖代々受け継いできた優良種の血統を根絶やしにすることが我慢ならないグミー&キディー兄弟。40年ぶりの断絶を乗り越え、彼らがした決断とは? ラストシーンがいろいろな意味で衝撃的で……。
幽霊になって帰宅した夫と行く、最後の旅路『岸辺の旅』
岸辺の旅
名匠・黒沢清監督が湯本香樹実の小説を浅野忠信&深津絵里で映画化。本作は第68回「ある視点」部門において、日本人監督として初めてとなる監督賞を受賞した作品です。

三年前から行方不明になっていた夫・優介(浅野)が、ある日突然、幽霊になって帰宅します。妻・瑞希(深津)は、放浪の間に世話になった人たちを訪ねたいという優介と共に、空白の三年間をたどる旅に出かけるのですが。

夫=幽霊、この世は人間と幽霊の共存する世界という前提が、優介の「俺、死んだよ」というあっけない一言で語られる人を喰った演出にニヤリとさせられます。しかしその無茶ぶりも、日本が誇る実力派の2人が演じればリアリティを感じるから不思議です。本作は心霊現象をモチーフに据えながらも、優介と瑞希がお互いの愛情を再確認するロードムービー。ジャンル映画の領域を超えた、別れる運命にある夫婦のサスペンスフルなラブ・ストーリーなのです。

今年のカンヌ国際映画祭では、2011年にヒトラーを容認するコメントをして追放されていたラース・フォン・トリアー監督が、『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト(原題)』をひっさげ7年ぶりにカムバック。マット・ディロン、ユマ・サーマンが出演する連続殺人鬼をテーマにしたスリラーということで、今から楽しみです!

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

Banner

関連するポスト

Copyright (C) GAGA Corporation. All Rights Reserved.
GAGA