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死ぬまで生きたい!〜いろんな終活考えましょう〜【アジア編】

2018.06.01(Fri) | 仲谷暢之

前回、終活を描いた映画の洋画編を紹介しましたが、今回は邦画を含むアジア編。
死ぬまでに自分は何をすべきか、アジアでの映画はまた洋画とは違った視点で描かれています。
あなたはどんな終活をして死ぬまで行きたいですか?

「湯を沸かすほどの熱い愛」
湯を沸かすほどの愛_縦
ある日、父親がふらりと出て行ったきり蒸発。それまで経営していた銭湯は休業状態。母、双葉は、いつか帰ってくる夫を待ちながらパートに出て娘を育てていたが、ある日病院で医師からガンが全身に転移しており余命わずかと宣告される。絶望に打ちひしがれる双葉だったけれど、気持ちを入れ替え、その日から彼女は死ぬまでにやっておかなければならない彼女なりの終活を実行していくという話。
そのやっておかなければいけないことは3つ。
まず、蒸発した夫を探し出す。
そして娘をひとり立ちさせる。
さらに娘をある人に合わせる。
突然アクティブに行動し始めた母に娘は戸惑い、さらに母が行動し探し出した父が突然帰って来るわ、一緒に父が他所で作ったもう一人の娘がやってくるわとあれよあれよと生活が一変する。そして母も変われば父も変わり、自分も徐々に変わっていく・・・そして衝撃の展開。
ガンに侵されながらも終活をせっせと行う双葉役の宮沢りえは至高の演技。花に水をやりながら娘と話すシーン、車の中でのシーンと、なんてことないシーンでのセリフの妙。さらに確実に弱っていくもそれを見せまいとする振る舞い。反面、我慢しきれず垣間見せる生きたいという意思。あとで紹介する「その日のまえに」でもそうだけど腹を括った母は強し。
もし自分が余命を宣告されたら、ここまで強くなれるか、自暴自棄になるか、見た後考えさせられるはずです。
「くじけないで」
くじけないで
2013年に101歳で亡くなった詩人、柴田トヨさん。長年連れ添った夫に先立たれ、白内障となり、手術をしたもののすっかり生活に覇気のなくなった彼女が90歳を迎える時に息子から勧められたのが詩を書くこと。最初は“なぜ詩?”と感じたものの、気の向くまま、思いのままに書き記しだした詩が、徐々に周囲の人にも影響を与えていき、次第にトヨ自身も周辺も変化していくという物語。
トヨさんを演じる八千草薫さんの素晴らしいこと!90歳の今のトヨさんもさることながら、回想シーンで演じられる老年期の佇まい、セリフ回し、動き、視線の違いが見事。女が優れて女優であるという言葉を久しぶりに思い出してしまいました。
思いがけず詩を創作を得たことによって終活として充実の日々を送るトヨの姿を見ることによって、図らずも自分たちにもそういう機会を就活のひとつとして見つけることができるんじゃないかしらんと希望を抱かせてくれます。
個人的にもう一つポイントが、詩を勧めた一人息子役の武田鉄矢のズーーっと夢を食って生きてるダメオヤジ演技ぶりが素晴らしく、見ててずっとイライラさせてくれ、きっと詩の印税をアテにするんやろうなぁという余計なイマジネーションも膨らむので注目です。
ちなみにトヨの中年期を演じた檀れい(奇しくもタカラヅカの大先輩と後輩!顔も似てる) 幼年期は芦田愛菜、青年期は黒木華というその年代だけで映画一本撮れそうな豪華な配役にちょっと驚きます。
「その日のまえに」
その日のまえに
「エイジ」で山本周五郎賞、「ビタミンF」で直木賞を受賞した重松清の短編小説を大林宣彦監督が映画化。
おなじみの四角い枠の中に“A MOVIE”という文字から始まり、あとはもう紛れもなく大林監督の世界のなかで繰り広げられる終活話。
南原清隆演じる売れっ子イラストレーターの健大と、永作博美演じるその妻、とし子。ある日病に倒れ、余命わずかと知らされた彼女は、“その日”が来ることを悟り、夫を連れもって昔暮らした街を訪れる。かつて貧しいながらも楽しく暮らした街はいまではすっかり寂れている。それでも二人には賑わいのあった商店街が目に浮かぶ。それはまるでフェデリコ・フェリーニ監督の映画「インテルビスタ」の中の、チネチッタ撮影所巡りのような感じで馴染みの店の人たちと“ヘンな”交流をしたりし、思い出をなぞっていくが、確実にその日は近づいていた・・・。
直球で描けばお涙頂戴の家族の物語になりがちのこすり倒された映画になったかもだけど、そこは大林マジックで一筋も二筋も三筋もいかないファンタジー要素、ドタバタ要素が散りばめられた異色作になってる。それでも最終的に深い感動に浸れるのは「人は誰もその日のまえを生きている」というテーマと、それに伴う根幹がブレていないから。
とし子のその日がくるのがわかっていながらも、それまでにしておかなければいけないために生きている姿は強い、ただただ強い。
さらに宮沢賢治の、詩としての代表作で宮沢賢治の良き理解者で、早逝した最愛の妹・トシ(とし子)への心情を綴った「永訣の朝」が効果的に使われており、その詩の意味を汲むと、健大ととし子の関係にも被り、胸が締め付けられるよう。最後、とし子が健大に送った手紙の言葉は・・・ぜひ映画を見て確かめて欲しいです。
ちなみに大林監督自身も昨年公開された映画「花筐/HANAGATAMI」のクランクイン前に肺がんであることが判明し、余命半年と言われるも、抗がん剤治療を続けながら撮影を続行。無事に完成させ、さらに現在は治療の効が奏し、余命は未定だそうで、映画作りの準備をしてらっしゃる。すごい人だ。
「再会の食卓」
再会の食卓
1949年以降、中国と台湾との長きにわたる政治的な断絶で離散していた家族の再会のドラマ。
食卓を囲む家族。孫娘が、ユィアーに届いた手紙を読むところから映画は始まる。
その手紙は生き別れになった夫イェンションからで、結婚したものの中国と台湾で離ればなれとなり、結局互いの人生を歩んだけれど、妻が亡くなり、自分も老境に入ってしまったので、今さらながらもう一度妻である君に会いたいというもの。
中国ですでに元軍人の夫と子ども、そして孫にも恵まれ小さいながらも温かい家族を築いてきたユィアーの心のざわめき。その反面、自分勝手な終活に腹を立て、きっともめ事が起こると心配する娘。前夫の実子でありながら、今ごろ母に会いたいと願う父に対して、関係ないと距離をおく長男。どうせなら金銭で解決すればいいじゃないかという娘婿たち、彼らを静観する孫娘と、それぞれ思惑がある中で、意外や現夫のシャンミンはイェンシンさんを快く迎えようと妻を喜ばせ、歓迎のために宴を設ける準備をするが・・・。
自分も最初の手紙を読んでなんて勝手なジイさんなんやろと思ったものの、歴史的、政治的な理由というのが痛いほどわかる現夫のユィアーが相手を許し迎え入れる気持ちも理解すると、実は互いに抱えてきた人生の苦労が滲み出てくるのが素晴らしい。さらに一通の手紙で徐々に顔が華やかになっていくユィアーの姿も特筆。昔の都々逸で、長年添うた仲よりも、一夜の添いが忘られぬというのがあったけれど、まさに長年連れ添った夫よりも、たった一年でも愛し合った人の方に心が揺れるという、女心のすごさを垣間見たようで・・・。
タイトル通り、食卓を囲むシーンが多いのですが、食を通して相手を思いやり、もてなし、そして探るというのが中国らしいなぁと思った次第で、食堂にて家族の前で本音を漏らす現夫のシーン、そして現夫、元夫、その両方の妻3人が囲む食卓シーン、ラストの食卓のシーンそれぞれがこの物語の中で重要な名場面になっているのにも注目してください。
「あなた、その川を渡らないで」
あなた、その川を渡らないで
韓国の江原道横城郡にある古時里という村で暮らす、98歳と89歳の老夫婦を捉えたドキュメンタリー。豊かな自然中、四季の移ろいを映し出しながら結婚して76年も経っているとは思えないほどの相思相愛ぶりの夫婦の生活を浮かび上がらせています。
元々は、ペアルックを着てる老夫婦が月に一回市場にやって来るのが新聞やテレビに取り上げられたことから、監督が単身二人に許可を得て、住み込んで日常を撮影したものだそうで、ナレーションもなくただただ二人の仲睦まじいやりとりが繰り広げられています。
秋には落ち葉を集め、それを互いにかけあったり、冬は雪合戦みたいなことをしたり、ある夜は外にあるトイレに付いてきてもらって怖いからと歌っていてもらったり、花が咲けば髪に飾り合い素敵な言葉を投げかける。食事をしては美味しい物を作ってくれてありがとうと感謝し合う。
ベタな表現ですけど、許してもらえるなら究極のラブストーリー。19歳と14歳で結婚した二人が、ついに結ばれたエピソードには思わずおじいちゃんを抱きしめたくなるほど。さらにおばあちゃんが6着の子ども服を買いに行くのですが、孫たちのためかなと思ったら意外なエピソードがあり、あぁこの人たちも戦争をくぐってきた方たちだったんだと落涙必至。
次第に弱っていくおじいちゃんを必死に看病するおばあちゃん。「今のうちに綺麗な服を燃やすと天国で綺麗な服を着ることができる」と言いながらカマドでペアルックで着ていた服を燃やす・・・高齢のためにいつかはお別れが来ることはわかっているのを夫のために彼女なりの終活をしている姿に人を愛することに年齢は関係ないというのがしみじみ心の奥底にきます。
ちなみにおばあちゃんが恥ずかしながら歌う「サランヘヨ」という歌は、日本語で「愛しています」という意味。映画の最後までみるとその本当の意味がわかるはず。

前回、今回とさまざまな終活のあり方を描いた作品を紹介しましたが、お国柄でも描き方も、考え方も違うなぁとわかるはず。あなたはどんな終活を考えますか?作品をみてじっくり考えてみるのもいいかもしれません。 洋画編はこちら

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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