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異色のロードムービー5選

2018.06.13(Wed) | 清水久美子

旅行をしたいと思っても、忙しかったり経済的に厳しかったりと、なかなか実現できない時、旅行気分を味わえる映画っていいですよね。ロードムービーにもいろいろありますが、今回は普通の旅ではない、ちょっと異色のロードムービーを5本紹介したいと思います。

自分の犯した罪と向き合う姿を孫に見せる旅『独裁者と小さな孫』
独裁者と小さな孫
ヨーロッパで亡命生活を続けている、『カンダハール』で知られるイランの巨匠モフセン・マフマルバフ監督が、平和への願いを込めて描いた現代の寓話。

冷酷な独裁者である大統領(ミシャ・ゴミアシュヴィリ)が支配してきた国でクーデターが起きます。大統領の家族は国外へ逃げますが、わがまま放題に育った幼い孫(ダチ・オルウェラシュヴィリ)は駄々をこね、大統領と一緒に国に残ってしまいます。すぐに独裁政権は崩壊し、反体制軍から狙われる大統領は、孫を連れて船のある海へと逃亡の旅を余儀なくされます…。

逃亡の道中、大統領は変装してギターを弾き、孫に女の子の格好をさせて踊らせ、旅芸人を装います。贅沢三昧に暮らしてきた孫は初めて見る庶民の生活に目を白黒させ、大統領は自分がいかに残虐な行為を行ってきたか思い知ります。今回取り上げる以下の異色のロードムービーとは大きく違う、主人公が最愛の孫と共に、過去の罪に向き合う旅を綴った衝撃的な作品です。
自作の“車”で忘れられない旅に出る少年たち『グッバイ、サマー』
グッバイサマー
エターナル・サンシャインのミシェル・ゴンドリー監督の自伝的青春ストーリー。14歳の夏休みに“動くログハウス”で旅に出た2人の少年のロードムービー。

画家を目指す中学生のダニエル(アンジュ・ダルジャン)は女の子のような容姿で、クラスメイトからはミクロ(チビ)と呼ばれ、好きな女の子とも友達止まり。転校してきた一風変わったテオ(テオフィル・バケ)と周囲から浮いた存在同士で意気投合したダニエルは、機械いじりが得意なテオと一緒に“夢の車”を作って、広いフランス国内を旅することに。

子供と大人の狭間にいるダニエルは、みんなと同じでいることを嫌悪しつつも、自分が人に流されやすいことに悩んでいます。両親から愛されていますが、過干渉にうんざりしているダニエルは、親に冷たくされ、自立した考えを持って行動するテオとの旅にワクワクします。等身大の2人の少年が本当に瑞々しく、彼らに共感しながら一緒に旅をしているような気分になれる素敵な映画です。
道路を修復しながら旅をする凸凹コンビ『セルフィッシュ・サマー ホントの自分に向き合う旅』
セルフィッシュサマー
道路整備の旅を続ける2人の男の珍道中を描いたアメリカ映画。アイスランド映画『Either Way』(日本未公開)のリメイク作品。

1987年、テキサスで大規模な山火事が発生。アルビン(ポール・ラッド)は森を通る破損した道路を修復する仕事に就き、恋人の弟ランス(エミール・ハーシュ)を助手として雇います。真面目なアルビンは淡々と仕事を進めますが、女好きのランスはテント生活で旅をしながらの修復作業に欲求不満を募らせています。反りが合わない2人でしたが、旅を通じてお互いの身の上話をしたり、火災の被害状況を知るうちに、2人の関係性が変わっていきます…。

近年、『アントマン』役で活躍しているポール・ラッドは、本作ではスーパーマリオのような風貌だし、『スピード・レーサー』などではイケメン役だったエミール・ハーシュは、ポッチャリしてちょっとジャック・ブラック似。2人とも冴えない残念な男たちを好演していて、思わずニヤニヤしながら見てしまう掘り出し物映画です。
恋人のいる男と夫のいる女の旅のラブストーリー『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』
アンナとアントワーヌ
『男と女』の監督クロード・ルルーシュと名作曲家フランシス・レイの名コンビが描く、大人の男と女のロードムービー。

映画音楽家のアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)は輝かしい成功を収め、美しい恋人との関係も順調です。ボリウッド版『ロミオとジュリエット』作品を担当することになったアントワーヌはインドを訪れ、フランス大使の妻アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)と出会います。許されないのに惹かれ合ってしまうアントワーヌとアンヌ。アントワーヌは、2日間の巡礼の旅に出るというアンナに同行するのですが…。

インドの美しい風景の中で、共に旅をするうちに思いを募らせていく男と女。禁断のラブストーリーがロードムービーの中で繰り広げられます。心揺さぶる音楽と映像を堪能できる必見作です。
Google Earthがもたらした1万キロの故郷への旅『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
LIONライオン
幼い頃にインドで迷子になった男の子が、養子にだされたオーストラリアから自分の生まれ故郷を探し出す、奇跡のような実話を基にした感動作。

優しい養父母に愛され、幸せに育った青年サルー(デヴ・パテル)。でも、幸せな生活を送れば送るほど、インドの家族への思いが募っていきます。5歳で迷子になった彼は、ほとんど故郷のことを覚えていませんでしたが、おぼろげな記憶をもとにGoogle Earthを使って必死に実家を探し出していきます…。

5歳のサルー(サニー・パワール)は兄とはぐれ、迷子になるうちに回送列車に乗って寝込んでしまい、知らぬ間に長距離を旅することに。ストリートチルドレン生活を経て、1万キロも離れているオーストラリアに養子として引き取られます。大人になったサルーがGoogle Earthで故郷を探したことを知り、「旅をしていたのね」と告げる養母スー(ニコール・キッドマン)。小さな子供が体験した心細い“旅”。そして、パソコンの画面上でできる、こんなにも感動的な“旅”。どの作品とも異なる心震えるロードムービーです。

今回紹介した“異色の旅”を疑似体験できる映画は、忘れられない作品になること請け合いのお薦め作ばかり。劇場未公開の映画も含まれているので、この機会にぜひチェックしてみてくださいね。

Writer | 清水久美子

映画・海外ドラマ・音楽ライター。昼はメーカーでOL、夜は音楽雑誌の編集アシスタントをこなした後、パソコン雑誌で編集業務に就く。その後フリーライターとなり、俳優や監督・ミュージシャンのインタビュー、執筆に日々奔走。試写室通いで時には1日4本の映画を観ることも。移動中もスマホは目が疲れるので、いつもポータブルDVDプレイヤー持参で何かしら観ています。

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