ホーム > なんて自由で洒脱! 歴史と美学が息づくフランス映画5選

なんて自由で洒脱! 歴史と美学が息づくフランス映画5選

2018.06.20(Wed) | 足立美由紀

1993年から始まった、最新のフランス映画を日本に紹介する「フランス映画祭」も今年で26回目。13年ぶりに拠点を横浜に戻し、6月21日~24日の会期で開催されます。
映画史とともに歩み、芸術文化を背景に成熟してきたフランス映画。独特の世界観と美しい風景が映し出される作品からは、自由で洒脱な薫りが立ち昇ってくるようですよね。そこで今回は歴史と美学が息づくフランス映画を、「フランス映画祭」の新旧上映作品をメインに5本ピックアップしてご紹介します。

フランス映画祭 特設サイト

ゴダールと暮らす甘くてシンドい生活!『グッバイ・ゴダール!』
グッバイゴダール
映画史にその名が燦然と輝く名匠ジャン=リュック・ゴダール。血気盛んだった頃のゴダールと恋に落ちた、19歳の女性の自伝的小説を映画化したのが本作です。今年度のフランス映画祭、出品作。

1968年、パリ。哲学科の学生だったアンヌ・ヴィアゼムスキー(ステイシー・マーティン)は、ゴダール(ルイ・ガレル)と恋に落ち、彼の新作『中国女』の主演を務めることに。ほどなく2人は結婚し、アンナは新進気鋭の映画監督の妻として刺激的な毎日を送るのですが。

『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』など、映画の概念を覆す斬新な手法を取り入れ、フランス映画界の“ヌーヴェルヴァーグ(=新しい波)”となったゴダール。しかしパリではデモ活動が活発化し、ゴダールも“革命”へと傾倒していきます。そしてゴダールはカンヌ国際映画祭を中止に追い込んだり、イタリア人監督の新作映画に参加したアンナの浮気を疑ったり~と、若妻をウンザリさせる行動を取り始めるのです。ついにはゴダールがその名を捨て、組織を結成して政治的映画を製作するなど映画史的に興味深いシーンも登場しますが、ミシェル・アザナヴィシウス監督はそんなゴダールのドタバタをシニカルに描き出します。

とはいえ本作は、再現率高めのルイ・ガレル扮する面倒でチャーミングなゴダールと、ファッショニスタのステイシー扮するとびきりキュートなアンヌとの恋をつづったコミカルなラブドラマ。ポップな60年代フレンチカルチャーと共に楽しんで!

◆『グッバイ・ゴダール!
7月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
世界が衝撃×絶賛したエロティック・サスペンス!『エル ELLE』
エル ELLE
鬼才ポール・ヴァーホーヴェン監督が、ジャンル&年齢を超越して活躍するフランスの名女優イザベル・ユペールを主演につむぐエロティック・サスペンス。原作は『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』を手がけた、フィリップ・ジャンの小説「oh...」。カンヌが絶賛し、アカデミーが見過ごせなかった本作は、昨年のフランス映画祭で大注目された1本です。

ユペールが扮したのは新鋭ゲーム会社の社長ミシェル。ある日、覆面の闖入者にレイプされたミシェルは自ら犯人を捜し始めます。会社でバラまかれた下劣なアイコラ動画や、ストーカー行為など。捜査を続けるミシェルに降りかかるセクシャルな変態行為が、観る者の心に衝撃のくさびを打ち込む一方、彼女の内なる欲望が明らかになっていくスリリングな展開から目が離せません。倒錯した性愛や息子を思う母性など、さまざまな顔を持つ女性ミシェルを、高貴かつアブノーマルに演じきったユペール(当時63歳!)の怪演は見逃したらもったいない! まだご覧になっていない方はこの機会にぜひ。
“映画の父”が手掛けた50秒×珠玉の108本!『リュミエール!』
リュミエール!ポスター
スクリーン投影式の映画装置「シネマトグラフ」を発明し、“映画の父”と呼ばれたフランス人発明家・リュミエール兄弟。彼らが1895年~1905年の間に撮影した1422本の作品から、厳選&修復された108本を紹介。123年前の情景が、今、ビビットに現代社会に蘇ります。

リュミエール兄弟はフランス、イギリス、モスクワ、エジプト、日本~と、世界各国で撮影を敢行。世界初の有料上映として有名な『工場の出口』や、コメディ映画の先駆けにして世界初の演出映画『水をかけられた散水夫』、そしてあまりの迫力映像に当時劇場が大騒ぎ!?なんていう逸話も残る『ラ・シオタ駅への列車の到着』ほか見どころ満載の映像が、興味深いナレーションと共に次々と映し出されます。

遠近法や対角線を効果的に使った完璧な構図や、秒単位で制御される人物&動体への演出など。1作品わずか50秒という短編ながら、計算し尽くされた映画技法の数々は圧巻! リュミエール兄弟は発明家であるとともに、優れた映画監督でもあったのです。
フランスで人気を博した黒人×白人の異色道化師コンビ『ショコラ ~君がいて、僕がいる~』
ショコラ
20世紀初頭のフランスで、初の黒人芸人として脚光を浴びたショコラと、相方の白人芸人フティットの友情を描いた人間ドラマ。この芸人2人は実在の人物で、リュミエール兄弟の作品にも出演をしています。

道化師として確かな技術を持ちながらも、「時代に合わない」という理由で仕事がもらえないフティット(ジェームス・ティエレ)は、“人食い族”として吠えてばかりの黒人芸人を誘い、道化師のコンビを結成します。白人フティット×黒人ショコラ(オマール・シー)の異色道化師コンビは、瞬く間に大人気となるのですが。

今よりももっと人種差別が激しかったパリで偏見にさらされたショコラが、かつて白人たちから嘲笑されていた召使の父を思い出し、自らの姿を重ねて苦しむ姿に胸が痛みます。余談ですがフティットを演じたジェームス・ティエレは、喜劇王チャールズ・チャップリンの孫。冒頭の彼の見事なパフォーマンスもお見逃しなく。
フレンチラブストーリーの巨匠が、50年間の想いを注入『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』
アンナとアントワーヌ
やっぱりフランス映画といえば恋愛!ということで、最後は大人の男女の愛をつづったラブストーリーです。半世紀ほど前にフランス恋愛映画の金字塔『男の女』を手がけたクロード・ルルーシュ監督が、「50年間の想いを盛り込んだ」という意欲作が本作。アーティストでアカデミー賞(主演男優賞)に輝いたジャン・デュジャルダンが、押さえきれない愛に身を投じる映画音楽家に扮しています。

恋に仕事にと人生を謳歌している映画音楽家アントワーヌ(デュジャルダン)は、新作映画のためインドを訪れます。そして大使館のレセプションに参加した彼は、フランス大使の美しい妻アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)と出会い……。

愛する夫との子供を授かるため、ご利益をもらいにインド南部の村へと向かうアンナと、その旅に同行するアントワーヌ。この2日間の旅路で、惹かれあう2人はそれぞれのパートナーのことをおもんぱかりながらも、お互いの心を探り~探られ、踏み込み~躊躇して……破滅的な恋に落ちる覚悟があるのか自らの心に問いかけます。なんて狂おしくて甘美で悲壮な愛! もう誰かを傷つけずにはいられないところまできた2人の行きついた先は、あなたがその目で確かめて。

今年の「フランス映画祭 2018」では『万引き家族』が大ヒット中の是枝裕和監督もオープニングセレモニーに出席するほか、フランソワ・オゾン監督をはじめとする国内外の映画人が登壇予定。ただいま横浜ではフランス文化と美食の祭典「横浜フランス月間 2018」も開催されていますので、映画とともにフランスを丸ごと味わいに訪れてみてはいかがでしょうか。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

Banner

関連するポスト

Copyright (C) GAGA Corporation. All Rights Reserved.
GAGA