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その不思議な感性を味わって欲しい。アーティスト・松居大悟の映画世界

2018.07.06(Fri) | 足立美由紀

脚本家、映画監督、演出家、俳優とさまざまな顔を持つ松居大悟。監督&原作&脚本を手がけた新作映画『君が君で君だ』では、1人の少女に心酔する男たちの“こじれた愛”が描かれます。淡い想いや衝動、モヤモヤなど言葉になる前の想いを、直球だったり、時には妄想ファンタジーだったりと様々な味付けで描いてきた松居監督。ちょっと不思議だけれど、心のどこかで共感できる~アーティスト・松居大悟の映画世界をどうぞ。

この愛は純情か、それとも異常か!?『君が君で君だ』
君が君で君だ_ポスター
大好きな女の子のために、名前を捨てた男3人の超純愛エンターテインメント。この尋常でない男たちの恋愛譚は、松居監督によるオリジナルストーリーです。

敬愛する姫・ソン(キム・コッピ)の生活全てを把握する男3人は、彼女がファンだという“尾崎豊(池松壮亮)”、“ブラピ(満島真之介)、”坂本龍馬(大倉孝二)“になりきり、四六時中ソンのことだけを考えています。そんな日々も早10年、言葉を交わすことも触れあうこともなくただ”見守って“いた3人ですが、ソンが借金取りの厳しい取り立てに合っているのを聞き、思わず大声を上げてしまいます。

ソンの部屋を盗聴し、ゴミを漁り、後をつけて行動をウォッチする3人。物語はこじれまくっている現在の彼らになるまでのピュアなプロセスを追いながら、ソンの絶体絶命のピンチに手をこまねいている彼らの姿をジリジリと見せつけます。そして松居監督は、彼らの隠れ家に乗り込んできた借金取り(YOU)に、彼らの愛を“究極”と言わせ、そして子分(向井理)には臆病な“ストーカー行為”とののしらせ、観る者の心に彼らの愛が「純情か、それとも異常か?」と問いかけるのです。

本作は、愛することを間違えた男たちの過激な純愛映画。と同時に、愛することに尻込みして現実逃避していた男の、壮大なる成長の物語なのです。

◆『君が君で君だ』 7月7日(土)七夕全国公開
配給:ティ・ジョイ
ⓒ2018「君が君で君だ」製作委員会
3世代の女性たちの反撃を疾走感たっぷりに描く『アズミ・ハルコは行方不明』
アズミ・ハルコは行方不明
山内マリコの長編小説を映画化。突然姿を消したOLの行方不明ポスターが、グラフィティ・アートとなって拡散していくポップで刺激的な青春ムービーです。

とある街で28歳のOL安曇春子(蒼井優)が姿を消します。一方、20歳の愛菜(高畑充希)は、中学時代の同級生ユキオ(大賀)と学(葉山奨之)が始めた春子の行方不明ポスターをモチーフにした、グラフィティ・アートのゲリラ活動に合流。そして巷では、女子高校生集団が、男性だけを狙って無差別暴行をはたらくニュースが報道され……。

職場ではセクハラ上司に嫌味を言われ、自宅では介護に追われる母親にプレッシャーをかけられ窮屈な思いをしている春子。そして愛菜はなんとなくキャバクラで働き、なんとなくユキオと体の関係になり、なんとなく物足らない日々を送っています。彼女たちが抱える言葉にできないモヤモヤは、 “閉塞感”や“将来の見えない不安感”にさらされている現代女性なら共感できるはず。

そんな彼女たちに反撃を促すように、男たちに鉄槌を食らわすアンチヒーローとして女子高校生集団が見参。松居監督はこの3世代の女性たちの“渇き”や“鬱屈”を、プロジェクションマッピングやアニメを効果的に用いてアーティスティックに描き出しています。
ああっ、妄想する青春!『スイートプールサイド』
スイートプールサイド
「わたしの毛を、剃ってくれない?」同級生の女の子からお願いされたことで、血迷っていく男子高校生の青春ドタバタストーリー。原作は「惡の華」の漫画家・押見修造による初期作品です。

毛が生えないことを悩んでいる男子高校生・太田(須賀健太)は、毛深いことを悩んでいた水泳部女子・綾子(刈谷友衣子)から相談され、彼女の剃毛を手伝うことに。そして太田と綾子は定期的に橋の下に集まり……。

秘密の関係を続けるうち、太田はどんどん綾子に惹かれていきます。そして彼女の“ある物”を大事に愛でたり、自分の苗字に置き換えて「太田綾子~」と叫んだり……。誰しも一度は通る毛の悩みを発端に、秘密を抱えた男女の絆と青春のキラメキを捕らえた本作。ちょっとアブないけれど、なんとなく気持ちは分かる~そんな青春あるある(?)が、なんとも表現しがたい笑いを醸し出しています。笑えるのに何だかちょっぴり感動してしまう……そんな余韻もかみしめて欲しい!
松田翔太、アフロ男子になる『アフロ田中』
アフロ田中
この4月から新シリーズが開始された漫画家・のりつけ雅春による人気長寿コミックを映画化。本作は松居監督の映画監督デビュー作となった作品です。

幼い頃、いじめられっ子にくせっ毛をからかわれて以来、アフロヘアーにしている田中宏(松田翔太)。学生時代からの友人の結婚披露宴に招待された田中は、「披露宴には恋人同伴」という約束を思い出し、彼女を作ろうと奮闘します。

彼女いない歴24年(=年齢)という田中は、合コンに行っても失敗ばかり。隣の部屋に越してきた亜矢(佐々木希)のさりげないアプローチにも気づかずに、ひたすら妄想ばかりしている田中のダメダメぶりが笑えます。田中に扮したのは松田翔太。本作ではイケメンを封印し、ありえないほど大きなアフロ頭でコミカルにダメ男を演じています。このほか堤下敦(インパルス)、田中圭らが田中を温かく見守る友人役に扮しているほか、リリー・フランキー、吹越満、辺見えみりなど豪華メンバーも集結。頑張らず、反省せず、何をやってもうまくいかない~そんな田中の“青春の足踏み“を観て笑えば、日々のストレスも解消できるハズ!?
痛烈な社会派ドラマに役者・松居として登場『SCOOP!』
SCOOP!
劇団『ゴジケン』を主宰している松居大悟は、演者として自作はもちろん他監督の作品にもしばしば出演しています。そのうちの1作がこちら。『モテキ』の大根仁監督が、1985年に製作された原田眞人監督作『盗写 1/250秒』をスキャンダラスでショッキングな現代劇として甦らせた作品です。

かつて敏腕カメラマンだったパパラッチ・都城静(福山雅治)と新人記者・行川野火(二階堂ふみ)は、写真週刊誌「SCOOP!」で次々とスクープをものにしていきます。役者・松居大悟は野火が所属する編集部の記者・田中を演じています。部数を伸ばすために、しのぎを削る週刊誌のシビアな世界。企画会議で知恵を絞り、売上部数に一喜一憂する記者たちの狂騒感が、大根監督のスピーディな演出にぴったりマッチしています。

現代の過熱するスキャンダル報道に警鐘を鳴らしつつも、張り込み現場の高揚感やリアルな撮影テクニックに目を奪われる本作。記者たちの本音を代弁したり、達成会でストレスを発散させたり~と、意外と出番の多い役者・松居の姿をチェックするのもお忘れなく。

松居作品では「ありふれた日常生活から、ドロップアウトした人物」がしばしば登場します。不器用な生き方しかできない人々の、言葉になる前の想い。映像だからこそ描ける心象風景を、どうぞご堪能ください。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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