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今日はどっぷり映画に浸りたい!長尺の名作映画5選

2018.08.08(Wed) | 谷直美

日頃なかなか見る余裕がない長尺映画。しかし、作り手が妥協ない姿勢を貫いた結果、あえて長尺にこだわった作品だけに、実は隠れた傑作も多いのです。
時間のハードルを飛び越えて、一気にのめり込んで見られる長尺映画の名作をご紹介します!

※全作品、青山シアターでご視聴可能です。(各作品の画像をクリック)

誠実でほがらかに生きた青年の人生に浸る 『横道世之介』2時間40分
横道世之介
長崎の田舎町から大学進学で東京にやってきたひとりの青年の青春の日々。物語の舞台となる1980年代の東京の懐かしい空気感も楽しい作品です。

高良健吾演じる横道世之介は、ちょっと天然でお人好しな若者。生真面目で、野望のようなものはとんと持ち合わせておらず、人を出し抜いたり利用したりすることなど思いつきもしない。何の計算もなくただ目の前の人に優しく親切であろうとする。そんな世之介くんの日常は人との偶然の出会いや繋がりによって温かく彩られています。

翻って今の世の中。スマホ片手に多忙にまみれ、「さらなる高み」を目指してけなげに頑張る現代人たちに、世之介くんは誰もがそんなにすごくなる必要はないよ、と語りかけているかのよう。
世之介くんを取り巻くたわいもなく優しい日々を通して、人生のほんとうの豊かさとは何かを思い出させてくれる爽やかな作品です。
誰も見捨てない最強の介護ヘルパー〈山岸サワ〉にシビれる 『0.5ミリ』3時間16分
0.5ミリ
安藤桃子監督が妹の安藤サクラを主役に据え、老人介護という重いテーマを骨太な面白さで描いた作品です。

昨今、「invisible people=見えない、いないとされている人々」に光を当てた映画が注目を集めていますが、2013年に制作されたこの作品は、今の日本で最もinvisibleな存在のひとつである、「もう働き手ではなくなってしまった日本のおっちゃんたち」にフォーカスを当てています。

だらしない不良でまあ図々しいのだけど、全部を引き受ける肝の据わりようがハンパない。そんな最高にイカした押しかけ介護ヘルパー山岸サワが、老いてすっかりくたびれてしまった男たちと関わっていくさまがオムニバス形式で描かれています。

老人たちを演じるのは、坂田利夫、故・井上竜夫、津川雅彦、柄本明といったクセの強い面々。 薄汚くて、ずるくて、面倒くさい。しかしどこかに可愛らしさや人としての誇りを感じさせる、人間味ある老人たち。
安藤監督は、世の中から見捨てられた老いた男たちの現実から目を逸らさず、しかし敬意をもって彼らを見つめています。

人間の生々しさにげんなりすると同時に人へのしみじみとした愛おしさも感じて、不思議なくらいに元気がもらえる映画です。
歌え!踊れ!さあ楽しめ!血湧き肉躍るバーフバリ祭り 『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ2 王の凱旋』計4時間39分
バーフバリ1
世界最大の映画大国であるインドにおいてぶっちぎりの歴代興行収入を叩き出し、あらゆる記録を塗り替えた「バーフバリ」二部作。

おしなべてインドの娯楽映画は長尺で、唐突に歌と踊りのシークエンスが差し挟まれ、お話の整合性はわりと二の次で、とにかく理屈抜きにこのひとときを楽しもう!というスタイル。「バーフバリ」は、そんなインドスタイルの映画の最高峰といえる大型エンターテインメント作品です。

圧倒的なスケールかつ華々しくゴージャスな映像、やりすぎ感すら漂う派手なアクションシーンのたたみかける面白さ、たくましく正義感あふれるヒーローと花のように美しくセクシーなヒロインのロマンス。

もはやライドアトラクションのような映画です。問答無用にエキサイティングで単純明快なバーフバリ世界は、日常を忘れて浴びるように楽しんだ者が勝ち。
社会の底辺で孤独に生きる若者たちのひたむきさに涙する 『あゝ、荒野』前・後篇 計5時間4分
あゝ荒野前篇
原作は1966年に上梓された寺山修司の同名小説。
一見現在とほとんど変わらないのだけど、投げやりで無意味な自殺が頻発し、街中で爆破テロが起こり、人々は空虚な思いを抱えて生きている。そんなホープレスな空気感漂う近未来の東京・新宿を舞台に、社会からこぼれ落ちた孤独な若者の生きざまを描いた作品です。

この作品を牽引するのは二人の主役の熱演。とりわけ新次を演じる菅田将暉の輝きが際立っています。燃えるような目と白い肌が印象的。
韓国人俳優ヤン・イクチュン演じる不器用で気弱な吃音青年の一途な優しさも胸に沁みます。

プロボクサーになることが、「まともになる」ことを意味するほどに、社会のどん底に這いつくばって生きている新次と建二。生きている意味がわからなくて、でもどうしても誰かと繋がりたくて、がむしゃらに拳を振り回している。

生まれも育ちも違う二人の友情が得難く純粋だからこそ、いずれ拳を交わすしかなかったという宿命がせつない。息が詰まる迫力のラストファイトに魂を持っていかれます。
映画を愛する人なら体験するしかない特別な一本 『牯嶺街少年殺人事件(4Kレストア・デジタルリマスター版)』3時間56分
牯嶺街
1991年に制作された、台湾ニューウェイブを代表する映画監督のひとり、エドワード・ヤンの代表作にして世界中のフィルムメーカーに多大な影響を与えた傑作。日本国内ではほとんど見ることができなかったのが、2017年監督の没後10年を機にデジタルリマスター版で蘇り、大きな話題を呼びました。

「バーフバリ」のような誰もが受け身で楽しめる娯楽作品とは違いますが、冒頭の初夏の静かな一本道のシーンからすとんと落っこちるようにして1960年代の台北に連れ去られてしまう、どこか魔術的なトリップ感を持った作品です。

隅々まで端正な映像はとても25年前の作品とは思えぬほどモダンな感覚があり、とりわけ夜の闇のシーンは忘れがたいほどの美しさ。

当時台湾に中国本土から集団移住したいわゆる「外省人」。特殊な社会状況と、寄る辺ない精神状態に置かれた外省人の子供たちの心象風景を、ヤン監督は自身の少年時代と重ね合わせ、甘やかなノスタルジーとひりひりするような暴力の予感を秘めつつ描きます。

鑑賞後はまるでひとつの時代を生きたような深い感慨にとらわれてしまう、そんなスケールの大きな作品です。

熱中症が心配なくらいに暑い今年の夏休み。涼しい部屋の中でじっくり腰を据えて、映画の世界に深く潜ってみませんか?

Writer | 谷直美

映画と旅と赤ワインをこよなく愛するフリーライター。映画レビュー・コラムのほか、人物インタビューやイベント取材など幅広いジャンルで執筆中です。

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